オルドリッジの復帰に加えミルサップにミルズ、経験値重視の補強
優勝こそ逃したものの、多くのケガ人を抱えながらバックスと激戦を繰り広げた昨シーズンは、ネッツにとって優勝への自信を深めるものになりました。自分たちの戦い方、選手の組み合わせが正しいと感じたからこそ、今オフは継続路線でのチーム作りをしてきました。カイリー・アービングの問題に揺れてはいるものの、そこにフォーカスすることなく淡々と開幕への準備ができているのは、チームとして成熟していることと、そして『いなくても勝てる』という自信にも見えます。
ロスターは大きく入れ替わりましたが、現役復帰を決断したラマーカス・オルドリッジに加え、ポール・ミルサップやパティ・ミルズなど、ベテランを多く補強しました。ロスターの半分以上が30代になっており、サマーリーグから一貫して高い得点力を示しているルーキーのキャム・トーマスをドラフトで指名した以外は経験値を重視した構成です。
ディアンドレ・ベンブリーやジェボン・カーターを加えてはいるものの、昨シーズン22位だったディフェンスの改善ではなく、リーグトップのオフェンス力にさらに磨きを掛ける補強を行いました。ジョー・ハリスやミルズの3ポイントシュート、ブルース・ブラウンやミルサップの万能性を生かし、コートを広く使ったオフェンスを展開してきます。
昨シーズン、指揮官のスティーブ・ナッシュは個人能力の高いスーパースターにスペースを与えるオフェンスを志向し、個人技の強みを生かすことに特化しました。スーパースターが何人いてもボールは1つ。オフェンスが渋滞するケースも予想されましたが、モチベーション管理も含めて、ヘッドコーチ1年目としては十分な結果を残したと言えます。
その一方で試合中の采配については疑問が残ることが多かったのも事実です。相手の出方に対応しているとは言い難い交代策を、強引なまでのオフェンス力で成立させていました。ただ、ベンチに万能なウイングのジェフ・グリーンがいたことは大きく、ガードからセンターまで、あらゆるパターンでグリーンと交代させて問題を解決していました。そのグリーンはナゲッツへと去り、今回のベンチメンバーはそれぞれのポジションと役割がはっきりしているため、この戦力をナッシュが適切に起用する必要があります。
他に不安要素があるとすれば、ネッツ以外のチームがディフェンス力を重視してくる可能性が挙げられます。ネッツの火力に抗えない以上はディフェンスを重視するのは当然であり、またタフスケジュールだった昨シーズンよりもフィジカルな対応がしやすくなります。ルール改正もあってディフェンスの在り方が変化するシーズンだけに、自分たちのやり方に固執しすぎないことも大切です。
昨シーズンはトレードの影響で選手層が薄い問題があったものの、しっかりと準備して臨める今シーズンは、アービングの件も含めて言い訳はできません。大型補強から3年目を迎え、『優勝以外は失敗』と位置づけられるシーズンが始まります。