チームメートを絡めたスピーディーなオフェンスの中心に
トレイルブレイザーズは新ヘッドコーチにチャウンシー・ビラップスを迎えたものの、開幕から成績が振るわず、エースのデイミアン・リラードが離脱してしまい、下位に沈み苦しい日々を過ごしています。その一方でプレータイムが増えたことで若手が成長してもいます。チームを作り直す決断をしたシーズンだけに、ポジティブな要素を新たな力にしてシーズン後半に成績を上げていきたいところです。
アンフィニー・サイモンズは今年に入ってから3ポイントシュート成功率43%と高確率で決めて、平均26.3得点を奪うだけでなく、7.9アシストも記録してオフェンスの中心として機能しています。2018年のドラフト24位で指名されてから、シックスマンとして大きな期待をかけられ、個人で点を取ることを仕事にしてきました。しかし、若さゆえの不安定さが目立ち、チーム成績が悪くなるにつれてプレータイムを減らすことを繰り返し、なかなかブレイクに至りませんでした。
それが3年目の昨シーズン後半にシュートが安定するようになると、今シーズンは3ポイントシュートでディフェンスを引き出してのドライブも目立つようになってきました。ディープスリーを武器にするリラードに似た崩し方ですが、よりスピードのあるサイモンズはインサイドでかき乱すことができます。チームとしても3ポイントシュート頼みだったオフェンスが、サイモンズによって変化してきました。
特にこの影響を受けたのがセンターのユスフ・ヌルキッチで、サイモンズの活躍とともに得点を伸ばしています。1月はシュートの半分以上をサイモンズのパスから打っており、インサイドでの合わせの上手さが目立ってきました。逆にサイモンズもヌルキッチからのパスやスクリーンで得点を重ねており、2人の頻繁なパス交換がチームに良いリズムを生み出しています。主導権をリラードが握っているコンビプレーと違い、他のチームメートも含めた変化を見せていることも、上手く機能している一因です。
またガードとセンターのパス交換が増えた中で、3年目のナシール・リトルが高い身体能力を生かしてウイングからの飛び込みを増やしてきました。ブレイザーズでは珍しくシュート力よりもハードワークで輝くタイプだけに、リラードのキックアウトパスを待つよりも、チーム全体に動きがある方がフィットしてます。速攻の得点も増え、チームに躍動感をもたらしています。
どんな場面でもチームを救えるリラードは絶対的なエースですが、時にそれがチームを単調にしている面も否めません。リラードに合う選手を求めてアウトサイドのシュート力を重視しすぎ、チーム全体の足が止まることも頻繁にありました。それがリラードの離脱から、若さゆえの粗さはあるものの、運動量やハッスルプレーが目立つようになってきました。
リラードが離脱してから5勝4敗と勝ち越しており、苦しいシーズンながら光明も見えてきました。手術を受けるリラードはチーム状況次第で復帰時期を決めると言われています。プレーオフのためにリラードが戻ってくる状況を作れるのか、サイモンズとリトルにはさらなる成長が求められています。