トム・ホーバスは「勝つ準備がてきているコーチ」
いよいよ今週末、バスケットボール男子日本代表はワールドカップアジア地区予選のWindow2の2試合を迎える。
最年少選出となった西田優大と1歳違いの23歳で新生トム・ホーバスジャパンに名を連ねたアイザイア・マーフィーは「これだけ大きい大会で沖縄に戻ってこれるのはすごく良い気持ちです」と、地元開催でのワールドカップ予選に気持ちを高ぶらせている。
マーフィーは若手中心のメンバーで構成されたB代表での強化合宿に参加した。その際、ホーバスコーチは「このメンバーが経験を積めばA代表のチャンスもあります」と語っていたが、その言葉通り、マーフィーにチャンスが巡ってきた。マーフィーは196cmの長身ながらコンボガードとしてのスキルも合わせ持つ。そして、最大の武器は豪快なダンクを可能にする高い身体能力だ。自身もその日本人離れした身体能力でチームに貢献したいと話した。
「強化合宿で良い結果を残して、もう一度呼んでもらえたことはとても光栄です。高さやリバウンド、ディフェンスでも何でも、チームに必要とされることを自分の身体能力を生かして全力でやっていきたいと思っています」
所属する広島ドラゴンフライズでは独特なリズムから繰り出すドライブやプルアップで相手ゴールを狙っていくことが多い。しかし、代表ではロングレンジの2ポイントシュートを打たず、3ポイントシュートとペイントアタックをメインとした攻撃を主とする。マーフィーはその戦術のアジャストに最初は苦労したという。「自分のチームと代表との一番大きな違いはロングツーポイントを打たないことです。ロングツーポイントを打つのなら、3ポイントシュートを打ちなさいという指導で、3ポイントシュートかゴール下まで行ってペイント内で決めてくるという、そこにアジャストするのが特に難しかったです」
こうした細かいルールは日本が世界と対等に戦うために必要な要素だ。ホーバスは女子日本代表のヘッドコーチを務めている時から、多くのフォーメーションを覚えさせるなど細部にこだわる指導者として知られている。さらにホーバスは男子日本代表の『文化』を変えたいと公言しているが、マーフィーは彼の本気度を目の当たりにし、「勝つ準備がてきているコーチ」と評した。
「この合宿を通して、日本のバスケカルチャーを本当に変えたいというのが伝わってくるコーチです、一つひとつ細かいディテールまで指示を出してきますし、真剣に変えたいというのが伝わってきます。一番大事なのは一つのゴールを目指してチーム全員が一つのマインドセットを持つことで、特に細かいことにまで気を配っていくことが勝てるチームに繋がっていくと思っています」
もちろん、指導者や戦術が変わったからといってすぐに効果が現れるほど世界は甘くない。これから戦術を深い部分にまで落とし込むと同時に、チームケミストリーを高めていく作業がずっと続いていく。それでもマーフィーは新たな一歩を踏み出した日本の力を信じている。「まだポテンシャルを最大限出し切れているとは思っていないですし、これから持続的に成長していきます。可能性は無限にあると思っています」