コービー・ブライアント

写真=Getty Images

良い部分よりも悪い部分を分析するコービー

2017-18シーズンのプレーオフ期間中、『ESPN』がコービー・ブライアントと制作したシリーズプログラム『Detail』は、なにかと話題になった番組だった。

同番組は、コービーが特定のチームの選手を一人ピックアップし、彼がその選手の視点に立ってプレーの細部を分析するという内容で、取り上げられた選手のチームがシリーズで敗退する、という結果が続いた。

たとえば、キャバリアーズと東カンファレンス・ファイナルで対戦したセルティックスのジェイレン・ブラウンを分析した回では、クイックネスと身体能力の高い同選手が、トランジション時にすべきことを的確に分析した。ぺネトレイトを狙ってケビン・ラブにボールを奪われたシーンでは、背後からサポートに来ているアル・ホーフォードがトリスタン・トンプソンにカバーされ、左ウィング付近にポジションを取ったジェイソン・テイタムにはJR・スミスがつき、背後からはレブロン・ジェームズがチェイスダウン・ブロックを狙えるポジションにいたため、ドライブで相手のディフェンスを一手に引き付ける『餌』をまくべきだったと指摘した。それと同時に、右コーナーに向かって走っていたテリー・ロジアーのプレーについても触れ、確実にコーナーのシュートポジションについていれば、キックアウトを出せたと主張。また、同様にトランジションからブラウンがレイアップを外した場面でも映像を止め、ブラウンがアタックするのと同じタイミングで、セルティックスのシューターたちもそれぞれの配置についていないといけない、と指摘した。

コービーはレブロンについても言及し、相手チームがトランジションを仕掛ける場合、常にマークにつくスピードを抑え、ボールハンドラーを敢えて推進させ、背後から相手のプレーを防ぐ癖があると見抜いた。これはほんの一例で、彼は各エピソードで同様の分析を繰り返した。

この番組の制作舞台裏について、コービーはポッドキャスト番組『HoopsHype podcast withAlex Kennedy』に出演した際にコメントし、ほぼぶっつけ本番状態で選手のプレーを分析していたことを明かしている。

コービーは「スタッフと試合を見て、プレーの編集動画を作るんだ。その映像が完成したら、自分が一人でスタジオに入って、ノートPCで映像を見ながら目の前のマイクに向かって喋る方法で収録した。視聴者が番組で見る映像は、僕がスタジオで再生ボタンを押し、一発撮りで分析しているもので、話すことは事前に決めていなかった。編集された動画をスタジオで初めて見て、その場で喋っているシーンを視聴者は見ていた。現役時代にプレーを分析していたようにね」と語った。

またコービーは、同番組で選手がプレーを決められなかったシーンを選択した理由についても言及。そこにも『コービー流』の考え方があった。

「その時に進行しているプレーオフ・シリーズ、もしくは今後の試合で壁にぶつかるだろうと思う選手を選んだ。良いプレーを分析するような番組にはしたくなかった。たとえば、45得点を記録した選手の良いところばかりを指摘するような内容にはしたくなかったんだ。僕はそういう視点で試合映像を分析しない。自分が60得点を記録しても、良かった部分は見ない。些細な部分であってもミスした場面を探して、セルティックスのディフェンスと対峙する際に問題になり得る場面を見つけようとしていた。どうやったら、その問題を解決できるかを考えていた。それが『Detail』シリーズの趣旨だった」

現役時代、可能な限り最高の選手に成長するため、必死で努力したコービーらしいエピソードだ。もし同シリーズの続編が制作されることになれば、再び『最強分析官』コービーが、各チームの問題点を丸裸にするに違いない。