田臥勇太

取材・文=鈴木健一郎

ウォリアーズに刺激、アメリカで身体作り

先週行われたBリーグのティップオフカンファレンス。田臥勇太の存在感はやはり際立っていた。新シーズン開幕前日に38歳の誕生日を迎えるが、バスケットボールに懸ける情熱に衰えは一切ない。「開幕は何度迎えても、一つひとつが毎年違うので新鮮です。違いがあるとすれば、開幕を迎えられることのうれしさで、それはシーズンを重ねるごとに増しています。毎年が新しいチャレンジで、どういうシーズンになるか、どういうシーズンにできるか楽しみです」

常にバスケ第一の生活を送っている田臥だが、身体の面でも気持ちの面でも擦り減っているようには感じられない。オフシーズンもバスケ漬けだったが、田臥にとってそれは心身ともにリフレッシュする秘訣でもある。昨シーズンが終わってすぐに向かったのが、「行かなかった年はないです」と言うアメリカ。普段はロサンゼルスがメインだそうだが、今年は初めてサンフランシスコへ。目的はウォリアーズvsロケッツのNBAカンファレンスファイナルだった。

「気分転換にもなったし、大きな刺激も受けました。プレーはもちろんですけど、ファンの方との一体感、熱気がすごいので。自分もステージは日本ですけど、ファンの方と一緒に盛り上がることのできる世界にいられて、大好きなバスケットができる。NBAの試合を見ることでその楽しさをあらためて感じられました。すごくワクワクしたし、自分もそうやってワクワクしてもらえるようなプレーをチームの先頭に立ってやっていきたいという思いになりました」

長いシーズンを戦い終わった後、オフの楽しみであるNBA観戦もプレーヤーとしての自分の『充電』なのだから、田臥のバスケに懸ける思いがうかがえる。「オフは気持ちも一回オフにして、休み、リラックスしています。それが全部バスケットに繋がっているのも当然のことだと思っています。その中でどう休むか、どう楽しむかですね」と、バスケから一日たりとも離れなかったオフを思い出しながら田臥は笑みを浮かべた。

田臥勇太

「ファンの方と一緒にチームの質を上げていきたい」

「身体を動かすのはもう当然のこと。チームの始動日まではアメリカで身体作りをしました。場所を変えることで気分も変えられるし、集中もできます。そのためにアメリカに行くのが自分のオフの過ごし方になります。特別なことはしていないんですけど、基本は午前に動いて、お昼を食べて、また午後に動いて(笑)。もちろん何もしない時期もあります。その時は徹底して休むし、観光もしました」

心身ともに充実したアメリカ滞在を経て、チームに合流。そこから開幕までのチーム作りの時期が田臥は大好きだと言う。「開幕するまでの練習や試合では、チームで詰めるべきいろんなことだったり、自分自身の上げ方だったり、この時期にしかできないことがあって、それは楽しいです。この時期にやってきたことをベースにシーズンでどう積み上げて、発揮していけるか。その楽しみが自分にとっては非常にあります」

栃木のバスケットスタイルは「しっかりとディフェンスを頑張って、全員で動いてしつこく泥臭くやっていくスタイルです」と変わらない。「その質をどう上げていくかです。土台があって、そこからどれだけ質を高めて、自分たちの確固たるものにできるか。それがまた今シーズンもチャレンジになります。もう一つ、ウチのチームの一番の強みはファンの方と一緒に戦うことなので、そこも毎年同じじゃなくてファンの方との距離をどんどん詰めて、ファンの方と一緒にチームの質を上げていきたい。その部分でも自分が引っ張っていきたいです」

昨シーズンも同じ思いでチームの質を上げてきたが、チャンピオンシップ初戦でシーホース三河に敗れた。苦しみながらも栃木らしいバスケットが完成しつつあった時点での敗戦だった。「積み上げてきたものをどれだけ発揮できるかという部分で、一つのリバウンド、一つのディフェンス、一つのシュート、一つのスクリーン。そういう細かい部分で三河さんが上だった、という結果です。昨シーズンは悔しい思いをしたので、その結果を乗り越えて優勝を勝ち取れるように、皆さんと一緒に戦っていきます。そのために自分が先頭に立って、チームを引っ張ります」