カール・アンソニー・タウンズ

カール・アンソニー・タウンズとディアンジェロ・ラッセルとの『ビッグ3』誕生?

トレーニングキャンプ開始の数日前に、ティンバーウルブズのオーナーたちはガーソン・ロサス球団社長の解雇を決めた。チーム編成で様々なトラブルがあったことに加え、球団内での不倫が明るみに出たための更迭と報じられている。今オフのウルブズはパトリック・ベバリーの獲得後に大きな動きがなかったが、予想外の混乱とともに2021-22シーズンの始動を迎えた。

NBA参戦からの32シーズンでプレーオフに進出したのは9回だけ。そのうち1997年から8年連続のプレーオフ進出は『ケビン・ガーネットの時代』で、以降は2017-18シーズンの1回のみ。今のチームにはカール・アンソニー・タウンズとディアンジェロ・ラッセルというコアがいるが、ラッセルは加入から1シーズン半で54試合にしか出場しておらず、タウンズと一緒に出たのはさらに少ない24試合。昨年のドラフト全体1位選手、アンソニー・エドワーズは上々のルーキーイヤーを送った。さらにベバリーも加わるが、戦力としては心もとないと言わざるを得ない。

このロスターに大きな変化をもたらす可能性となっているのが、ベン・シモンズの獲得だ。ロサスはロケッツ時代の上司である、現セブンティシクサーズ球団社長のダリル・モーリーと、ラッセルとシモンズのトレードについて協議していたと噂される。

真のオーガナイザーであるラッセルは、ジョエル・エンビードとトバイアス・ハリスにとっては最高の相棒となる。一方でシモンズはオフェンス偏重のウルブズのバランスを一人で修正できる。さらにタウンズはエンビードよりもプレーエリアが広く、シモンズのペイントアタックをサポートできる。シモンズの願う『ファーストオプション』はウルブズでなら実現可能だ。

しかし、トレードはまとまらなかった。結果として、タウンズをトレード要員にはしない、というロサスの判断は正しかった。そして今、トレーニングキャンプが始まってもシモンズはチームに合流しておらず、シクサーズの状況はさらに悪くなっている。

ロサスの失脚後、ウルブズの編成は副社長のサチン・グプタに委ねられた。彼はロケッツからGMとして招かれ、オファーを受けようとしたが、「ウルブズの内部事情を漏らす」という理由でロサスにストップをかけられ、その後はウルブズに籍を置いたまま、実質的には何の仕事も与えられていなかった。現場に復帰したグプタは今、暫定ではあるがウルブズの編成を取り仕切る立場にある。

ウルブズは買収交渉がまとまり、MLBのレジェンドである『A-Rod』ことアレックス・ロドリゲスを含むオーナーグループが正式には2023年から球団を保有する。トレーニングキャンプ開始に合わせて会見を行った彼らは、現場のことはグプタに一任するとコメントしている。ロケッツGMのオファーが流れてしまった今、グプタがロサスの正式な後任となるには目に見える結果が必要だ。

グプタもロサスと同様に、ロケッツ時代のモーリーと働いていた経験があるため、八方塞がりに近い状況にあるモーリーとしては、数少ない頼みの綱だ。今、シモンズの引き取り手はほとんどいない。優勝候補に挙げられるチームはどこも彼の素行の悪さを嫌がり(当然、プレーオフで活躍できないことも評価を下げる)、リスクを取ろうとはしない。優勝候補のチームに限らず、ロスターがほぼ固まった今、ゼロからの再構築には踏み切りたくないはずだ。

だからこそ、ウルブズにとっては大きなチャンスだ。ラッセル、タウンズ、エドワーズを残したままシモンズを獲得できれば、長い長い低迷からの脱出に大きく近づく。マリーク・ビーズリーとジェイデン・マクダニエルズに、トーリアン・プリンスかベバリーのどちらか。これでサラリーのバランスは取れる。さらに交渉で複数の1巡目指名権をシクサーズに譲渡する。2週間前までのモーリーなら即座に断っただろうが、今の彼に選択肢はほとんどない。

グプタ個人の立場を抜きにしても、ウルブズにはすぐに結果を残す必要がある。タウンズの契約は2024年までで、今シーズンもプレーイン・トーナメントにも進めないようであれば、いよいよ流出の危機が本格化する。だからこそ、彼が『最高のパートナー』と公言するラッセルは手放せないし、ディフェンスの大幅なステップアップを確実に成し遂げるであろうシモンズの加入は(彼の素行に問題があるとしても)歓迎なのだ。

このトレードが実現した場合、シクサーズの戦力は大幅にダウンするだろう。それでも事態がここまで複雑になった以上、シモンズ問題を抱えたまま開幕を迎えるよりはマシだ。モーリーとグプタは今、どんな会話をしているのだろうか。