「このチームには僕をリスペクトしてくれる若い選手たちがいる」
ニックスのトム・シボドーは、今夏に加入したケンバ・ウォーカーを先発から外し、それだけでなくローテーションからも外した。チームが波に乗れない中で、ケンバよりもサイズがあってディフェンスで計算できるアレック・バークスをポイントガードに据えることで、攻守を安定させるのが狙いだ。
シボドーは「ケンバのこれまでの実績や人間性を尊敬しているが、チームのために最善と思うことをやらなければいけない」と、難しい決断だったことを率直に明かしている。しかし、ケンバを外した後もチームは1勝を挙げたのみで3連敗と、大ナタを振るった効果は出ていない。チームにとっては非常に厳しい状況だが、ケンバにとっても同じだ。
それでも彼は月曜の練習後に取材に応じ、今の心境を語った。「僕はバスケットボールをして、高いレベルで競争するのが好きだ。だからこそ、今の状況はキツい。これまでのキャリアで、どのレベルにおいてもこんな経験はしてこなかった。でも、ヘッドコーチの決断を尊重する。簡単ではなかっただろうけど、彼がそう決めたんだから、僕としては受け入れる以外にないよ」
「僕はいつも自分よりチームを優先してきた。これでチームが良くなるなら大丈夫。僕はチームメートのためにここにいるし、どんな形であれ彼らをサポートしていくつもりだ」
プレータイムを失っても、そう語ることのできる彼はプロフェッショナルの鑑だ。NBAキャリア11年目で、オールスターに4度選ばれている。そのプライドを脇に置いて、チームを最優先に考えている。ただ、自分を殺して卑屈になるわけではない。移籍の可能性を問われた彼は「物事がどう進んでいくか次第だね」と答えた。
ケンバを外しても結果が出ていない以上、彼が先発に戻る、あるいはベンチから出る役割を与えられる可能性はある。シボドーもそれを否定してはいない。ただ、ケンバは「どうなるかは全く分からない」と言う。
「逆境は人生のどこかで誰にでも訪れるもの。大事なのは、それをどう乗り越えるかだ。コンディションは問題ない。何があろうと自分から投げ出すことはないよ」
「この先の状況次第では怒りを覚えるかもしれないし、不安になるかもしれない。でも、このチームには僕をリスペクトしてくれる若い選手たちがいる。彼らは自分が同じ状況になるかもしれないから、僕がこの状況にどう対応するのか気にしているだろう。そういう意味では、僕はお手本になる。僕はチームメートと一緒にいるのが好きなんだ。できる限りは彼らの力になりたい。それが自分の使命だと思っているよ」
この3連敗でチームは勝率5割を切る苦しい状況だが、ケンバの姿勢は大いに称えられるべきだ。願わくば、これが良い休養となって膝の問題から解放されたケンバがニックスを低迷脱出へと導く姿が見たいものだ。