鈴木貴美一

若手のステップアップ「非常に努力家で素直、成長したい気持ちを持っている」

シーホース三河はレギュラーシーズン最終節で川崎ブレイブサンダースを相手に2試合の内、1勝すればチャンピオンシップ出場を果たせたが痛恨の連敗を喫した。あと一歩でポストシーズン進出を逃す形でシーズンを終えたが、日本代表のエース格を担う西田優大に角野亮伍、外国籍のアンソニー・ローレンス二世と、若手の台頭も目立っており、今後に期待を抱かせる戦いを見せていた。

一方でここ数年の三河は昨オフの金丸晃輔など中心選手の移籍が続き、継続的な強化がなかなかできていなかった。しかし、今オフは早々に主力選手たちとの契約延長を発表している。冒頭で触れた3名に加え、日本代表ビッグマンのシェーファー・アヴィ幸樹、長野誠史の若手選手、さらに大黒柱ダバンテ・ガードナーに、若手の指南役としても頼りになる大ベテランの柏木真介らの残留が明らかになっている。

この将来性豊かな選手たちを軸にコアメンバーが揃って残留したことで、継続性によるコンビネーションの熟成が期待できる。さらに新たな若手有望株として過去2シーズン、韓国KBLでプレーしていた大型ポイントガードの中村太地を獲得と、三河は新シーズンがより楽しみなロスター編成となっている。

思い起こせばシーズン最終戦終了後の記者会見で、鈴木貴美一ヘッドコーチは「今までいろいろな若い選手を見てきましたが、非常に努力家で素直、成長したい気持ちを持っていて今までの中でもトップの選手たちかなと思っています」と、若手選手たちを評価していた。ヘッドコーチ自身の続投も明らかになった今、会見で語っていた熱い言葉を紹介したい。

「ベテランのスター選手である金丸選手、川村(卓也)選手が抜けて今年は全くダメだろうと予想されていたチームでした。そこから若い選手が本当に一生懸命頑張って成長してくれて、チャンピオンシップにもう少しで出られる、去年と同じようなレベルまで来てくれたのは良かったです。次に繋がると思います」

このようにシーズンを総括した指揮官は、昨季からのシェーファーに続き、新たにコアメンバーの地位を確立した西田、角野、長野の成長ぶりを次のように評していた。「西田選手は最初、どんどんシュートを打っていてそこからパスも出すようなりました。シュート力、ディフェンスともに良くなりました。角野選手は得点能力がありますが、チームとして勝つためにどうプレーをすればいいのか、まだまだなところがありました。そこを一つひとつ覚えていって、勝負どころで良いオフェンスリバウンドを取るなど大きく成長しています。長野選手はとにかくどんな状況でも必死にディフェンスをやって、ミスをしてもスプリントバックで戻る。練習中からそういう姿を見せてくれています」

西田優大

「若い選手たちを勝たせてあげたい。みんなに優勝を味わわせてあげたい」

25年以上に渡って三河で指揮を執る鈴木ヘッドコーチは「勝てるポテンシャルのある選手がいながら、勝ち方を知らないところは一番苦労しました。でも、それができた試合もありました」と、荒削りな部分はあったとはいえ、潜在能力については大きな手応えを得ていた。「外国籍は良い時と悪い時のアップダウンがありましたが、日本人選手は本当に今までの中で、一番良い選手が集まったと思います。みんなとまだ面談していないですが、できるだけ多くの選手が残って欲しいです」

また、「良い選手を集めて何年もかけて良い組織を作って優勝している。そこをリスペクトするのは重要です」と、地区優勝のチームについて触れ、継続性の大切さを強調していた。その上でここまでの結果を見ると、日本人の主力選手たちはほぼ残留と希望通りとなっている。また、「戦力的にもう少し上積みしたいです。このままだと物足りないところはあるので、そういうところは考えています」と続けていたが、即戦力として中村をすでに獲得しているのも大きい。

そして、自身は何度もタイトルを獲得している指揮官は、このように締めくくっていた。「西田選手など若い選手が成長してくれているので、彼らを勝たせてあげたい。あの喜びを三河のスタッフを含めて味わわせてあげたいです。そのためには激しく練習するしかないです。しっかり練習して、またさらに強くなった三河を作っていきたいと思います」

優勝の喜びを一緒に分かち合いたい人たちには、チームの成長を温かく見守ってくれたファンも当然含まれている。「ファンの人がアウェーにも応援にきてくれて、必ず声をかけてくれて『若い選手たちいいよ』と励ましてくれました。その言葉が僕にとってすごくこの一年間のモチベーションとなりました」

まだ、外国籍選手などロスターは固まっていないが、伸び盛りの若手が揃って残留し、ケミストリーの構築も期待ができる点で、少なくとも三河はここ数年で最も充実したオフシーズンのスタートを切ったと言えるだろう。