フレッド・バンブリート

バンブリート「60分だろうが70分だろうが、こんな勝ち方ができれば気分は良い」

現地1月29日に行われたヒートvsラプターズは、意地と意地とがぶつかり合うプレーオフのような激闘となり、3度のオーバータイムにもつれた末に124-120でラプターズが競り勝った。

どちらが勝ってもおかしくない63分の激闘だったが、特筆すべきは勝ったラプターズの選手起用だ。指揮官ニック・ナースはこのところ、信頼できるスタートの5人を重用し、セカンドユニットのプレータイムが極端に短い起用法を続けている。この試合ではパスカル・シアカムが57分、OG・アヌノビーとギャリー・トレントJr.とスコッティ・バーンズが56分、フレッド・バンブリートが53分の出場。ベンチから起用したのは3人だけで、ベンチメンバーの得点は9のみ。スタメンの5人は第4クォーター最初から、あるいは途中から3度のオーバータイムまで交代なしで戦い抜き、ハードワークを身上とするヒートに競り勝った。

長い試合の中ではトラブルも起こる。2度目のオーバータイムの残り26秒でタイラー・ヒーローの得点で114-114と追い付いたヒートには勢いがあった。ラプターズの攻めはトレントJr.のシュートが外れて失敗に終わり、そのこぼれ球を拾ったゲイブ・ビンセントが高速ドライブから決勝フローターを沈めたのだが、ラプターズの攻めが終わったところでヒートはタイムアウトを取っていた。当然ながら得点は認められず、ヒートは勝機を逃した。

命拾いしたラプターズは3度目の延長に入ってヒーローにタフスリーを決められ一度は逆転されたものの、動じることなくタイトなディフェンスを続けてヒートに追加点を許さず、バンブリートのディープスリー、相手ディフェンスのズレを見逃さずカットしたアヌノビーのゴール下、再びバンブリートのディープスリーと8連続得点でリードを広げる。その後も1ポゼッション差に詰め寄られるも、鉄壁のディフェンスは崩れることなくリードを守り切った。

56分の出場で22得点9リバウンド3アシストと攻守に奮闘したバーンズは「僕らはお互いの能力を理解しているし、そこに信頼を寄せている」と、チームでの勝利を強調する。5人の選手が50分以上プレーするのはNBAで初の出来事。それでも5人全員でボールとチャンスをシェアし、フィールドゴール試投数も得点も誰か一人に偏ることがなかった。ディフェンスも同様で誰一人として穴にならないため簡単にミスマッチを作らせず、リバウンドでも全員が奮闘。指揮官がこの5人にすべてを託すのも納得の出来だ。

勝負どころで見せた鉄壁のディフェンスの秘訣をバーンズは「やっていることはシンプルだ」と説明する。「ペイントエリアをきっちり締めて、イージーなチャンスを与えない。外からのシュートにはコンテストに行き、リバウンドではボックスアウトを徹底する。すべてのポゼッションで全員でまとまり、試合の中で勝つために必要なアジャストをするんだ」

バンブリートはケガの影響で2試合欠場からの復帰戦でまだ万全ではないが、それでも53分プレーして19得点8アシストを記録。ケガ明けで53分の出場は酷使と呼ぶべきものだが、彼は「もっとプレーすることだってできた」と語り、こう続けた。

「アドレナリンが出まくっていたからだろうけど、疲れは感じなかった。これで負けていたらドッと疲れたと思う。でも勝つことができた。しかも、このリーグのベストチームの一つを相手に、今シーズンのベストゲームの一つと言える出来だった。60分だろうが70分だろうが、ヒート相手にこんな勝ち方ができれば気分は良いし、次への弾みにもなるよ」

ラプターズはシアカムが肩を手術した影響で開幕から出遅れ、他の主力もケガや健康安全プロトコルの影響でコンスタントにプレーできずに、ほとんどベストメンバーで戦うことができなかったが、ここに来て主力が揃うと、ニック・ナースが長い時間をかけて徹底してきた緻密なディフェンス、効率の良いオフェンスという『ラプターズらしさ』が出てきた。ヒート相手にトリプル・オーバータイムの激闘を制したことで自信はさらに高まり、チームは勢いに乗っていけそうだ。