安藤周人

安藤周人は特別指定を含め、計5シーズンを名古屋ダイヤモンドドルフィンズで過ごした。3シーズン目には60試合すべてに先発し、平均14.6得点、3ポイントシュート成功率40.7%を記録するなどエース格へと成長し、日本代表候補の常連となった。そして今オフ、安藤はさらなる成長を求めて、アルバルク東京へ移籍した。プレータイムが確約されていないA東京での挑戦を迎える安藤にその心境を聞いた。

「成長が止まっていたと感じました」

──代表活動があり、移籍に伴い引っ越しもあって忙しいオフになったかと思いますが、ここまでどのように過ごしていますか?

代表から落ちた時は本当にショックで、引っ越しが終わり次第練習に合流しようと思っていたんですけど、GMの恋塚(唯)さんから電話をもらって、しっかり休んでくれと言われました。移籍をするわけだし、気持ちのリセットも兼ねてしっかりと休ませてもらい、チーム練習が始まる4日前ぐらいからやっと動き出したという感じです。

──代表落選の話が出ましたがやはり精神的にキツかったですか? また、これまでにこれ以上の挫折を経験したことはありますか?

6月のアジアカップ予選では何をしたらいいか分からない、何を求められているのか分からないという状態で試合をやっていて、正解が見つからないままチームに迷惑をかけたなと思っていたので、イランとの国際強化試合3連戦が自分にとって最後のチャンスだと思っていました。日本に帰ってきてからの3試合は自分の持ち味のシュートに関しては迷わずに打とうと思い、自分の中でリセットできて良い結果に繋がったのでもしかしたらあるんじゃないかなと思っていたので、落ちた時は本当にすごくショックでした。(代表で)隔離されていた時は常にバスケットと向き合う感じだったので、メンタルもしんどかったです。この悔しかった思いを糧に、次のワールドカップに向けて気持ちを作り直してやっていかないといけないと思いました。

挫折というか、なんだかんだですぐに落ち込んじゃうタイプではあります。上手くいかなかったら悩みに悩んでどんどん悪い方向に行っちゃうタイプで。でもこの世界に入って徐々にですが気持ちの切り替えは早くなってきたと思います。

──タイミング的には代表活動の前に移籍が決まっていたと思いますが、アルバルク東京に移籍した理由は何でしょう? 名古屋では主力でプレータイムも確約されていたと思います。

いろんなチームからも声をかけていただきましたが、1番の理由は成長できる場所として最もふさわしいと思ったからです。この先、自分には何が必要かと考えた時に、ピック&ロールからクリエイトする力を欲していて、Bリーグの中で1番ピック&ロールを使うチームだったらアルバルクしかないと思って選ばせてもらいました。

おっしゃられた通り、名古屋にいれば出場時間も確約されていただろうし試合にも出れたかもしれないです。でもそのポジションに甘えていたというか、この2年間で自分の中で成長が止まっていたと感じました。それだと代表でもプレーできないだろうし、同じプレーばかりだと相手も止めやすいので。ドルフィンズに最初に呼んでもらって何も残せないまま、このままチームを去っていいのかとかとすごい悩みましたが、成長したい思いが強くなり、決断しました。

安藤周人

「こんなに必死になってルールを覚えるのは初めてかもしれない」

──名古屋Dは新指揮官にショーン・デニスを迎えました。ルカヘッドコーチと同様に名将と呼ばれるヘッドコーチかと思いますが、それで悩んだりはしなかったですか?

正直、ドルフィンズからもデニスコーチを呼ぶから残ってほしいと熱烈なオファーをいただきました。僕も迷ったんですけど、早い段階で決心していたので、そこはブレずに貫きました。ありがたかったんですけど、この場所にいたらやっぱり甘えちゃう自分がいるかもしれないので、新しく厳しい環境に身を置いて成長しないといけないと思いました。ただ、デニスコーチが来ることをもうちょっと早く言ってくれたらなとは思いました。(齋藤)拓実とか(狩野)祐介さんにデニスは良いヘッドコーチだと僕も聞いていたので。

──シューターのイメージが強い安藤選手ですが、A東京で求められているのはどんなプレーでしょう? クラブの紹介では『攻撃的なシューター』と書かれていますが。

ルカヘッドコーチからはクリエイトして積極的にシュートを打ってほしいと言われ、ディフェンスもフィジカルにやっているからそれをどんどんチームに還元してほしいとも言われました。昨シーズンに敵として見ていた時に(田中)大貴さんか(安藤)誓哉さんか(小島)元基さんの3人しかピック&ロールでクリエイトできないと思っていて、その中でクリエイトしてほしいと言ってもらえたのはすごくうれしかったです。僕が求めていることがお見通しだったかのようにそう言ってもらえて、気持ちも固まったかなという感じですね。新しいシューター像というか、いろいろできるシューターという意味でも、あの書き方でいいんじゃないですかね?(笑)

──先発の確約はない状況でしょうか?

ないですね。代表の時に誓哉さんからもルールを覚えるのに時間がかかるから、最初はスタメンじゃないかもと言われていました。そもそもスタメンだから良いというわけでもないですし、代表を見据えるとシックスマンとか、ベンチから出る練習としてもいいんじゃないかと思っています。

──A東京はルールがたくさんあるとよく言われますが、実際のところどうですか?

情報量が多すぎて頭も毎日疲れます。帰ってからもフォーメーションとかを動画で共有できるやつがあるんですけど、オフの日もフォーメーションルールを見直しています。正直、バスケでこんなに必死になってルールを覚えるのは初めてかもしれないです(笑)。覚えは早い方かなと思っていたんですけど、思っていた以上の量が来たので大変です。

一つひとつ細かく指導してくれる方で、常に集中していないと置いてきぼりにされるので、常に僕の横にアシスタントのスキルコーチがついて説明してくれるんですけど、一気に情報が入ってくるので最初の1、2週間は特にしんどかったです。

安藤周人

「今シーズンは自分が求めていたことができる」

──以前から、シューターではなく、オールラウンダーになりたいと言っていましたが、あらためてA東京での目標を教えてください。

まずはここ2シーズンのフィールドゴールパーセンテージがあまり良くなかったのでそこを直し、3ポイントシュートはプライドを持って40%以上に戻したいです。

2シーズン前くらいから2ポイントシュートの本数を増やしたいと思っているんです。3ポイントシュートを多く打つイメージが強いのでシューターと言われると思うんですけど、僕としては中に切り込んでアシストもしたいですし、今シーズンは自分が求めていたことができると思います。メンバーもかなり良いので、存在感を出していきたいです。

──先ほど、ロシター選手が取材にツッコみを入れてきましたが、選手が入れ替わる中でチームの雰囲気はどうですか?

当初、みんな集中しているからか囚人みたいで、練習前にもかかわらず殺伐とした空気でした。今はコミュニケーションを取って少しずつ良い感じになっているので、僕が変えていってやろうと思っています(笑)。

──そんなに重たい空気だったんですね(笑)。では最後にファンに向けてメッセージをお願いします。

自分自身もそうですけど、チームとしても今シーズンは本当に勝負の年になると思います。相手チームでしたが、昨シーズンが苦しかったというのは見ていて分かりましたし、ファンの皆さんも同じく苦しい思いをしたと思います。なんとしてでも王座奪還をして、ファンの方達と一緒に喜べるシーズンにしたいと思いますので、応援よろしくお願いします。

──ありがとうございました。ちなみに古巣対決に関して何か思うことはありますか?

どうですかね。ちょっと寂しい部分があって、やりづらいイメージはあります。今まで受けていた声援を同じ場所で受けられず、自分が決めてもシーンとなると思うので、それだったら温かいブーイングをしてほしいです。