新CEOのマイケル・ウインガー「あらゆる手段を使ってNBA優勝を目指す」
ウィザーズは『チームの顔』であるブラッドリー・ビールのトレードを検討している。行き先はバックスとヒートが有力とされる。この手の噂は、シーズンオフになると必ず、そしてシーズン中にもしばしば浮上しては立ち消えになってきた。ビールは勝てないチームでプレーすることにストレスを感じながらも最後にはウィザーズへの忠誠を選び、ウィザーズも再建へと完全に舵を切ることができないまま、中途半端なテコ入れを繰り返してきた。
その結果が、2018-19シーズンから5年連続で勝率5割に届かず、プレーオフ進出は2020-21シーズンの1回だけ。それもファーストラウンドで1勝しか挙げられずに敗退している。球団社長兼GMを務めてきたトミー・シェパードの仕事ぶりは、慎重と呼ぶよりは消極的で、チーム強化のプランを示すことができず、ファンを失望させてきた。
それでも今、ウィザーズは変化の時代を迎えている。シェパードが解雇され、運営会社のCEOにマイケル・ウインガーが就任。ウインガーは最初の仕事として、ウィル・ドーキンスを新たなGMに据えた。ウィザーズの運営会社はWNBAのミスティックス、Gリーグのキャピタルシティ・ゴーゴーも保有しており、これまで責任と権限が明確ではなかったが、今後、ウィザーズの運営はウインガーCEOの権限の下でドーキンスGMが行うことになり、ウインガーは「どんな決定を下すにしても、私が全責任を負う」と明言している。
それと同時に彼はこう語る。「ウィザーズを世代を超えて競争力のあるチームにするのが目標だ。最終的には優勝争いのできるチームを作りたい。それには時間がかかるし、いつになるか約束はできないが、首都にある唯一のNBAチームが優勝を目指さないという言い訳はあり得ない。あらゆる手段を使ってNBA優勝を目指す」
ウィザーズ再建の第一歩はビールのトレードから。その可能性は高まりつつある。『The Athletic』はウィザーズとビールの代理人が、トレードについて話し合いを行っていると応じている。ビールは4年2000万ドル(約270億円)という超大型契約を残しており、これを受け入れられるクラブは限られる。またこの契約にはトレード拒否条項が付いており、サラリーキャップに余裕はあっても優勝争いに絡めないチームが行き先となれば、ビールは同意しないだろう。それでも、彼のエージェントも一緒に検討しているとなれば、この難しい条件をクリアするトレードを見いだすことができないわけではない。
噂に挙がっているバックスは、ヤニス・アデトクンポを残してチームを再編する可能性がある。ビールの得点力はチームの弱点をカバーできるし、ディフェンスの難はアデトクンポがいればカバーできるはず。ヒートにはタイラー・ヒーローとダンカン・ロビンソン、指名権を含めたトレードの可能性がある。
いずれにしても、ビールの移籍話は『夏の風物詩』ではあるが、優勝争いのしたいビールと再建を望むウィザーズが、今回もギリギリのバランスを取って動かずに終わるとは思えない。ドラフトまでに、フリーエージェント期間までにウィザーズは方針を決め、最初の一歩を踏み出さなければならない。それにより、来シーズンの契約最終年がプレーヤーオプションとなっているクリスタプス・ポルジンギスとカイル・クーズマの動きも変わってくる。
過去数年のウィザーズはここで躊躇し、結果として動かなかったが、これからは違う。外れれば壊滅的だが、当たれば大きなリターンのある取り引きにどんどん打って出るはずだ。ウインガーはクリッパーズのGMとして『ロブ・シティ』を解体し、カワイ・レナードとポール・ジョージのチームへとあっという間に様変わりさせた。「それには時間がかかるし、いつになるか約束はできない」と彼は言うが、ウィザーズはこれまでとは違う時間軸で動き始めることになる。