琉球ゴールデンキングス

「経験を持っている選手が勝たせてくれた」

5月10日、琉球ゴールデンキングスは、島根スサノオマジックとのチャンピオンシップクォーターファイナル第2戦に88-70で快勝した。

試合の立ち上がり、琉球は攻守ともに球際の強さを発揮し、ゴール下の肉弾戦で優位に立つことで先手を取る。しかし、負ければシーズン終了となる島根も意地を見せ、第2クォーターに入ると晴山ケビンがこのクォーターだけで8得点と奮闘。控え選手のステップアップにより追い上げ、前半は46-45と点の取り合いとなる。

だが、第3クォーターに入ると琉球は前半の課題を修正し、守備のギアを上げることで島根にタフショットを次々と打たせる。オフェンスではケヴェ・アルマの爆発によって20-5のビッグクォーターを作って一気に突き放すと、そのまま一気に押し切った。

これで琉球は7回連続のセミファイナル進出を決めた。琉球の桶谷大ヘッドコーチは、チャンピオンシップでの豊富な経験を勝因に挙げる。「経験を持っている選手が勝たせてくれたと思います。レギュラーシーズンからハードにプレーしていますが、チャンピオンシップではそれ以上にタフにプレーしないといけない。レギュラーシーズンでは簡単にできたことができなくなる中、そういう経験がある選手たちがゲームを作ってくれました」

この試合、琉球はヴィック・ローがゲームハイの26得点を挙げ、アルマが19得点、アレックス・カークが18得点を記録。ジャック・クーリーはゴール下の守護神として、いつも通りの鉄壁ディフェンスで勝利に貢献。外国籍3人と帰化枠のところで優位に立てたことが大きな勝因となった。

振り返れば昨シーズンの琉球は、カークがシーズン途中の加入だったことに加えコンディション面でも出遅れ、彼と外国籍コンビを同時起用するビッグラインナップがうまく機能せずに終わった。しかし、今シーズンはカークが1年前とは見違えるようなコンディションで機動力が大幅に向上したことで3ビッグが効果的に機能している。

このクォーターファイナルではクーリーとカークのツインタワーに加え、ハンドラーの能力に優れた201cmのローを3番ポジションで起用するケースが多かった。他にもツインタワーに、206cmのアルマを起用し、指揮官がスーパースリービッグと名付ける大型布陣。ロー、アルマにカークによる機動力重視と、相手の陣容に応じて柔軟な起用法でアドバンテージを生み出せる。

アンソニー・マクヘンリー

「みんながエゴを出さず、チームのためにやれている」

岸本隆一を欠くことで日本人選手の得点力ダウンが避けられないだけに、このカルテットの好調は大きな強みだ。桶谷ヘッドコーチは、ビッグラインナップの進化の理由をこう語る。

「チームの中にはエゴとエゴのぶつかり合いが起こるものです。日本人選手からしたら日本人中心のバスケットをしたくなる。そのエゴが解消できたことで今シーズンはビッグラインナップが試合でも使えるようになりました。それによって試合の中で成長することができ、オフェンスのスペーシング、アレックスがハードショウなど外のカバーにもいけるようになってディフェンスの問題が解消できました」

プロバスケ選手である以上、自身のスタッツは評価に直結し、年俸という分かりやすい形で反映される。外国籍選手の出番が増えれば日本人選手の出番は減り、それは年俸にも響く。チームファーストの綺麗事だけで済まないのが現実で、桶谷ヘッドコーチも「プロのバスケットボールチームは、お互いのエゴが衝突するもの」ととらえている。

その中で、「簡単な道のりではないですし、選手たちを納得させないといけない」と、苦難を乗り越えビッグラインナップが成熟した背景には、開幕前に世代交代を行なったプラスの影響もあると続ける。

「赤裸々にこういう話をしていいのか分からないですけど、正直、今シーズンに関しては日本人に若手が多いことで受け入れやすくなった。これで上手くいった部分もあると思います」

もちろん日本人選手だけでなく、外国籍選手の歩み寄る姿勢も大きい。そして現役時代、bjリーグ、Bリーグで長らく活躍し、日本人、外国籍の両方から慕われていたアンソニー・マクヘンリーコーチの貢献も大きい。

桶谷ヘッドコーチは語る。「マックはプレーヤーとしてレジェンドであり、人間として最高の人柄です。コーチとしてはまだ半人前ですが、彼は誠実にコーチングを勉強しようとハードワークしています。選手としてすごかったからコーチングができるわけではありません。彼がコーチとして誠実に選手と向き合っているから選手は話を聞きます。そこは今シーズンの僕らが成功している理由の一つ。誠実に選手と向き合うことで、みんながエゴを出さず、チームのためにやれている。日本人選手と外国籍選手がしっかり歩み寄れていると思います」

セミファイナルへ向け、桶谷ヘッドコーチは「今シーズンは誰が活躍するか分からないところで、相手にとって守るのが難しいと思います。そして誰が出てもディフェンスを頑張れる強みを全面に押し出してセミファイナルを戦いたいです」と意気込みを語った。

指揮官が自信を見せる日替わりヒーローが出ることは琉球の今シーズンの強みだ。ビッグラインナップの進化と含め、エゴの解消による一体感の強さが際立ったクォーターファイナルの連勝となった。