2試合とも得意の3ポイントシュートが不発も、勝ち切れたところが示すチームの成長
Wリーグのプレーオフ、セミファイナル第2戦が4月10日に行われ、富士通レッドウェーブがENEOSサンフワラーズに61-53と第1戦(67-58)に続いて守り合いを制し、6年ぶり5回目となるファイナル進出を決めた。
大事な出だし、富士通は第1戦の良い流れを継続させる。守備で激しいプレッシャーをかけてENEOSのボールムーブを停滞させタフショットを打たせ続けると、オフェンスではインサイドへのカットインに見事な合わせのパスを通すなど、テンポの良いボールムーブで切り崩していき、第1クォーターで19-4の大量リードを奪う。
このまま主導権を握り続けた富士通は、12点リードで第4クォーターを迎えた。しかし、ここからENEOSの粘りに合い、オフェンスが単発となって相手に走られるケースが増え残り3分を切って5点差にまで詰め寄られた。だが、富士通はこの勝負どころでディフェンスで踏ん張ると、残り1分13秒にオコエ桃仁花がドライブからシュートをねじ込んでリードを広げる。
そして残り36秒、「最後に追い上げられた時も焦りはなかったです。第4クォーターは、自分があまりボールを触れていなかったので、大事なところでもうちょっとボールを触る意識でプレーしました」と冷静さを失わなかった町田瑠唯が、スイッチで生まれたスピードのミスマッチをついてのドライブからダメ押しのバスケット・カウントを奪った。これで勝負アリとなり、富士通が粘るENEOSを振り切った。
町田「今年のチームはディフェンスでしっかり我慢ができる」
富士通といえば、司令塔の町田を中心としたボールムーブから3ポイントシュートを得意とする爆発力に定評がある。しかし、今シーズンのチームは、オフに宮澤夕貴、中村優花が加入し、特にゴール下のディフェンス力を大きく強化した。その成果がレギュラーシーズンではリーグ最小の平均58.7失点となり、今回のセミファイナルでも2試合ともに60失点以下に抑えた。
指揮官のBTテーブスは、ディフェンスで崩れずロースコアでも勝ち切れるチームになったことに大きな手応えを感じている。「試合前に『60点しか取れなくて、勝つことは可能ですか?』と聞かれていたら無理と言っていたかもしれません。昨日と今日、ウチの得意な3ポイントシュートが全く入らなくても勝つことができたのは成長したところです」
13得点3アシスト3リバウンド2スティールを記録し、大黒柱としての役割を遂行した町田は、チームの進化への自信を語る。「今年のチームはディフェンスでしっかり我慢ができたり、去年よりもリバウンドを取りきれたりと、そこでセカンドチャンスをやられなくなったのは大きいです」
また、得意のドライブに加え、効果的に外角シュートを決めて17得点3リバウンド3アシストの篠崎澪も試合を次のように振り返る。「昨日よりは良い出だしで入れましたが、その後の集中力がちょっと足りなかったです。でも、こういう最後まで競り合った試合で勝ちきれたのは私たちの成長で、次に繋がるので良かったです。あとは今日できなかった中盤での集中力のところを、もう一回みんなで引き締めてやっていかなきゃいけないです」
6年ぶりのファイナルに町田、篠崎ともに「長かったです」と思いを語る
富士通がファイナルに進出するのは、実に2015-16年シーズン以来となる。前回のファイナルを経験している町田と篠崎は、ともにここまでの道のりを「長かったです」と口にする。
そして町田は「この6年間、クォーターファイナルやセミファイナルからなかなか抜け出せなかったので、ファイナルの舞台に立てることがすごくうれしいです。まだ、目標は終わっていないので、しっかり勝ち切れるようにチーム全員で頑張っていきたいです」と意気込むと、篠崎もこう続けた。
「最後の舞台に立てることのうれしさがあります。ファイナルでもしっかり楽しんでプレーすることを第一に、そこにプラスしてしっかり勝ち切って終われるように頑張りたいです」
ファイナルの相手は、リーグ連覇を目指すトヨタ自動車アンテロープスとなる。特に馬瓜エブリンとステファニー姉妹、シラ・ソハナ・ファトー・ジャ、長岡萌映子、河村美幸などインサイドの厚みはリーグ随一のタレント集団だけに、よりチーム一丸となってルーズボールに飛び込み、リバウンド争いで渡り合えるかが鍵となるだろう。
それができれば、攻守の素早い切り替えで走る富士通のやりたいバスケットボールを展開できるはずだ。シュートは水物であり入る日あれば、そうでない日もある。だとすれば今回、セミファイナルで2試合ともに不発だった富士通の長距離砲が、ファイナルで爆発する可能性は十分にある。自分たちの持ち味を発揮しきれない中でも勝ち切ったからこそ、ファイナルに向けてより大きな期待が持てる富士通の見事なセミファイナルでの戦いぶりだった。
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