東京で首の神経を損傷、昨シーズンはプレーできず
アーロン・ベインズは東京オリンピックで思いもよらない災難に見舞われた。NBAキャリア9シーズンを誇るビッグマンの彼は昨年夏、オーストラリア代表の一員としてオリンピックに参加した。チームは銅メダル獲得と大躍進を遂げたが、彼は2試合目のイタリア戦途中にプレーできなくなり、その後は重体に陥っていた。
コート上での転倒で首を痛めたのだが、当初はただの打撲と見られたケガが実際は首の神経損傷だった。イタリア戦の途中で痛みからコートを離れた彼は、ロッカールームで動けなくなっているところをチームスタッフに発見され、すぐに救急車で病院に搬送された。ベインズはそのまま入院となり、チームに戻ることなく大会を終えている。
「人生で最も孤独な時間だった。異国の病院でベッドに横たわり、意識が朦朧とする中で泣くしかなかった。僕には事故で全身が動かなくなった叔父がいる。自分もそうなると考えると、本当に怖かった」と、彼は東京での悪夢を振り返っている。
症状が治まるまで東京で様子を見て、オーストラリアに帰国して手術。バスケどころではない状況で、NBAでのプレーも途切れてしまった。ただ、彼には不屈の闘志がある。オーストラリアに帰国した時点では歩くのもままならず、自分の子供を抱き上げることもできなかったが、リハビリを続けることで再びプレーできるコンディションを取り戻した。
この夏にベインズはアメリカに飛び、いくつかのチームでワークアウトを行ったという。大きなケガの後であり、試合勘も戻っていなかったために契約には至らなかったが、復帰への道筋は見えた。そして彼はNBLのブリスベン・ブレッツと契約を結び、まずは母国で再スタートを切る。
契約発表の会見で、ベインズは晴れやかな笑顔とともに「バスケットボールは僕の幸せな場所。ここに戻って、プレーを続けられて本当に良かった」と語る。
ブレッツとは2年契約を結んだが、NBAチームからのオファーがあれば、そちらを優先するという条項が含まれている。彼が見据えるのはあくまでNBA復帰だが、そこには前向きなモチベーションしかない。「今は自分の目の前にある目標に集中したい。この先にどんな道を進むかは分からないけど、必死になって挑戦していくよ」
そして、オーストラリア代表でも再びプレーするつもりだ。「代表チームのことは第2の家族だと思っている。僕たちは一緒に成長し、それぞれの成長をお互いが見てきたんだ。また緑と金のユニフォームを着て、第2の家族と一緒にプレーする日が待ち遠しいよ。NBLでのプレーでは、その何人かと対戦できる。それも楽しみだ」
すでに健康状態に不安は全くないとのこと。35歳になったが、ベインズはフレッシュな意欲に満ちている。ブレッツでの活躍を最初のステップとして、NBAとオリンピックで活躍する姿が見られることに期待したい。