大記録のニコラ・ヨキッチとナゲッツが進める「センターを中心にしたチーム作り」

2018/10/22
NBA&海外
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ニコラ・ヨキッチ

文=神高尚 写真=Getty Images

シュートミスなし、ターンオーバーなしのトリプルダブル

ナゲッツのホーム開幕戦は注目のデアンドレ・エイトンを擁するサンズが相手。エイトンはリバウンドの強さだけでなく、シュートの上手さや的確にパスアウトするビジョン、スピードに対応出来るディフェンス力を示し、その才能を高く評価されていますが、現在のNBAでは「センターを中心にチームを構築する」のは難しいという理由からドラフト1位の価値があるか疑問視する声もありました。

しかし、この試合でエイトンとマッチアップしたニコラ・ヨキッチによって「センターを中心にしたチーム作り」を目の当たりにすることとなります。

ヨキッチは3ポイントシュート3本を含む11本のシュートアテンプトすべてを決めて35点を奪います。現代的なセンターと言うにはスピードのないヨキッチですが、ゆっくりとした動きながら身体の幅を使いエイトンを押し込み、小さなフェイクでシュートを打つスペースを作ってフックシュートを決めれば、同じような形でもハイアーチのシュートにしたり、フィンガーロールのようにボードを利用したシュートにしたりと、細かい緩急をつけたポストプレーと、ほとんどジャンプしないにもかかわらずブロックさせないシュートテクニックで相手を翻弄します。

3本決めた3ポイントシュートにしても、パスをするような視線のフェイクから打ったかと思えばピック&ロールから打ち、最後はほとんど動かずパスを待ってのキャッチ&シュート。共通するのはすべて味方の動きを利用して打っていること。個人技でアウトサイドから決めるのであれば、「センター」が敢えて打つ必要はないのですが、必ず味方と連動しているからヨキッチの得点は効果的になっていきます。

アウトサイドシュートを得意とするセンターは増えてきましたが、3ポイントシュートを多く打つセンターはインサイドのプレーが減り、シュート成功率も落ちてしまう傾向があります。ですが、この試合のヨキッチは中でも外でもバランス良く、そして完璧にシュートを決め続けました。華麗なパスワークからのシュートもあれば、フィジカルなインサイドプレーでのシュートも決めるからこそ「センターとしての価値」を示しています。

しかし、単に得点力があるだけではチームの中心とは言えません。ヨキッチの真骨頂はこれだけの得点力を持ちながら、パスファーストでチーム全体を動かしていくオールラウンドな能力にあります。この試合も12リバウンド11アシストでトリプルダブルを達成。しかもターンオーバーはゼロというパーフェクトなプレーを披露し、4スティールのオマケまでつきました。

若手トリオが構成するナゲッツ流オフェンス

この11アシストも様々なパターンから生まれています。簡単なハンドオフでアウトサイドシュートやドライブを促したり、逆サイドへの横断パスでフリーの選手を使ったり、自分のシュートフェイクで動いたディフェンスを見てミルサップへのアリウープを通したり。そしてヨキッチ自らがドリブルでボールを運び、速攻のお膳立てもします。

昨シーズンに6.1アシストを記録したヨキッチですが、パスの本数は66.3本でリーグ2位と多く、パスの本数の割にはアシストが少なかったとも言えます。時に驚くようなパスも出しますが、決定機を演出することを目的としたパスではなく、基本はオフェンスの流れに任せてシンプルで適切なパスを出すことがヨキッチの持ち味。アシストが増える試合はヨキッチのパスが冴えた場合よりも、味方が好調な時が多くなります。

この試合のナゲッツはスターター全員が14点以上を記録するバランスの良さ。プレータイムの違いを考慮すれば、シュートアテンプトも同じような本数になり、全員が3ポイントシュートも打てば、ドライブも決めていきます。誰もがどこからでも積極的にアタックし、かといって強引に自分で打つのではなく、ディフェンスが寄ってくればフリーの選手にパスを回していきます。若い選手が多いだけに不安定さを露呈することもしばしいばありますが、波に乗った時のオフェンス力はリーグ最高クラスで、ヨキッチに依存するようなチームでもありません。

最終的に28点の大差で勝ったものの、ファンはホーム開幕戦からチームの特徴が良くも悪くも発揮される試合展開を見ることに。何度もセーフティリードを奪ったはずが、そのたびに追い上げられました。サンズの拙さも手伝っての大味な展開ではありましたが、昨シーズンも大量リードを奪っては追いつかれる試合をファンは何度も体験しています。

その一方で短時間に一気にリードを奪ったり、クラッチタイムに勝負強くシュートを決めていったりと、若さ溢れる魅力も備えているのがナゲッツなのです。

ヨキッチに依存しない「センターを中心にチームを構築する」

前述のヨキッチのアシストで興味深かったのは、多くの選手にパスを供給していながら、ハンドオフによるポジションチェンジだけはゲーリー・ハリスとジャマール・マレーの2人としか行っていないこと。この5年目のハリス、4年目のヨキッチ、3年目のマレーと1年ごとにチームに加わった3人によるコンビプレーこそがナゲッツの中核を担っています。

昨シーズンのチーム内得点トップ3でもある3人は全員シュートが上手く、それでいてボールを持った状態で仕掛けるよりもオフボールムーブとパス交換の連続でシュートチャンスを作ることを好む相性の良さがあり、異なるポジションの3人が頻繁にポジションチェンジすることで、アンセルフィッシュでも誰もが積極的で魅力的なオフェンススタイルを構築しています。

オールラウンドでトリプルダブルを量産するスタッツからヨキッチが目立ちますが、ハリスとマレーは負担を分担するチームオフェンスで個人スタッツが伸びないだけで、高い個人能力を持っています。「センターを中心にチームを構築する」ためには、単に優れたセンターがいれば良いのではなく、個人で突破するよりもセンターとの連携を多用するハリスとマレーのような選手で周囲を固めることが必要なのかもしれません。

ヨキッチが記録したフィールドゴール成功率100%、30点以上でのトリプルダブルは伝説のセンターであるウォルト・チェンバレンが1967年に記録して以来の珍しい記録で、しかもターンオーバー0を加えると史上初の大記録でした。

現在と違いセンターが支配していたチェンバレンの時代から51年ぶりの記録に、さらにもう一つのエッセンス加えた大記録を達成したヨキッチ。そんなオールラウンドな新時代のセンターにハリスやマレーも躍動し「センターを中心にチームを構築」する最新型を示してくれたナゲッツのホーム開幕戦でした。