「僕にできることは練習して、試合に出て、勝つこと」
ディアンドレ・エイトンはサンズからマックス額での契約延長をオファーされることなく、NBA4年目のシーズンを迎えた。2018年のNBAドラフト組では、3位指名のルカ・ドンチッチ、5位のトレイ・ヤング、11位のシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、14位のマイケル・ポーターJr.がマックス契約での延長を決めている。一方で、全体1位指名のエイトンは、2年目の『バブル』のシーズンにチームが飛躍し、3年目の昨シーズンにはNBAファイナル進出に主力として貢献したにもかかわらず、マックス契約を勝ち取ることができなかった。
開幕前の時点でエイトンは「失望している。優勝まであと2勝だった。そこは評価してほしいと思っている。僕の同期はそれぞれのチームでリスペクトされている。僕も同じようにリスペクトされたい」と、偽らざる心境を語っている。
メンタル的に不安定なままシーズンを迎えれば、これまでのようなパフォーマンスは見せられないかもしれないとの懸念はあった。しかし、24試合を終えた時点でエイトンはチームは得点(16.3)でもリバウンド(8.1)でも昨シーズンを上回り、20勝4敗でウォリアーズと並びリーグトップを走るサンズに欠かせない戦力であり続けている。
『THE UNDEFEATED』の取材に応じたエイトンは「あまり考えすぎないタイプなんだ」と、契約に左右されないパフォーマンスの理由を語る。「ただ謙虚であり続け、バスケに集中したい。僕は島国(バハマ)の出身だから、何かを手に入れたいと思えば、ただ自分のやるべきことを一生懸命にやるのさ」
「契約について交渉することもできたかもしれないけど、すぐに切り替えた。『はい終わり、仕事をするぞ』ってね。僕にできることは練習して、試合に出て、勝つこと。結局のところ、すべては勝てるかどうかだ。このリーグでは、何かを手に入れたければ勝たなければいけない。チームの勝利に繋がるプレーが必要になる。僕はそれが分かっているから、すべての雑音をシャットアウトして自分の仕事に集中したんだ」
エイトンを絡めたサンズのコンビネーションはNBAでも屈指の破壊力を誇る。スクリーンをかけ、ダイブし、ポールやデビン・ブッカーのアシストを受けて得点を決めていく。阿吽の呼吸から生み出されるアリウープは分かっていても止められないもので、相手ディフェンスがそこに意識を向ければ、ポールやブッカーへのプレッシャーは減り、サンズのオフェンスは手が付けられなくなる。ただ、ドンチッチやトレイがオフェンスの全権を握るエースとして評価されるのとは対照的に、エイトンの泥臭い仕事はマックス契約には値しないと見られている。必要な戦力だし好感も持てるが、大金を払うに相応しいスターはあくまでポールやブッカー、というわけだ。
それを理解していながら、エイトンは自分がスターになろうとはしない。それと同時に、欲がないわけではない。「オールスターと最優秀守備選手が欲しい。オールディフェンシブ・ファーストチームに選出されるのが僕の目標だ」とエイトンは宣言する。
昨シーズンのオールディフェンシブ・ファーストチームに選ばれたセンターはルディ・ゴベア(ジャズ)で、セカンドチームはジョエル・エンビード(セブンティシクサーズ)。他に票を集めたのはクリント・カペラ(ホークス)で、エイトンには全く票が入らなかった。彼らを追い落とすのは至難の業にも思えるが、エイトンは自分のやり方で目標を達成するつもりだ。
「僕は謙虚でありたいし、仲間をリスペクトしたい。僕は彼らのようにはなれないからリスペクトする。そして僕は僕で、リーグ最高の2ウェイプレーヤーになりたいと思う。オフェンスでもディフェンスでも、コートにいるだけで試合に影響を与える存在でいたい。ドリブルで相手の股間を抜くようなプレーはブック(ブッカー)やCP(ポール)に任せるよ。シュートチャンスを作り出し、ダイブして、シュートをブロックして、ペイントを制して、声を出す。それが僕のバスケだ」