「合宿でアピールして、できることを一生懸命やっていきたい」
野本建吾はこれまで代表に縁がなかったわけではない。2016年、リオ五輪出場権を逃した後に新体制がスタートした段階での重点強化選手68名に名を連ねており、その直前には渡邊雄太を擁するジョージ・ワシントン大との3連戦にも参加している。2017年夏には若手主体のチームで台湾でのジョーンズカップでプレーした。
国際大会での経験はステップアップのきっかけになるはずだった。ジョーンズカップからの帰国後、思い切りの良いアタックがアジアで通用したことで「自分の2メートルのサイズを生かすことをあらためて意識しました」と手応えをつかんでいた。層の厚い川崎ブレイブサンダースで結果を残すには至らず、その翌年に退団。それでも3シーズンを過ごした秋田ノーザンハピネッツで、そして今シーズンからプレーする群馬クレインサンダーズで、彼は着実にその実力を伸ばしてきた。
脚光を浴びるブレイクの瞬間があったわけではない。それでも恵まれた体格にバネのある身体能力という素質をベースに、経験を積む中で判断力を伸ばし、自分の長所を生かせるようになった。昨日行われた会見で野本は「頑張り続けてきて良かったと思える時間」と、代表合宿に身を置く喜びを素直に語っている。
「選んでいただいてうれしかったです。選ばれるだけでなく合宿でアピールして、できることを一生懸命やっていきたい。この5年間、今までのメンバーが日本代表の注目度を上げてくれた。そういうところで自分を出して、日本代表に貢献したい」
「チームルールがある中でアジャストできるかにチャレンジしたい」
ここからはトム・ホーバスの求めるバスケをいかに吸収して、実践できるかが問われる。代表経験のある選手でも少なからず苦労しており、「頭を使うバスケ、状況判断が問われるバスケなので、一日でも早くアジャストしていけるかが自分の課題。状況判断やプレー選択の質を、チームルールがある中でアジャストできるかにチャレンジしたい」と野本も言う。
決して器用な選手ではない。上手くやろうと考えすぎるとプレーが縮こまり、せっかくの素質を発揮できないことにもなりかねない。それでも29歳になった今では、前回の代表活動の時よりずっと成熟したプレーヤーになっている。
「自分らしくアグレッシブにプレーして、ディフェンスでハッスルして存在感を出していきたい。今まで頑張ってきた5年間でどれだけ成長できたかを示せるチャンスなので、成長した姿を見せられるよう頑張りたいです。Bリーグの中でいろんな経験値だったり、状況判断だったり成長できていると思います」
野本にとって今回の代表招集は、キャリアにおける大きなチャンス。常にポジティブにバスケに取り組み続け、このチャンスへとたどり着いた。「今までレベルの高いBリーグの外国籍選手たちとずっと対戦してきたので、その経験を生かして自分の長所を出していきたい」。そう語る彼が見据えるのは、12人のロスター入りを勝ち取り、中国を相手に自分の力を試すことだ。