
「選手を守る議論ではなく、利益を増やす話ばかり」
セルティックスのジェイレン・ブラウンは率直な発言で知られる選手で、これまでにも政治やリーグのあり方について意見を投げ掛けてきた。NBAでスポーツベッティングの事件が起こり、彼が意見を口にするのは自然な流れだ。
「何が起きているのか完全に把握できていないけど、選手会の副会長として、僕は真相を突き止めたい。そのための調査担当者が選手会にはいるから、徹底した調査を行う。そして彼らが無実であれば、潔白を証明してイメージが回復されるように対処する」とブラウンは言う。
ブラウンはあくまで推定無罪の原則に立ち、逮捕された者を悪くは言わない。「テリー・ロジアーとはチームメートだった。彼の性格からすると今回のことは考えづらい。様々な報道を見たけど、少しおかしいんじゃないかとも思っている。インターネット上には間違った情報が多すぎて、何が真実で何がそうでないかを確認すべきであり、それまでは何も断定はできない」
一方で、2018年の合法化に端を発するスポーツベッティングの爆発的な拡大が生み出したマイナスの影響について、ブラウンはこう話す。「NBAにギャンブルを導入する時点で、ギャンブルが生み出す負の側面がどれほど選手に直接的にかかわってくるか、その影響はほとんど考慮されなかった。僕たち選手はそこから何の利益も得ていないのに、ネガティブな影響や厳しい監視の対象となっている」
「問題が起きた後でさえ、リーグの配慮はほとんどない。彼らの考えは『ギャンブル導入の悪い影響はあるだろうが、君たちはそれだけの大金を稼いでいるのだから、ファンからの批判や怪しい人物の接近、賭け事へのプレッシャーに対処するのは当然だ』というものだ。ギャンブルを導入したことで試合や選手を巡る否定的な議論が広がった。長年に渡って続いてきた選手とファンの関係が変わってしまったんだ」
「どうすれば選手を守れるか、という議論はほとんど行われてこなかった。いかにビジネスを拡大し、利益を増やすかという話ばかり。今後の解決策をどうすべきかは分からないけど、もっと時間をかけて議論すべきなのは間違いない。今の悪い状況は、もっと議論をしていれば避けられたはずだ」
NBAコミッショナーのアダム・シルバーを中心に、NBAは素晴らしいリーグ運営を行ってきて、世界的な人気の拡大、ビジネスの拡大に成功している。ただ、このスポーツベッティングの問題は、リーグの対応が間違っていたと言わざるを得ない。アダム・シルバーは未成年へのスポーツベッティングの広告を非表示にするなどの対策を打ち出しているが、これまでにもジョンタイ・ポーターの永久追放など様々なトラブルが噴出していたにもかかわらず抜本的な対策を取らず、今回これだけの問題を起こしてしまった以上、そんな次元の話では済まない。
散々話した後で、ブラウンはこの後に始まるニックスとの試合に向けて気持ちを切り替えた。「この件はプレーに影響しない。僕はただコートに出てプレーするだけで、そういう時に他のことは一切気にしない。でも僕に賭けるのはやめておけと忠告しておくよ。今は試合を楽しみたい。ニューヨークでの試合はいつも素晴らしい雰囲気になるから、コートに出て競い合うのが楽しみだ」