指揮官「B1の横浜さん、三遠さんに勝てたことは自信に繋がります」
天皇杯の3次ラウンドでB2の香川ファイブアローズは横浜ビー・コルセアーズ、三遠ネオフェニックスとB1勢を相次いで撃破。2試合ともに90点オーバーと抜群のオフェンス力を見せた。11月2日に行われたアルバルク東京戦では75-109と完敗し、快進撃は止まってしまったが、この3日間の戦いぶりは称賛に値するものだった。
香川は高松ファイブアローズとして2006-07シーズンにbjリーグへと新規参入した。その当初はリーグ上位の成績を残したが、その後はメインスポンサーの撤退などによる深刻な財政難に伴い成績も低迷。Bリーグ誕生後もB2でリーグ下位の成績が続いていたが、2019-20シーズン途中に元ニュージーランド代表の指揮官ポール・へナレがヘッドコーチに就任してから流れが変わった。へナレは今オフに島根スサノオマジックへと移ったが、アシスタントを務めていた石川裕一が新指揮官に就任。メンバーもテレンス・ウッドベリー、リース・ヴァーグ、兒玉貴通、谷口光貴、上良潤起、筑波拓朗など多くのメンバーが残留する継続路線が功を奏し、ここまでリーグ戦では開幕6勝2敗と好スタートを切っている。この勢いが偶然ではないことを、今回の天皇杯でしっかり証明した。
横浜戦では第1クォーターに16点のリードを許したところから盛り返しての逆転勝利。三遠戦では逆に前半で14点のリードを奪い、そのまま危なげなく勝ち切った。また、横浜戦はエースのウッドベリーが43得点と大爆発したが、三遠戦でのウッドベリーは3得点に留まったものの、チーム全体で大量得点を挙げた。
しかし、A東京には地力の差を見せつけられた。鋭いドライブ、テンポの良いパスでオフェンスを牽引した司令塔の兒玉はこう振り返る。「特に今日はオフェンスで遂行力の違いをかなり感じました。シュートの精度に、やるべきオフェンスをチーム全員がしっかり理解して高いレベルでこなしていくすごさは、アルバルクさんが頭抜けていたと感じています」
それでも横浜と三遠との2試合では、リーグ戦と同じくプレータイムをシェアするいつも通りの真っ向勝負で勝った。「課題はいっぱいありすぎて、これですと言いづらいです」と語る石川ヘッドコーチもそこには大きな手応えを得ている。「B1の横浜さん、三遠さんに勝てたことは自信に繋がります。多くの収穫がありました」
「試合も楽しんで入ることができて、自分たちで作り上げた良い3日間でした」
チームとしてだけでなく、選手個人としても得るものが多かった。兒玉は語る。「全部がダメだったわけではないと思っています。ディフェンスは良かった部分もありました。B1の当たりやレフェリーの笛は、この3日間で違いを感じました。シュートセレクションの部分はもうちょっと考えながら、思い切り良く打つべきとこは打っていかないといけない。そこで感じた差は、これからのプレーに還元していきたいです」
現在29歳の兒玉は、大東文化大4年時に中心選手としてチームをインカレ3位に導き、大学トップの関東大学リーグで活躍を続けてきた。大学卒業後はNBL、B3時代の大塚商会、B2のファイティングイーグルス名古屋を経て、2019-20シーズンから香川でプレーしているが、今回の天皇杯で大学時代と同じくトップカテゴリーでもやっていけると感じさせた。
大学時代、何度もやりあってきたライバルたちと久しぶりに対峙できたことへの充実感を兒玉はこう語る。「めちゃくちゃ親しいわけではないですが、試合をずっと見てきたり、戦ってきた選手たち、久々に会った人たちとやれました。田中(大貴)さんなどとマッチアップすることができて素直にうれしかったです。試合も楽しんで入ることができて、自分たちで作り上げた良い3日間でした」
兒玉にとって今回の経験は区切りではなく、始まりにすぎないはずだ。これから香川をB1昇格へと導くことができれば、当時のライバルたちと日常的にやり合うことになる。
豊富な資金力を背景にした大型補強に打って出るような話題性はないが、コツコツと階段を上がっている兒玉、そして香川がどこまでステップアップしていけるのか。これからの香川の戦いぶりに注目したいと思わせる3日間の戦いだった。
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