にわかファン時評「彼方からのエアボール」第9回:Bリーグ初のALLSTARはバスケの『余興的エンタメ性』が炸裂!

2017/01/16
Bリーグ&国内
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文=深川峻太郎 写真=B.LEAGUE

オールスターゲームに感じた「新春かくし芸大会」のDNA

年末年始のテレビは、プロのアスリートが芸能人とからんだり(例:錦織圭&マイケル・チャンvsとんねるず)、おもしろ課題(例:Jリーガーのキックターゲット)に挑戦したりするスポーツ特番が目につく。しかし少なくとも私が見た範囲では、去年の暮れから今年の正月にかけて、Bリーグ選手の登場はなかった。華々しく新リーグが誕生したのに、である。

もし皆無だった(あっても極端に少なかった?)のなら、テレビ局の番組制作者は猛省すべきだろう。いや、すでに反省して、今年の年末に向けた企画書を書き始めた人もいるかもしれない。そうでなければ、鈍感すぎる。15日に開催されたBリーグ初のオールスターゲームは、バスケが持つ抜群の余興的エンタメ性を世に知らしめるものだった。今はなき「新春かくし芸大会」のDNAが、そこにはある。

なにしろ試合前の3ポイントシュートコンテストから、観客は大興奮だ。5カ所から5本ずつ、計25本の3ポイントシュートを、60秒の制限時間内に投げるルール。それぞれ5投目は色の違う「マネーボール」で(ポケモンGOの「スーパーボール」や「ハイパーボール」を連想しました)、これは入ると2ポイントだから、25本すべて決めれば30ポイントとなる。もう、そのまんまバラエティ番組で使える設定じゃないですか。

盛り上げの立役者は、金丸晃輔(シーホース三河)と田口成浩(秋田ノーザンハピネッツ)だった。参加6選手中の5番目に登場した金丸は、前日の1回戦で18ポイントの2位だったが、この日は驚異の24ポイントを叩き出して計42ポイント。前日21ポイントで首位に立っていた6番目の田口に、猛烈なプレッシャーをかけた。

野球でいえば、田口は9回裏の逆転満塁ホームランを義務づけられたようなものだ。「ここはひとつマンガみたいなやつ頼む」レベルの無茶ぶりである。

『マンガみたいな男』田口、CMまたぎ級のクライマックス

だが田口はマンガみたいなやつだった。4カ所目までにしっかりとランナーを貯めて望みをつなぎ、24投目を終えて計41ポイント。25投目のマネーボールが決まれば逆転優勝だ。まさに決勝戦の9回裏2アウト満塁2ストライクで「最後の1球」を迎えたのである。その時点でも、出来すぎた筋書きだ。バラエティ番組なら、ここで間違いなく「CMまたぎ」になるクライマックスである。

これが入るか入らないかで、Bリーグの未来が(ちょっとだけ)左右される──注目度の高さを考えれば、それぐらい重要なショットだったと私は思う。どうなんだ田口。やれるのか田口。がんばれ田口。負けるな田口。これ落としたらタダじゃおかないぞ田口。国立代々木競技場第1体育館には、ほんの2秒程度のあいだに、そんな期待と不安と声援と念力と恫喝が激しく渦巻いた。試合前の余興なのに。

そして田口は、この大仕事をやってのけたのである。最後のマネーボールがリングに吸い込まれた瞬間、私は鳥肌が立ちましたよ。試合前の余興なのに。スタンドを埋めた観客も両腕を挙げて絶叫し、まるで優勝したかのような大騒ぎだ。いや、まあ、たしかに田口が優勝したんだけどさ。試合前の余興で。

「どえらいものを見せてもらった」──そう呟いた私は、劇的すぎる大団円にグッタリしてしまい、もう帰ろうかと思ったほどだ。プロ野球のオールスターにもホームラン競争という余興があるが、こんなに熱い勝負になることはまずない。3ポイントコンテストには、独立した競技として成立し得るほどの魅力がある。それを日本人に教えた金丸と田口のデッドヒートは、この国のバスケットボール史に大きな足跡を残したと言えるだろう。

『アフロ波多野』に続く『テッカテカ富樫』のかくし芸

しかし本当にあそこで帰っていたら、私はもうひとつの偉大な「足跡」を見逃していた。まったくもって、帰らなくてヨカッタ。そう思わせてくれたのは、B.BLACKチームのポイントガード、富樫勇樹(千葉ジェッツ)である。

Bリーグ開幕戦でアフロヘアの波多野和也(琉球ゴールデンキングス)に注目した私は、この日も試合前から「なんかオモロい髪型の選手がいるな」と思っていた。あのヘアスタイルを何と呼ぶのか知らないが、テッカテカの七三分けである。今くるよ師匠を想起させるお笑い風味。でも、イケメン。そのギャップが妙に気になる。それが富樫だった。

その富樫は、同じチームでポジションがかぶる大先輩の田臥勇太に負けじとばかりに、背面ノールックパス(っていうの?)などのキャッチーな瞬間芸を序盤から次々と披露してくれた。前半が終わった時点で、「もうMVPは富樫でいい」と思えるほどの活躍だ。

しかし、とっておきの「かくし芸」がスパークしたのは後半だった。ゴール前でジャンプした身長167cmの富樫を、207cmの「JB」ことジャスティン・バーレル(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)が「よっこらしょ」と持ち上げて、豪快なダンクショットを決めたのである。

おそらく全国のお茶の間で、「それアリなのかよ!」というツッコミが入ったことであろう。テニスにたとえるなら、対錦織ペア戦で木梨憲武(とんねるず)がいつも持ち出す「巨大ラケット」みたいなものだ。いや、ビックリ度の点ではあれをはるかに凌駕するプレーであった。

記者席では、隣にいた私の担当者が即座に「たかいたかいダンク」と命名。「練習はしていない」という富樫本人のコメントがホントかどうか定かではないが、いずれにしろ、あの大技を一発で決めてみせた勝負強さと芸人魂は並大抵ではない。

日本中の子供たちに与えたインパクトも絶大だろう。今日あたり小学校の体育館では、「高い高いして!」と児童にせがまれた先生たちが「僕じゃ届かないよ~」と困惑しているかもしれない。今後はBリーグの試合前に、子供たちへのファンサービスとして、選手による「たかいたかいダンクタイム」が流行るのではなかろうか。

エスカレートする期待を上回る『来年以降』に期待!

それにしても、Bリーグの第1回オールスターゲームでアレが成功したことの意義はきわめて大きいと思う。富樫とJBは、オールスターに求められる「かくし芸」の水準をいきなりドーンと上げてくれた。来年以降、ファンの期待は高まるはずだ。しかし、このハードルを越えるのは容易ではない。

すぐに思いつくのは「小柄なポイントガード3人による3段タワーダンク」だが、運動会の組み体操が批判にさらされていることを考えると、ちょっとやりにくい(というか難しすぎますね)。

とりあえず、「たかいたかいアリウープ」と、それを食い止める「たかいたかいブロックショット」は誰か練習しておくように。きっと全国のお茶の間から、「騎馬戦かよ!」というツッコミが入ることだろう。

しかしその前に、エンタメ性向上のために改善すべき点もある。試合前の余興のうち、3ポイントコンテストは素晴らしかったが、ダンク・コンテストのほうは「もうひとつ」というのが正直なところだ。一発で決められずにやり直すケースが多すぎる。審査基準もよくわからない。

ダンクにも多様なやり方があるのはよくわかったので、それぞれの技に名前をつけて(すでにあるのかもしれないが)、フィギュアスケートみたいに採点できないものだろうか。3つぐらいの技を組み合わせて、その成功度で競うのも楽しそうだ。

田口と富樫の話ばかりになってしまったが、個人的には、大相撲の「初っ切り」みたいな芸をたくさん見せてくれた川村卓也(横浜ビー・コルセアーズ)も楽しかった。コート上の愉快な空気を作った役者のひとりだ。ただ、この「かくし芸大会」でフリースローをフツーに2本ハズしたのはいただけない。来年は桜木花道流の下手投げか、後ろ向きフリースローでお願いします。

にわかファン時評「彼方からのエアボール」
第1回:最初で最後のNBL観戦
第2回:バスケは背比べではなかった
第3回:小錦八十吉と渡邊雄太
第4回:盛りだくさんの『歴史的開幕戦』に立ち会う
第5回:吉田亜沙美がもたらした「大逆転勝利」
第6回:フラグなき逆転劇と宇都宮餃子
第7回:杉並区民の『地元クラブ』探し、今回は井の頭線ぶらり終点下車
第8回:ウインターカップとスラムダンク的自己啓発