下山瑛司

指揮官の不安が的中「一人相撲になってしまうんじゃないか」

「ゾーンプレスが来ることは予測をしていたし、朝も体育館を借りて練習してきました。彼らがああいうミスをしてしまったところは残念です」

ウインターカップ男子、3回戦屈指の注目カードとなった中部大学第一(愛知)vs福岡大学附属大濠(福岡)の一戦は、最終クォーター序盤の約2分間で福大大濠のオールコートプレスを突破できず、ロースコアの接戦では致命的な0-10のランを浴びたことで、中部第一が57-65でが敗れた。

冒頭の言葉は、試合後に常田健コーチから出た言葉だ。不測の事態ではなかったからこそ、厳しい言葉を選手に向けた。インターハイを制したことで、選手の能力が高いことは証明されていた。だからこそ、常田コーチは『個の力』に頼りがちになることを懸念していたが、その不安が現実となった。

「全体的に個の力がそれなりについてきたけど、1対5になるケースが非常に多くなってきていました。大濠さんもそうですし洛南さんもそうですけど、チームとして戦ってくるチームに対して個で物事を打開しようとすると難しい。一人相撲になってしまう不安はありました」

先発ガードの下山瑛司は抜群のスピードを有するが、プレスを一人で打開することはできず、失点に繋がるターンオーバーを連発してしまった。「プレッシャーもかかっていたんですけど、自分たちが受け身になってしまい、そこで慌ててミスが連続してしまった。自分もだいぶテンパっていました」

下山瑛司

「やってきたことを出し切れなかった」

連続でターンオーバーから失点した中部第一はタイムアウトを要求して立て直しを試みたが、それでも改善されず、すぐに2度目のタイムアウトを取った。常田コーチは言う。「しっかり者の3年生を出しましたが、前半に一回も使うチャンスがなかったのに、あの苦しい局面で使ってしまった。彼ではなく使った僕が悪いですが、それよりもスタメンで出ていた下山たちがしっかりしなかったことに尽きるかなと。彼自身がもっと周りを見てバスケットができていたら良かった気はします」

期待と信頼があるからこそ、常田コーチは下山に対して厳しい言葉を投げた。下山も「やってきたことを出し切れなかった」と後悔を語る。「チームスポーツなのに、上手くいかない時に自分一人になってしまう。一人で何とかしようとすることで声も出ないし、ミスも続くという悪循環がこれまでも何回かありましたが、それが今回出てしまいました」

下山は自分を責め続ける。「最後までコートに立てなかったし、勝って3年生に恩返ししようと思っていたのにそれが叶わなくて悔しいです。チームを勝たせ切れなかったので3年生には申し訳ない気持ちしかないです」

下山とのホットラインからチームトップの19得点を挙げた田中流嘉洲は「全部が彼のせいにはならない。僕たちも彼を手伝えなかったので、こっちも謝りたい」と擁護し、下山に熱い思いを託した。「2冠を取ることが難しいことをこの1年で学びました。彼らには力があるので、努力して2冠を取ってほしいです」

2人揃っての挑戦はこれで終わりとなるが下山の挑戦は続く。「ウインターカップは1、2回戦敗退が多いので、挑戦者という気持ちを忘れないで練習します。来年は違う自分になってここに戻ってきます」。精神的に強くなって、この舞台に帰ってくる下山の姿に期待したい。