ジャック・クーリー

「やってはいけないのが特効薬を欲しがること」

2月2日、琉球ゴールデンキングスはアウェーでアルバルク東京と対戦し、インテンシティの高いバスケットボールを遂行して83-58で快勝。前日に20点差で大敗した雪辱を果たした。

試合の出だし、琉球は小野寺祥太、岸本隆一、脇真大と日本人選手たちが積極的なペイントアタックから得点を重ねるなど、昨日の試合で欠けていた激しさを見せると、小野寺が効果的に3ポイントシュートを決めて先手を取る。

そこからA東京のパスを上手く散らす質の高いチームオフェンスに反撃を許すも、第2クォーターに入るとジャック・クーリーがゴール下を支配。このクォーターだけで5つのオフェンスリバウンドを取ってのセカンドチャンスポイントを重ね、47-37と突き放してハームタイムを迎える。

後半に入っても琉球は、攻守ともにプレー強度でA東京を圧倒。激しいディフェンスでタフショットを打たせ、攻めてはビッグマンだけでなくガード陣も強気なアタックを続ける。第4クォーター残り6分半には速攻から松脇圭史がレイアップを沈めて20点差と突き放し、楽々と逃げ切った。

大敗を喫した直後の試合となれば、何らかのテコ入れを行いたくなるものだが、琉球の桶谷大ヘッドコーチは、長いシーズンを見据えて小手先の策を講じなかった。その理由を「昨日のような試合の後、やってはいけないのが特効薬を欲しがること。それを使いうこと瞬間的に良くなっても、人間は耐性がついてしまうからです」と語る。

「昨日と今日のプランは何も変えていないです。ただ、やってほしいのは規律正しく、インテンシティを持ってプレーすること。それを表現してくれました」と続けた。

この試合、琉球のやるべきプレーを体現したのはクーリーで、フィールドゴール9本中7本成功の14得点に21リバウンドの大暴れだった。

「昨日はオフェンスリバウンドをとられ、良い形でシュートを打たれるなど、彼らにやりたいプレーをさせてしまいました。A東京は素晴らしいチームですが、僕たちも強いチームです。そして強いチーム相手に連勝するのは簡単なことではないです。今日の自分たちのプレーを誇りに思います。インテンシティが高く、A東京相手にこのようなクォリティーのプレーができたのは良いことです」

こう試合を総括するクーリーは、自身のプレーについて「自分個人としても今日は誇りに思うプレーができました」と語り、それもチームメートのおかげと強調する。「チームメートがアタックをして、相手のビッグマンがファウルトラブルになったことで僕の仕事が簡単になりました。ファウルトラブルの状態で、フィジカルの強い僕をボックスアウトをするのは難しいです」

ジャック・クーリー

「常にリバウンドで勝つことがキングスのバスケ」

琉球は先週の宇都宮ブレックス戦もゲーム1を大差で負けた後、ゲーム2でやり返した。ここ2週間に限らず、今シーズンは連戦の初戦で負けることが目立っている。そんな中、水曜日に行われる天皇杯準決勝の三遠ネオフェニックス戦は当たり前だが一発勝負だ。

クーリーも「初戦で負けてしまう傾向は修正しないといけません。天皇杯は一発勝負です。木曜日も試合があると考えることはできない」と気を引き締める。

そして三遠戦の勝敗を分けるポイントをこう見ている。「常にリバウンドで勝つことがキングスのバスケットボールです。三遠はオフェンスのあらゆる面で強力だからこそ、僕たちはリバウンド、ディフェンスでインテンシティを高く継続しないといけない。そしてコーチの指示に従う。僕たちのコーチ陣はリーグベストであり、彼らが水曜ゲームのために素晴らしい準備をしてくれると信頼しています。すべてのポジションで今日のようなプレーをできれば大丈夫だと思います」

また桶谷ヘッドコーチは、「今日と昨日の違いをみんなが理解すべきです。20点差で負けて、20点差で勝ちましたが、その差は紙一重です。最初に自分たちがコントロールできることをどれだけやれるのかです」と語る。

余談だが、今日はNBAでルカ・ドンチッチのレイカーズ移籍という『世紀のトレード』があった。クーリーは「試合前に知って衝撃を受けました。僕たちが知らないいろいろな事情があると思いますが、僕にとってはクレイジーという思いです。キングスファンの皆さんには、僕はトレードされることないので心配しないでほしいと伝えたいです」とジョークを交えながら語る。

ドンチッチのようなスーパースターでも本人の預かり知らぬところで放出されるように、プロスポーツの世界において一寸先は闇だ。だからこそ、クーリーは今の環境に感謝している。「僕はキングスに忠誠心を持っています。そしてキングスは僕の忠誠心に応えてくれています。自分がビジネスの世界にいるのは分かっていますが、キングスは僕にとって家族のようなもので、今の自分の置かれる状況は恵まれています」

クーリーの言う忠誠心や深い愛は、琉球という組織とともにファンにも注がれている。ホームだけでなくアウェーでも熱い声援を送るファンの信頼に応えることは、クーリーにとって最も大切にしている部分だ。「今日もファンの皆さんは素晴らしかったです。アウェーゲームなのに多くの人が声援を送ってくれました。昨日のような負け試合でも、いつもと同じようにベストを尽くして支えてくれました。だからこそ2日続けて酷いプレーを見せてしまうのは、ファンの皆さんに対してフェアではないという思いでプレーしました」

明後日の天皇杯の相手は、ここまでリーグ戦でわずか4敗と圧倒的な強さを見せている三遠だ。相手に勢いがある中で琉球が勝つには、クーリーが強調するようにリバウンドを制することであり、それはクーリーが試合のキーマンであることを意味する。