パオロ・バンケロ

ルーキーの最初の実戦の場であり、チームにとっては実験の場

ドラフトされた選手たちが初めに実力を測られるNBAサマーリーグ。

ドラフト1位のパオロ・バンケロ(マジック)は期待通りのエースムーブを見せており、高いハンドリングスキルでディフェンスの間合いを崩し、ガードのようなクイックネスで突破し、フィジカルの強さでディフェンダーを吹き飛ばしてフィニッシュしています。

何よりも素晴らしいのはドライブからフィニッシュまでの一連の動作が非常にスムーズに続いていくことで、流れるようなムーブは美しさすら感じさせます。自らのアタックでヘルプが寄ってくれば、すかさずキックアウトパスも出しており、オフェンススキルの完成度は「さすがドラフト1位」と思わせてくれます。

2位のチェット・ホルムグレン(サンダー)と3位のジャバリ・スミス(ロケッツ)は高いシュート力を見せているものの、自らのアクションで得点を狙うのに苦労しており、チームメートとの連携構築が重要になりそうです。一方でディフェンス面では目を見張る活躍を見せており、ホルムグレンはヘルプで何度もブロックショットを見舞う強烈なリムプロテクターぶりを発揮し、スミスはビッグマンとは思えないアジリティの高さでポジション関係なく守れるマンマークの強さを見せつけています。チームディフェンスの新たな中心として期待が膨らみます。

サマーリーグという事もあり、チームの新たな核として様々なプレーを試されている上位指名3人に対して、ドラフト4位のキーガン・マレー(キングス)はシーズンと同じ役割を与えられているようで、オンボールプレーは少なく、ウイングでのキャッチ&シュートやカットプレーでチームオフェンスの一部として機能しています。その上でエースに相応しい得点を記録しており、シーズンが始まってからディアロン・フォックスやドマンタス・サボニスのパスを受けるのが楽しみになってきます。

同じくドラフト12位のジェイレン・ウィリアムス(サンダー)は、オフボールでの判断力の良さが光っており、何度もマークマンの裏を取ってはジョシュ・ギディのアシストからフィニッシュしています。さらにマンマークでもカバーリングでも見事なディフェンス力を発揮しており、ルーキーながら高い戦術眼を持つロールプレーヤーになれることを示しています。将来性を取るチーム、即戦力化を目指すチームとサマーリーグから判断が見えるのも面白いところです。

昨シーズンにビッグラインナップを始めたラプターズはサマーリーグでもサイズとウイングスパンのある選手を集めています。この流行に新たに乗ろうとしているのか、ホーネッツとピストンズもシーズンではあり得なかったセンターを2枚起用するラインナップを採用しています。15位でマーク・ウィリアムスを指名したホーネッツは、2年目のカイ・ジョーンズをウイングにコンバートし、13位のジェイレン・デュ―レンを獲得したピストンズは3年目のアイザイア・スチュワートに3ポイントシュートを積極的に打たせています。

サマーリーグは実験の場にもなるため、一時的に試しているだけなのか、それとも戦術変更を考えているのか、答えがわからずモヤモヤしてしまいます。シーズンとは異なった役割や起用法もサマーリーグの楽しみの一つです。