ドレイモンド・グリーン

対キングス用に自分のプレーを修正、果敢に攻めて21得点

ウォリアーズはキングス相手に連敗を喫し、そこから3連勝と勢いを取り戻している。そんなシリーズの最中、評価が激しくアップダウンしているのがドレイモンド・グリーンだ。最初の2試合はパフォーマンスが悪く、第2戦でドマンタス・サボニスを踏み付けて第3戦は出場停止となった。

その第3戦にウォリアーズが快勝すると、グリーンはチームに自らベンチ降格を申し入れた。この時の彼は「チームが機能しているなら、そのままでいい。僕をスタメンに戻すことで良い流れを変えてはダメだ。このリーグではベテランになると権利をやかましく言う選手が多いけど、僕はそうなりたくない」と語っている。

ステフィン・カリーとクレイ・トンプソンの『スプラッシュ・ブラザーズ』にジョーダン・プールまでスタメンに並べた3ガードは、キングスのスピーディーなバスケに対抗し、オフェンス合戦で打ち勝った。第4戦でグリーンは戦列に戻り、途中出場で31分プレーしたものの調子が上がらず、終盤はベンチに下げられている。

それでも現地4月26日の第5戦で、グリーンは失墜した自分の評価を一気に引き上げるパフォーマンスを見せた。21得点4リバウンド7アシスト4スティール1ブロック、32分の出場で得失点差+13の大活躍だった。

この試合、彼は対キングス用に自分のプレーを修正して臨んでいた。ケボン・ルーニーと彼がインサイドでプレーするのでは、キングスのスペース&ペースに対抗できない。そのためインサイドではなくウイングとして、運動量とシュート力を前面に押し出してプレーしたのだ。

彼はディフェンスの名手であり、ゲームの流れをコントロールし、オフェンスの起点となる。そのスタイルで実績を積み重ねてきた。だが彼は、先発としての立場だけでなくそのスタイルにも固執せず、どうやればチームに貢献できるかを考え、コート上で実戦した。

「第4戦では積極的に攻めたけど、レイアップを6本も7本も落とした。それから3日間で、カットの動きからのフィニッシュ、フローターを徹底的に練習した」とグリーンは言う。その結果、フィールドゴール14本中3本成功だった第4戦から、第5戦では10本中8本成功と大きな向上があった。

「そういう意味ではベンチスタートが有利に働いた。最初の6分間、ベンチから見て試合の流れを感じ、チームが何を必要としているかを把握する。それで試合のテンポを上げて、積極的にプレーしようと思ってコートに入った。今日はレイアップを外さなくて良かったよ」

第4クォーター残り4分には、彼らしからぬフェイダウェイ・ジャンプシュートも決めている。ウォリアーズにとってはうれしいサプライズで、試合後のロッカールームではカリーから『ドレイモンド・ノビツキー』とのニックネームを頂戴したそうだ。

もともとアクの強いグリーンは相手チームのファンから敵意を向けられることが多く、今回はサボニスを踏み付けた第2戦以来のサクラメントでの試合で、彼はコートに出てきた瞬間から盛大なブーイングを浴びていた。その状況でプレーする気持ちを聞かれると、「僕は僕であるだけ。良いことも悪いことも受け入れる」と答えている。

「悪役を演じようと思っているわけじゃないし、別にそれが楽しいわけでもない。でも、悪役になることから逃げたりはしない。第4戦でコートに入った時は大きな歓声をもらった。今回それとは逆のことが起きても受け入れなきゃいけない。実際のところ、目の前の仕事に集中していてブーイングはあまり気にならなかった。自分のエネルギーはすべて勝つために使いたい。だから彼らの声が聞こえた時にも、自分のやるべきことに集中していたよ」

サボニスへの暴力行為での退場と出場停止、そこからのベンチ降格は、彼のキャリアの曲がり角になった可能性もある。過去の実績にあぐらをかいて変化を拒めば、ウォリアーズでの彼の居場所は小さくなり、いずれなくなるだろう。だが、今回のグリーンはチームにとっても彼自身にとってもベストな回答を出した。

ウォリアーズは昨シーズンに再びNBA優勝を勝ち取ったが、今回はレギュラーシーズンを通して苦戦が続いた。それでもこのキングスとのシリーズを通してチームは結束し、ウォリアーズらしいバスケが機能しつつある。その手応えをグリーンはこう説明している。

「ずっと同じ顔ぶれでプレーしていても、毎シーズンでチームとして成長する必要がある。今シーズンはいつもより時間がかかったけど、ちょうど良いタイミングで形になってきたと思う。それぞれがお互いを信頼して、プレッシャーのかかる状況でも正しいプレーができている。このチームは上手く動き始めているよ」