デリク・クイーン

多彩なスキルで33得点、ルーク・コーネットには悪夢

ザイオン・ウイリアムソンは内転筋を痛めて5試合連続で欠場しており、第2クォーター途中で25点差を付けられた。3勝21敗のペリカンズは今日も負け──。空席が目立つスムージー・キング・アリーナの観客の何割かは、帰るタイミングを考え始めていただろう。

しかし後半、ペリカンズは生まれ変わったかのようなパフォーマンスを見せる。主役となったのは1巡目13位指名のルーキー、デリク・クイーンだ。指揮官交代を機にチーム内での序列を高めた彼は、ニコラ・ヨキッチに似たスキルと視野の広さを生かしたポイントセンターとして活躍の場を広げている。もっとも、チームは負け続けており、彼のパフォーマンスにも大きな波がある。

だが、この試合での彼は良い波をつかまえた。前半は11分半の出場で4得点6リバウンド3アシストと及第点以下だったが、第3クォーターに突如として爆発する。フィールドゴール6本とフリースロー9本をパーフェクトに決めて21得点、さらにはターンオーバーなしで5アシストを記録。クイーンに牽引されたペリカンズはこのクォーターを45-23として逆転に成功した。

マークに付いたルーク・コーネットにとってクイーンは悪夢だった。フィジカルを生かしてリムから遠ざけようとするも、軽やかなピボットに翻弄されてフックシュートを許すかフリースローを献上。トランジションでは屈辱のアンクルブレイクを許した。身体能力のあるケルドン・ジョンソンや経験豊富なハリソン・バーンズにマークが変わると、クイーンはその上からシュートを決め続けた。

33得点10リバウンド10アシストで、NBAキャリアで初のトリプル・ダブルを記録。暫定ヘッドコーチのジェームズ・ボーレゴは「20歳であれだけ落ち着いてプレーできる選手がいるだろうか。特別なパフォーマンスだった」と絶賛した。

しかし、クイーン自身はさほど喜んでいるわけではなかった。残り30秒、彼の33得点目でペリカンズが132-131と逆転したものの、その後にディラン・ハーパーにゲームウィナーを決められ敗れたからだ。

「スタッツは良かったと思う。でもチームが勝てないのでは意味がないよ。スタッツが悪くても試合に勝つ方が良い。ブルズに勝った時は僕のディフェンスが下手で、集中的に狙われて下げられた。その後はベンチで一番大きな声を出してチームを後押しした。それで勝ったから僕は満足だった。極論を言えば、試合に出れなくても勝てればいい」

その彼が唯一評価する自分のスタッツはリバウンドだった。「2桁リバウンドはこれで2回目だ。リバウンドを確保できればすべてがスムーズに流れだす。だからこれはうれしいね」

今はペリカンズのベテランたちがクイーンにボールを預け、そこから何かが生み出されるのを期待している。NBAドラフト時点、開幕の時点で即戦力としては懐疑的な目を向けられたクイーンは、今は全く違う立場にいる。「みんな僕みたいな選手とプレーしたことがないと言うんだ」と彼は言う。「彼らがボールを預けてくれるのは、パスが返ってくることが分かっているからだ。僕は自分で行くチャンスがあれば得点を狙うけど、オープンになっている選手がいれば確実にパスを出してシュートを打たせる。そこに信頼関係があると思う」

勝てないことに気を病んでいるが、ルーキーの彼は結果よりも自分の成長に目を向けることが許される時期にある。勝利のプレッシャーを背負う必要はない。ただ試合を重ねる中で学び、自分のスキルを磨き、勝てないチームに辟易しているファンを楽しませればいい。