ケガの多いベテラン2人に巨額契約、オフの動きに注目

セブンティシクサーズの苦戦は開幕前から予想されていた。パリオリンピックに参加したジョエル・エンビードは、昨シーズンから痛めている左膝の回復が遅れていた。期待の新戦力であるポール・ジョージは、プレシーズンゲームで左膝を痛め、開幕後にケガを再発させた。ジョージは他にも鼠径部、右足首、左手小指の腱にもケガを抱えていた。

エンビードは19試合に出場しただけで、治療に専念することを決めた。そしてジョージも41試合でこれに続いた。痛み止めの注射を打ちながら出場を続けても良い結果は生まれない。ここ2週間は欠場して、医師と今後の相談をしていた彼は、今シーズンの残り試合には出場しないことを決めたのだ。

ルーキー・オブ・ザ・イヤーの有力候補だったジャレッド・マケインは左膝の半月板を手術して、またエリック・ゴードンも右手首のケガで今シーズンは終了となっている。現在は他にもタイリース・マクシーが腰の痛み、ロニー・ウォーカー四世が脳震盪プロトコルと欠場者が相次ぐ苦しい状況。まだプレーオフ進出の可能性は残されているものの、それよりも7位以降であればサンダーに譲渡される今年のドラフト1巡目指名権をキープすることに意味がありそうだ。

今シーズンはケガ人の続出で悪夢のような展開となってしまったが、問題はそれだけでは済まない。エンビードとは2029年まで2億4800万ドル(約370億円)、ジョージとはあと3年で1億6200万ドル(約240億円)という大型契約を結んでいるにもかかわらず、彼らの長期的な健康は保証されていない。エンビードの左膝は相当悪く、全盛期のプレーを取り戻せず、来シーズン以降も休養を挟みながらのプレーを強いられる可能性が高い。ジョージのケガはエンビードのように慢性的なものではないが、もともとケガが少なくない選手だけに、34歳になった今は衰えの懸念が大きくなっている。

フリーエージェントとして華々しく加入してからわずか半年で、ジョージにはトレードの噂が出るようになった。今シーズンは結果を出せなかったが、ジョージの経験、得点だけでなくディフェンスの万能性も持っている特長は貴重なもので、トレードデッドラインにはウォリアーズやホークスが彼に関心を示していたという。

ケガの多いベテラン選手に高額契約を与えることは、今のサラリーキャップでのルールでは致命傷になりかねないだけに、これに当てはまるジョージのトレードをまとめるのは相当に難しいが、これから夏に向けて市場に彼のニーズは出てくるはずだ。

ただし、シクサーズは忍耐力を欠くことで大きな失敗を繰り返してきたチームでもある。最大の例はアル・ホーフォードで、獲得するやいなや『役に立たないベテラン』のレッテルを貼り付けて放出したが、その4年後にセルティックスに優勝をもたらすキーマンとなった。契約問題がこじれて自ら放出を望んだジェームズ・ハーデンのクリッパーズでの活躍は別としても、トバイアス・ハリスはシクサーズを離れた今シーズン、その万能性と経験を生かしてピストンズのプレーオフ進出に貢献しようとしている。

どんな選手でも新しい環境への順応には時間がかかるものだし、ケガという不運が重なれば難易度は跳ね上がる。ここで我慢をして今のロスターを信頼し続けるか、あるいは思い切って仕切り直すか。これまでシクサーズは後者ばかりを選んできたが、今回は熟慮を重ねるだけの時間がある。

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