ドリュー・ホリデー

謙虚な姿勢を崩さず、値千金のスティールも「チームディフェンスの成果」

現地7月17日にフェニックスで行われたNBAファイナル第5戦は、バックスが123-119で勝利した。両チームともホームゲームをモノにして2勝2敗としていた状況、バックスとしてはどこかで敵地を攻略する必要があったが、この試合で見事それを達成し、0勝2敗から3勝2敗と形勢逆転、NBA優勝にあと1勝と迫った。

第1クォーターは完全にサンズのペース。そこからバックスが逆転に成功し、最後は接戦に持ち込まれたが、再び突き放して勝利を収めた。そんな試合の最大のハイライトは、120-119でバックスがリードしていた第4クォーター残り30秒からのプレーだ。ホリデーはこの試合で40得点を挙げていたサンズのエース、デビン・ブッカーからスティールに成功。そのまま速攻に転じて、ヤニス・アデトクンボの豪快なアリウープをアシストしている。サンズの追撃ムードを断ち切り、シリーズ全体にも影響を与えるであろうビッグプレーだ。

このシーンについて、ホリデーはまずディフェンスから振り返る。彼に言わせれば、値千金のスティールは「チームディフェンスの成果」だ。「僕らはブッカーがラストショットを狙って来ると予想し、彼のアタックを止めた。僕は彼がポンプフェイクをしたら背後からプレッシャーを掛けるつもりだったけど、彼はターンした。そこに僕がいたのさ。まさに適切なタイミングで適切なポジションを取れたと思う」

そのまま走り出したホリデーは、自分を追い越して走るアデトクンボへと迷わずパスを出した。ホリデーがスティールに成功した時点で残り15秒。サンズはファウルゲームに持ち込むしかなく、成功率を考えればフリースローが苦手なアデトクンボよりもホリデーだ。自分がファウルを受けても良い状況でパスを選択した理由を質問された彼は、「ヤニスがボールを要求してきたから」と答えた。

「彼の手が届く範囲で、できるだけ高い位置にパスを出そうとした。彼が『フリーク』と呼ばれるのには理由がある。パスを出せば決めるとしか思っていなかった」

空中でパスを受けても、身体ごとつかまれたらダンクまで行けない可能性がある。それをさせないための高いパスだった。その直前にアデトクンボはフリースローを2つ落としているが、信頼は揺らがなかった。「1本目を外したところでタイムアウトを取るサンズの作戦は見事だったね。でも、ヤニスがどれだけ集中していたかは分かっていた。彼はいつも自信を持ってプレーしているし、僕らも彼を信頼している。仮にフリースローになっても、2本決めると思っていたよ」

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もっとも、このラストプレー以外にもホリデーのプレーは試合を通じて光った。21-37と第1クォーターで先行された後、アデトクンボがベンチで休んでいる時間のオフェンスを引っ張ったのは他ならぬ彼だった。そしてディフェンスも、第3戦から主にクリス・ポールのマークを担当し、サンズをNBAファイナルまで導いたベテラン司令塔を的確なディフェンスで苦しめている。

攻守両面で活躍するホリデーだが、彼はディフェンスファーストであることを強調して、そのマインドをこう説明している。「スコアに関係なく、僕たちが気に掛けるのはディフェンスのことだ。(デビン)ブッカーはすごいスコアラーで、どうやっても止められないこともあるけど、ディフェンスへの意識が揺らぐようじゃダメだ。ディフェンスから良いリズムを作り出して、それに乗っていくのが大事。ヤニスのトランジション、クリス(ミドルトン)の3ポイントシュート、ボビー(ポーティス)の力強いプレー、すべてはディフェンスから作り出すリズムによって生まれる。オフェンスが機能していても、いつも意識はディフェンスに置くべきだ」

アデトクンボが32得点、ミドルトンが29得点、そしてホリデーが27得点。バックスの『ビッグ3』と呼ばれてもおかしくないホリデーだが、彼はあくまで謙虚な姿勢を崩さず、「自分の活躍についてはあまり気にしていない」と語る。

「結局、大事なのはチームにどれだけ貢献できたか。前の試合ではシュートを20本打って4本しか決められなかったけど、チームが勝ったから気にしなかったし、チームに良い影響を与えられたと前向きに考えていたよ。チームに貢献できて、その上で自分のシュートも決まったらボーナスみたいな感覚だね」

そういう意味では、この試合ではボーナスも手に入った。ただ、特段うれしそうな表情を見せるわけではなく、激闘を制したことがうれしくてたまらない、という笑顔で会見に応じたアデトクンボとは対照的だ。ホリデーが笑顔を見せるのは、もう1つ勝った時だろう。「2連敗を喫したところで、僕たちは下を向かなかったからね」と彼は語る。「チームとしてどう向上するかを考え、次の試合のことだけに集中した。タイトルを懸けて戦うんだから、簡単なはずはない。入れ込みすぎることなく、落ち込むことなく、ただ集中したんだ」