井手口孝

大所帯の強み「ウチは104分の15」

6月5日、インターハイ福岡県予選決勝が行われ、福岡第一が70-64で福岡大学附属大濠を下し、インターハイへの切符をつかんだ。

第1クォーターを2点ビハインドで終えた第一は、第2クォーター開始1分半でチームファウルが4に到達するファウルトラブルに陥った。ここで守備のインテンシティを落とすと、一気に流れを持って行かれる危険性があったが、控えの中村千颯と川端悠稀が窮地を救った。

2人がディフェンスのトーンをセットしたことで、大濠から連続でターンオーバーを誘発すると、トランジションを繰り出しては得点にアシストと一気に流れを引き寄せた。互いにアウトサイドシュートに当たりが来ない膠着状態が続いたが、2人の投入がリズムを生み、崎濱秀斗が2本連続で3ポイントシュートを成功させた第一はこのクォーターを20-9と圧倒した。結果的にこの第2クォーターはターニングポイントとなったが、井手口孝コーチは2人の起用をプラン通りだったと明かした。

「スタートを前半引きずると、後半はお互いに足が止まると思っていました。どこで決断するか。3分、もしくは5分ぐらいを考えていたけれど、結局10分近く出ました」

中村が8分半の出場で5得点1アシスト、川端が約10分の出場で2得点5アシストを記録した。一方の大濠は先発の5人中2人がフル出場で主力にプレータイムが偏り、ベンチポイントはゼロだった。1ポゼッション差に迫られることもあったが最後まで逆転を許さなかった。第一は選手が100人を超える大所帯だが、井手口コーチは選手層の差を勝因に挙げた。「一気に追いつかれると思いました。でも大濠さんはちょっと疲れていて、ベンチメンバーがいないと思いました。ウチは104分の15ですから。数は力なんです」

轟琉維

チームハイ18得点の轟「責任を負う立場なので強気に行きました」

2人のベンチメンバーが流れを変えたことは間違いない。チームハイの18得点を挙げた轟琉維も「セカンドメンバーが頑張ってディフェンスをしてくれて点差を広げてくれました。後半は自分たちがやるしかないという感じで、しっかりやれました」と試合を振り返っている。また、去年から主力としてプレーしてきた轟は「3年生になって、責任を負う立場なので強気に行きました」と、エースの自覚を今まで以上に強めている。

最終クォーターの終盤には、ゾーンを敷く相手に対して攻め急がず、ショットクロックが10秒前後になってから攻め始めるディレイドオフェンスを駆使した。そして轟はブザーと同時に3ポイントシュートを決めるなど、ダメージの大きい得点を挙げた。「前半は自分のシュートが打てず、相手のブレイクに繋がったしまいました」と反省を口にしたが、試合を決定づけるビッグショットを決め、「最後の3ポイントシュートは良かった」と笑顔で答えた。そして、「初めてのインターハイになりますが、チャレンジャーとして強い気持ちを持って必ず日本一になりたい」と意気込んだ。

一方、惜敗した大濠の片峯聡太コーチは「ゾーンは来ると思っていましたが、良い状況判断ができなかったです。第一の気合いの入ったディフェンスに少し押されてしまった」と試合を振り返った。

ペイントでの攻防を制したように、インサイドのアドバンテージを生かしたオフェンスは常套手段だった。それでも、「どうしても中ばかりになってしまったので、そこでもう少し散らして、ずっと調子の良かった芦田(真人)のアテンプトをもう増やしたいところではありました」と、中一辺倒になってしまったバランスの悪さを悔やんだ。

この試合の大濠はアウトサイドシュートに苦戦し、12本放った3ポイントシュートのすべてが外れた。片峯コーチが名前を挙げた芦田は県予選の2回戦で18本中13本の3ポイントシュートを成功させるなど、好調を維持していた。しかし、第一の徹底マークに遭い、3ポイントシュートの試投数は2本に留まった。

片峯コーチは言う。「強めのクローズアウトが来ていたので、その中で何ができたかはビデオを見直して反省したい。相手はやりたいことを抑えてくる。それに対して、どう工夫するかの部分で僕の力が至りませんでした。長い夏になりますが、スキルアップをテーマにやっていきたいです」