キャメロン・ペイン&モンテ・モリス

試合展開に大きな影響を与えるセカンドユニットの『エースの代役』

西カンファレンスのセミファイナルで対戦することになったサンズとナゲッツは、ともに強力なエースを抱えながらもチーム力で勝ち上がってきました。エースを中心としながらもエースに依存せず、ベンチから登場する『エースの代役』がファーストラウンド突破のキーマンになった点で両チームは共通しています。

クリス・ポールのケガによりトラブルが発生したサンズですが、ベンチから出てきた3人目のハンドラー役のキャメロン・ペインが特筆すべきプレーを見せ、シーズン平均を上回る12.5得点を挙げました。これはデビン・ブッカー、ディアンドレ・エイトンに次ぐチーム3位の数字です。

サンズのチーム構成は各ポジションの役割がはっきりと定義されており、ブッカーとポールは他のスターターでカバーすることができません。それをペインが時にブッカー以上に強気にドライブで飛び込み、見事なフローターと42%を記録した3ポイントシュートでレイカーズディフェンスを崩しました。この崩しが成功することでウイングやセンターも生きてくるため、オフェンスの導火線として非常に重要な役割だったのですが、これをペインは見事に果たしました。

2015年のNBAドラフト14位のペインは細身でシュート力も低く、3チームを渡り歩きながら成功せず、1年前はGリーグでプレーしていました。中断期間を経て再開された昨シーズン、ガードが足りないサンズに緊急補強されると、ここでかつての姿とは違い、細身を生かしたスピードで抜き切り、さらに高確率の3ポイントシュートで『バブル』での8連勝を支えました。迎えた今シーズンは安定したパフォーマンスでサードハンドラーとしてベンチからサンズを支え、プレーオフでさらにステップアップしています。

苦労人らしくチームオフェンスに徹しながらも、スピードでディフェンダーの間をすり抜けていくドライブ、左利きならではの独特のタイミングで放つフローターも効果的です。ベンチから登場して変化をつける役割にも向いており、明るいキャラクターもあって、チームに勢いをもたらす存在です。ナゲッツはダミアン・リラードの3ポイントシュートとスピードに全く対応できなかったこともあり、ペインの特徴は有効に機能しそうです。

一方のナゲッツはジャマール・マレーとウィル・バートンがケガで出場できない中で、最も頼りになるガードであるモンテ・モリスをスターターにはせず、ベンチから起用し続けています。特にニコラ・ヨキッチを休ませる時間帯にプレーメークの中心となることが求められており、ファーストラウンドではチームハイの5.8アシストを記録しました。

ダブルオーバータイムに持ち込まれた第5戦では28得点で強力な援護射撃をし、ファクンド・カンパッソのファウルトラブルもあってプレータイムが長くなった第6戦では22得点9アシストでシリーズを決める活躍をしました。モリスも平均15.3得点で、ヨキッチとマイケル・ポーターjr.に続く3番目のスコアラーになっており、両チームのベンチメンバーが得点の3番手という状況です。

モリスもペイン同様に細身のポイントガードですが、スピードではなくゲームメーク能力に定評があり、プレーを読む力の高さと球際でフィジカルに負けない強さを発揮してきます。2017年のNBAドラフト51位と下位指名ながら、毎シーズン確実に成長し、ナゲッツには欠かせない存在になってきました。特にマレーがいない中で、試合終盤にヨキッチとツーメンゲームをするのはモリスになるため、接戦になるほど重要な役割を任されます。終盤にゲームクローズしてくるクリス・ポールにゲームメークで対抗していく大役をこなせるか注目されます。

ペインがスピードでかき乱しチームに勢いを与えるのが役割なら、モリスはチームを落ち着かせて接戦で勝ち切るのが役割と、2人に課せられたタスクは異なります。しかし、トラブルが起きた時にベンチから登場して対処する点では共通しており、2人の活躍は試合展開に大きな影響を与えます。どちらがより強い影響を与えるかは、このシリーズの重要なポイントになりそうです。