クリス・ポール

「どんな状況であれ全力を尽くすつもりだ」

クリス・ポールのウォリアーズ移籍は失敗に終わった。西カンファレンス10位でプレーイン・トーナメント敗退という結果では、そう判断されても仕方ない。NBAキャリア19年目にして初めてベンチスタートを受け入れ、58試合出場のうち先発は18試合のみ。平均26.4分のプレータイム、9.2得点はすべてキャリアワーストの数字だ。今年に入ってすぐ左手を骨折し、7週間の戦線離脱も経験した。

ステフィン・カリーに続くポイントガードの2番手として、ピック&ロールからのプレーメークで普段のウォリアーズにはないアクセントを加えはしたが、これまでのような司令塔としての絶対的な存在感を発揮できたわけではない。

シーズン最後の会見でクリス・ポールはこの1年を「楽しい経験をさせてもらって感謝している」と振り返った。「自分が所属するとは思わなかった場所に来て、新しい出会いがたくさんあり、このチームのみんなと一緒にプレーできた。厳しいシーズンだったし、また手術する羽目にもなったけど、このメンバーで戦えたのは楽しかった」

常にライバルとしてしのぎを削ってきたウォリアーズに加わり、すでに完成されたバスケに自分のプレースタイルを合わせ、ベンチスタートも受け入れる。それは彼にとって「自分が変化に対応できることを示す挑戦」だった。しかし、カリーとポールを並べるシステムはサイズが小さすぎるデメリットを上回るほどのメリットを見いだせなかった。

彼の契約はあと1年残っているが保証されてはいない。ウォリアーズはトレードを模索した上で、それが上手くいかなければ彼のサラリー3080万ドル(約46億円)を削減するため契約を破棄するだろう。ウォリアーズにとってポールの獲得は極めて合理的な選択だった。大型契約を結んだばかりのジョーダン・プールを手放すという最優先課題をクリアし、ポールはその実力や実績を評価しつつ、簡単に契約解除できるのもメリットだった。

「何にしても、僕はオープンだよ」。ポールは去就についてこの一言以外は話そうとしなかった。「今の僕が考えているのは、家に帰って家族と一緒に過ごすことだ。僕は4歳からバスケをやっているけど、それ以上に喜びを感じる唯一のものが家族なんだ。プレーオフに出られないのは残念だけど、いつもより少し長い休みになるから家族と旅行に行ったり、子供たちの試合を見に行ったりできる」

息子のクリスJr.は15歳で、一時期はサッカーにハマっていたが今はバスケに熱中し、AAUで注目されるプレーヤーとなっている。ポールはウォリアーズの試合後に息子のプレーをスマホでチェックしながら、「息子の試合を見に行けないのが一番つらい」と馴染みの記者に愚痴をこぼすそうだ。娘のカムリンは11歳。今はバレーボールをやっている。

彼の自宅はロサンゼルスにあり、クリッパーズを離れることになった後、いくつかの街に家族を連れていったが、毎年のように引っ越しをするのは子供にとって良くないと考え、ここ数年は単身赴任だ。それでも機会があるたびに息子と娘を試合会場に呼び寄せ、手をケガした時はロスの自宅での静養を選択している。「シーズン中に僕が家族と会うのを何度も許可してくれたのは本当にありがたかった」と彼はウォリアーズの理解に繰り返し感謝を語った。

プレーオフ連続出場が14シーズンで途切れた今、彼は家族のもとに帰る。オフシーズンが始まる7月までは穏やかで静かな日々が続くだろうが、かつての盟友ブレイク・グリフィンが引退した今も、彼にプレーをやめるという選択肢はない。「今シーズンの結果は物足りないものになった。しばらく休むけど、夏に仕事を再開するのが待ち遠しいよ。どんな状況であれ全力を尽くすつもりだ」