ティンバーウルブズ

スター選手を1人欠いてもチームでカバーする戦術とメンタルの確立が急務

昨シーズンのティンバーウルブズは、ドラフト1位のアンソニー・エドワーズが驚くべき才能を見せて大きな期待を抱かせる一方で、またも勝利は伴わずにシーズン中のヘッドコーチ交代に踏み切ることになりました。オフになるとパトリック・ベバリーやトーリアン・プリンスといった経験あるディフェンダーを手に入れ、計画的な補強を進めていると思った矢先に、編成責任者であった球団社長が解雇されるなど、相変わらず方針の定まらないフロントに振り回され、開幕時点で期待よりも失望の大きい状況にあります。

ベン・シモンズ獲得の噂もありますが、スター選手をかき集めるだけで勝てないのは明確です。どんなチームを作っていくのか、その方針が固まっているように見えないのが最大の懸念です。幸いにしてヘッド・コーチのクリス・フィンチは課題を明確にし、一つひとつクリアさせていく育成路線を進んでいますが、それが『勝てるチーム』に到達するのがいつになるのかは想像もつきません。抱えているタレントの質と量からすれば、ある程度の結果は出せるという期待も持てるし、フロントの方針がまたもブレるようだと延々と再建が続く気もします。

タレントはすでに揃っています。広い視野とタイミングの読めないパスを持つディアンジェロ・ラッセルがゲームを組み立て、爆発的な推進力を誇るエドワーズの突破と、高いシュート力でどこからでも得点が取れるカール・アンソニー・タウンズのトリオは、ポジションバランスも良く、これ以上ない武器になっています。シューターのマリーク・ビーズリーや、伸び盛りのウイングのジェイデン・マクダニエルズもいて、ハマったときは魅力に溢れるオフェンスを展開します。

問題はケガが多く主力が揃わないことですが、『主力が全員揃わないと機能しない』というまた別の問題も秘めています。長いシーズンにケガは付きものだけに、スター選手を1人欠いてもチームでカバーしなければいけません。ウルブズの場合は、これだけの選手層があるにもかかわらず、誰かが抜けると一気にチームが停滞する悪癖を抱えています。

ティンバーウルブズ

特にタウンズの影響力はすさまじいもので、彼がコートにいる間のウルブズはリーグトップクラスのオフェンス力を誇りますが、いなくなると最低レベルまで落ちてしまいます。ウルブズがまずやるべきことは『個人技に依存しないチーム戦術の確立』であり、特にタウンズの仕事を分散して他の選手が受け持つようにしなければいけません。

昨シーズンの3ポイントシュート成功率はリーグ25位の34.9%と低いものの、アテンプトの多いビーズリー、ラッセル、タウンズの3人は39%近い成功率を誇っており、主力以外が確率を落としすぎています。43.5リバウンドもリーグ20位と低迷していますが、タウンズは1人で10.6リバウンドを奪っており、ウイングのリバウンド力不足が目立ちます。このように主力が高いスタッツを残していても、チーム全体が低くなる傾向が強くなっており、ロールプレイヤーのレベルアップと活躍できる環境作りが欠かせません。

主力の名前だけならプレーオフは現実的な目標です。しかし、ウルブズが抱えている問題はケガであり、それをカバーするチーム全体のレベルアップです。西カンファレンスをかき回す存在になるポテンシャルは秘めているものの、これはメンタリティの問題であるため、どんな結果が出てくるのか読めません。何か大きな変化が求められるシーズンとなります。