「慌てずに身体の声を聞いて、辛抱強く取り組まないといけない」
マジックのマーケル・フルツは、2017年のNBAドラフト全体1位でセブンティシクサーズから指名されてプロの世界に飛び込んでから、紆余曲折を経験してきた。鳴り物入りでNBA選手になった1年目からの活躍が期待されながら、彼が直面したのはケガとの戦いだった。
ルーキーイヤーには、腕の痺れなどの症状が出る胸郭出口症候群という聞き慣れない症状に苦しんだ。2年目にはシクサーズからマジックにトレードされる屈辱を味わったものの、これがフルツにとって転機になった。
若手中心で伸び伸びとプレーできる環境を手にしたフルツは、シクサーズ時代に垣間見せていた才能を発揮。3年目の2019-20シーズンに先発に定着し、2020年のオフに3年5000万ドル(約58億円)の契約を勝ち取った。マジックも徐々に再建に向けた動きを活発化していた時期で、20-21シーズンにはアーロン・ゴードン、ニコラ・ブーチェビッチ 、エバン・フォーニエと主力を一挙放出。それでもフルツは新チームのリーダーとして期待されながら、昨年1月の試合中に左膝前十字靭帯を断裂する重傷を負い、長期離脱を余儀なくされた。
ケガから約1年が経ち、チームのポッドキャスト番組に出演したフルツは、現地2月28日のペイサーズ戦で復帰すると明言した。リハビリとトレーニングという単調な日々を送るだけの1年だったはずだが、シクサーズ時代にも長期欠場を経験していたため、彼に焦りはなかった。
「今の方が力強さを感じている。今回のケガのおかげで、様々な部分の練習や強化に時間を使えた。しばらくぶりに最高の状態になれたと感じているくらい。全身の筋力もそうだし、体幹も鍛えられて、コンディションも良い状態。これまでも復帰を経験してきたけど、今回がベストの状態で、ようやくバスケットボールをプレーできる」と、フルツは番組内でコメント。長く、厳しいリハビリについても、次のように振り返った。
「以前も肩のケガを経験していたおかげで、急ぐべきでないことは分かっていた。調子がいい日もあれば、そうではない日もある。身体の声をしっかり聞くことが大事。そういう対応が大事であって、僕には今回のリハビリを始めるにあたってアドバンテージがあった。急ぎ過ぎず、身体の声を聞いて、辛抱強く取り組まないといけないんだ」
復帰後しばらくはコール・アンソニーの控えとしてプレーし、出場時間にも制限が設けられるだろう。今シーズンのマジックは14勝47敗で東カンファレンス最下位で、プレーオフ進出の望みも早々に断たれたが、復帰するフルツにとってはプレッシャーを感じる必要もなく、かえって好都合と言える。
今シーズンから本格的に再建を始めたマジックにとって、得点とアシスト、そして守備でも定評のあるコンボガードのフルツは長期的なプランに含まれている重要なピースだ。
NBAで多くの苦難を乗り越えてきた彼が復帰戦でどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、現地28日の試合が楽しみだ。