「ベンチ出場は彼にとってプライドを傷つけるようなことではない」
NBA2021-22シーズンは、ウォリアーズの優勝で幕を閉じた。
シーズン開幕前の時点では決して高く評価されていなかったウォリアーズだったが、ステフィン・カリー、ドレイモンド・グリーン、そして年明けに長期欠場から復帰したクレイ・トンプソンのコアは健在で、アンドリュー・ウィギンズ、ジョーダン・プールの成長、さらにはゲイリー・ペイトン2世やオットー・ポーターJr.も起用されればインパクトを残し、4年ぶりに優勝を果たした。
優勝から数日が経ち、ヘッドコーチのスティーブ・カーはアンドレ・イグダーラとエバン・ターナーのポッドキャストに出演し、シーズンを振り返った。もっとも興味深い内容だったのは、ナゲッツとのプレーオフファーストラウンドで故障明けのステフィン・カリーをベンチから起用した背景だ。
歴代最高シューターのベンチ起用はサプライズだったが、カーはその時の裏話を明かした。「ステフには選択肢を与えた。復帰初戦の彼には出場時間に制限があって、20分しかプレーさせられなかった。だから、先発出場した場合と、ベンチから出場した場合の形を説明した。ステフはいつもと変わらない様子で『それならベンチから出る方が良い。その方が、いったんベンチに下がってから長時間待機していなくて済む』と言ってくれた。ベンチ出場は彼にとってプライドを傷つけるようなことではない」
イグダーラは、カリーがベンチ出場をすんなり受け入れた姿勢こそ、チームにとって力強いメッセージになったと振り返っている。「彼がチームに対して『試合に勝つために必要なこと。ベンチ起用と決まれば、その役割をこなさないといけない』と言っているようだった。僕はロッカーで隣のルーン(ケボン・ルーニー)といろいろ話し合っていたよ。あまり理解されていないけど、ステフは本当にチームを第一に考えている」
1990年代に王朝を築いたブルズのメンバーとして活躍したカーは、現役時代の経験から、強力なセカンドユニットの重要性を理解していた。だからこそ、ウォリアーズの指揮官に就任した2014年、彼は前年まで先発だったイグダーラをセカンドユニットの柱に指名した。当時についても、カーは番組内で振り返っている。
「ステフのベンチ起用でチームの意識が固まったが、今から7、8年前に君(イグダーラ)がベンチ起用を受け入れてくれたのが大きかった。それまでベンチから一度も出場したことがなかった君に、そしてNBAで1000試合前後を先発でプレーしていた君にベンチからの出場について意見を聞いたら、あまり乗り気ではなかったね。これはブルズ時代の経験に関連していることだが、トニー・クーコッチがベンチからプレーしたのは非常にパワフルだった。そしてスパーズでプレーした時代も、マヌ・ジノビリのベンチ起用は非常にパワフルだった。セカンドユニットの選手にとっても、素晴らしい選手と一緒にプレーできるのは大きい。それを分かっていたんだ」
「だから、アンドレをセカンドユニットとして使いたかったが、簡単ではないと思った。私は新米コーチで、君はオールスター、そしてオリンピアンだった。当時の私にとっては、指導者として最初の試練だったよ。『この選手が自分の話を真剣に聞いてくれるだろうか?』と思っていた。それに、チームにとっても試練だったと思う。前年の時点でチームは非常に高いレベルにあった。ただ、我々は次のレベルに進もうとしていた時期で、君が渋々ながらもベンチ起用を受け入れてくれたのは、チームを進化させる上で重要なパートだった」