森川「逆境をどう打開していくかが重要」
横浜ビー・コルセアーズは川崎ブレイブサンダースとの開幕節に連敗した。第1戦が64-82、第2戦が73-90と、大差をつけられての敗戦となったが、2試合とも前半を終えた時点では4点のビハインドと、最終スコアほどの力の差は感じられなかった。
優勝候補にも挙がる川崎を相手に前半を互角の戦いに持ち込めたことは収穫と言ってもいいだろう。青木勇人ヘッドコーチも「特にディフェンスにおいてはステップアップしてくれた選手も出てきましたし、ハードに戦えました。戦える手応えは感じました」と、この2試合を振り返っている。
それでも、大事な場面で我慢し切れず、後半に失速してしまう点は改善しなければならない。青木ヘッドコーチも「もう一度カムバックできる強さを手に入れないといけない」と強調した。
第2戦では森川正明がキャリアハイを更新する23得点を挙げて、一人気を吐いた。「ブロックされてもいいという気持ちでどんどんペイントにアタックし、その結果ファウルをもらえるプレーが多かったです。ドライブ、アウトサイドとバランス良く得点できました」と語ったように。ゲームハイの10本のフリースローを獲得して、苦しい時間も繋いだ。
森川は青木ヘッドコーチが求める『カムバックできる強さ』を有しているが、それをチーム全体に波及できなかったことを悔やんだ。「苦しい時間帯に誰がチームを盛り立てるかというところで、そういう雰囲気を作れなかったと自分も責任を感じています。出ている時間はハードにプレーし、出てくる選手がこういう風にプレーしなきゃと思わせるようなプレーを見せたいです」
そして森川も、青木ヘッドコーチと同様の見解を示し、現在のチームの課題を挙げた。「一つのミスでズルズルいってしまうのがチームの現状かなと思います。チームとして粘れるか、逆境をどう打開していくかが重要になります」
「ポジティブな激昂でした」
プロスポーツである以上、最も求められるのは結果だ。しかし、勝ち試合よりも、負け試合のほうが得るモノは多い。2連敗は痛いが、横浜にとっては価値のある開幕節となったはずだ。それはチームとして戦うことの大切さを再認識できたからだ。
第2戦の前半ラストポゼッション、横浜はニック・ファジーカスにゴール下のイージーシュートを許した。ファジーカスをマークしていたのはパトリック・アウダだったが、マット・ジャニングのバックスクリーンに引っかかり、反応が遅れたことから生まれた失点だった。そしてアウダはジャニングをマークしていた古牧昌也に詰め寄り、そのまま青木ヘッドコーチにも自身の思いを伝えた。1ポゼッションの大切さ、コミュニケーションミスの危うさを訴えているように映った。
青木ヘッドコーチは「ポジティブな激昂でした」と、このシーンを振り返る。「ディフェンスのコミュニケーションについて話していました。バックスクリーンやフレアスクリーンは味方の声がないと引っ掛かりやすい状態になってしまう。そこに対して声が通っていなかったと。みんなにもっと声を出していこうという、ポジティブな激昂でした。その後のロッカールームでも、チームとしてディンフェスするために、どんな環境でも声が聞こえるように声を出していこうと話しました。見た目は僕が怒られている感じですが、内容はとてもポジティブなモノだったし、そういう言動、行動がチームを良くしていくと感じました」
ミスを指摘する行為は相手の反感を買う可能性もあり、特に調和を好む日本人は躊躇しがちだ。それでも、チームを本気で強くしたいのであれば、時には厳しい言葉も必要だ。アウダの激昂にはそうした思いが表れていた。
だからこそ青木ヘッドコーチは本当の意味でチームに手応えを得たのだ。「ロッカールームではみんな同じことを思っていて、それぞれが自分の責任だと思っています。自分たちがやれることを信じて、成長していこうという話し合いが出ていたので、必ずこのチームは強くなると信じています」
森川も「誰かのせいではなく、チーム全体の責任という空気感がある」とチームの雰囲気を表現した。上位を狙うには課題を修正し、個人のステップアップも必要だ。それでも、アウダの行動は勝ちたい気持ちをチーム全員で共有するきっかけとなったはず。横浜の未来は明るい。