アルバルク東京 林社長に聞くvol.4「お寺を見て爆買いして東京観光が終わりでは『興奮』が足りない」

2016/11/25
Bリーグ&国内
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Bクラブのキーマンに聞く
Bリーグが開幕し、日本のバスケットボール界が大きく変わりつつある今、各クラブはどんな状況にあるのだろうか。それぞれのクラブが置かれた『現在』と『未来』を、クラブのキーマンに語ってもらおう。
構成=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

「外国人観光客向けの企画としてバスケは安定感があります」

稲葉 興行としてのバスケットボールについて、他のスポーツ、他の娯楽と比較した際の強みは何でしょう?

もともとバスケットボールへ参入するとなった時点で、私の中には3つポイントがありました。まずは興行として試合数をこなせないと困る、ということ。サッカーはホームゲームの開催が2週間に1回で、ファンはそれを待っています。新しく始めるスポーツでそれを待てるかどうか。試合数を増やすとクオリティが下がる心配はありますが、試合数を増やす可能性はあります。

稲葉 なるほど。では残り2つのポイントはいかがでしょうか。

競技者人口が大きいこと、そしてグローバル競技であることです。日本ですごく人気があっても世界ではやっていないとか、世界戦ができないような競技だと、次に進んでいく時に限界が出てきます。バスケットボールは日本でも競技人口が多く、世界でも一番の競技人口を誇るスポーツなので、日本のレベルが上がっていくと、選手の行き来も始まるし、Bリーグを海外で見てくれる人たちも出てくるはずです。

稲葉 潜在顧客として外国人も考えているわけですね。

日本にはたくさんの旅行者がやって来ますが、お寺を見て爆買いして東京観光が終わりでは『興奮』が足りないと私は感じます。そこでバスケットボールを見て興奮してもらって、そのテンションのまま六本木に飲みに行ってもらうとか(笑)。バスケットボールは時間もきっちり決まっていますし、天候に左右されません。外国人観光客向けの企画としては安定感があります。

稲葉 ただ、普段からNBAを見ているアメリカ人からすると、どうしてもレベルの差を感じることになると思います。

アルバルク東京の社長の内示をもらっていた時期、琉球の試合を見に行ったんです。沖縄だと米軍キャンプのアメリカ人が観客として会場に来ているんですね。彼らが立ち上がって、ものすごく応援していました。それだけバスケが好きということでしょう。バスケは後半にグッと盛り上がっていくスポーツです。第3クォーターから見ても十分に楽しめます。居酒屋ではなくアリーナで飲もう、という感じで来ていただくこともできると思います。

「縦のヒエラルキーが表に出始めた瞬間に会社は終わる」

稲葉 トヨタ自動車のバックアップは他のクラブからするとうらやましいはずです。林社長の気持ちの面で、これはどのくらいのメリットなんでしょうか?

施設もスタッフも、他のクラブからみればうらやましいでしょうね。ただ、当然のことながら権利がある分、「強くなってよ」、「お客様が喜ぶプレーを見せてよ」という義務を果たさなければなりません。トヨタ自動車と三井物産フォーサイトは投資をしているわけですから、金銭的なものなのか他の形で活用するのかは別として、我々はリターンを出す必要があります。

稲葉 実際のところ、資金的な援助はあるんですか?

月次報告を毎月作って、ここはお金を使うところ、ここは我慢するところ、というのを財務の中で判断しています。初期投資や一過性で大きな費用が出る時は提案するかもしれませんが、今のところはないです。「金満チーム」と言われますが、全然そんなことはありません。緊縮財政でやっています。それでも、専用の体育館があって使いたい時にいつでも使える幸せな環境にはあります。

稲葉 選手にとってはバスケットに打ち込む理想的な環境が用意されている、ということですね。

そうです。練習をやろうと思ったらいつでもできます。言い訳ができない練習環境があるので、それをうまく生かしてもらいたいです。同時に、親会社からのそういったバックアップはありがたいと思います。

稲葉 お話をうかがっていると、個々が責任を持ち、それがチームとして一つにまとまることをすごく意識されていると感じました。

フラットマネジメントですね。人数の少ない会社なので、みんなが役職で語らない組織作りは意識しています。社長としてやらなきゃいけない判断は私がやりますが、「社長を相手にこんなことを言ってはいけない」とか「部下だから押し付ける」とか、そういうのは良さを阻害してしまいます。よく無礼講と言いますが、私は無礼講はダメだと思います。礼は尽くしながら、社会人として大人として、自分の意見をちゃんと言える。それでみんなが聞く耳を持って、良い意見であれば取り入れる。それを役職や年齢に関係なく、どれだけできるか。縦のヒエラルキーが表に出始めた瞬間に会社は終わると思っています。この初心はずっと意識し続けたいと思っています。

 

アルバルク東京 林社長に聞く
vol.1「それぞれの専門分野での経験をどうまとめ、結束力と付加価値をつけていくか」
vol.2「我々は東京という熾烈なコンテンツ争いの中で勝っていかなければいけない」
vol.3「ただ単に1万人入りますとか、ビジョンがすごいですとか、それは二次的なこと」
vol.4「お寺を見て爆買いして東京観光が終わりでは『興奮』が足りない」