男子アメリカ代表

スペイン代表は北京オリンピックから4大会連続でアメリカに敗北

それぞれグループリーグで1敗を喫し、2位での通過となった優勝候補のスペインとアメリカが準々決勝でぶつかりました。ワールドカップで優勝しているスペインですがオリンピックではアメリカの壁に跳ね返され続けており、個人能力をチーム力で凌駕することができておらず、相性の悪い組み合わせとなってしまいました。

フランスに敗れてからスペーシングの意識を高めたアメリカは1on1中心のオフェンスに変更し、個人の強みを全面に出してくるようになりました。国際大会でテンションの高いプレーをする中で試合序盤は簡単には差をつけられないものの、豪華メンバーを生かして試合終盤でもインテンシティが落ちず、次第に相手を飲み込んでいきます。この試合も5人がコート全体に広がり、個人の突破からリードを奪って始まります。

一方のスペインはアメリカの弱点であるインサイドを狙っていくものの、ミスマッチを作ってもフィジカルの強さで跳ね返されてしまいました。高齢化が目立つ中で個の戦いの不利を感じる非常に苦しい立ち上がりとなりましたが、エースのリッキー・ルビオが強引なファウルドローとタフな3ポイントシュートを決めていき、第1クォーターはスペインの21点中13点を一人で奪い、互角の展開に持ち込みます。

第2クォーターになるとスペインのベンチメンバー、ウィリー・エルナンゴメスが強みを発揮し始め、力強いポストプレーでねじ込んでいきました。試合開始から狙っていたアメリカの弱点を個人の強みで制し、スペインが2桁リードを奪います。特にディフェンスではウスマン・ガルバとともに強烈なブロックショットでゴール下を塞ぎ、前半だけで6ブロックを記録したスペインは、これでアウトサイドのプレッシャーディフェンスが効くようになりました。

アメリカはバム・アデバヨがパワーでお返しのプットバックを決めれば、デイミアン・リラードが華麗なダブルクラッチでブロックをかわしてアンドワン、そしてケビン・デュラントのタフな3ポイントシュートで追い上げます。守ってもドレイモンド・グリーンが高さでは負けてもボールを叩き落す上手さで対抗し、最後はザック・ラビーンのドライブダンクで同点として前半を折り返します。

デビン・ブッカー

デュラントとブッカーの3ポイントシュートでスペインを突き放す

後半になるとアメリカがデュラントとデビン・ブッカーの3ポイントシュートで突き放し始めます。運動量が保てずプレッシャーディフェンスを続けるのが難しくなったスペインは、オフェンスでもルビオ頼みになってしまい、開始6分で2桁のビハインドにされてしまいました。それでも前半のキーマンになったエルナンゴメスを投入すると、アメリカがインサイドを固めてきたためアウトサイドから決め返し、6点ビハインドで第3クォーターを終えます。

追い上げたいスペインでしたが、試合終盤になると明らかにアメリカのスピードについていけなくなりました。プレッシャーをかけることに成功しても平然と3ポイントシュートを決めてくるジェイソン・テイタムにも悩まされ、反撃の糸口がつかめません。そこでガードを4人とガルバのスピードで対抗するラインナップで勝負に出ると、苦しみながらも意地で守り切り、この試合38点のルビオが個人技で取り返し続けます。

ルビオは最後までプレーレベルが落ちず一人で対抗し続けたものの、アメリカはデュラントの29点を筆頭に5人が2桁得点と、全員がプレーレベルを落とすことなく、高いインテンシティを保ったままで徐々にリードを広げていきました。NBAプレーヤーを並べた豪華チームらしく、個人技をベースにした戦い方で戦力の厚みを十分に生かしきって、最後は95-81で準決勝進出を決めました。

これでスペインはルビオが17歳で臨んだ北京オリンピックから4大会連続でアメリカに負けることに。その間、41歳のパウ・ガソルを筆頭に中心メンバーが代わることなく、黄金時代を作り上げましたが、この試合もガソル兄弟やルディ・フェルナンデスが無得点に終わるなど、高齢化によって個人能力で劣ったのは明らかで、今回の東京オリンピックは30歳のルビオが一人で引っ張るチームになってしまいました。4大会ぶりにメダルも逃し、世代交代の必要性を強く感じさせる結末でした。