石崎巧

「石崎ロスが相当なものとお察しいたします」

琉球ゴールデンキングスは今日、石崎巧の現役引退を発表した。

現在36歳の石崎は、東海大を経て2007年から東芝(現川崎ブレイブサンダース)でキャリアを始めると、その後はドイツに渡って2013-14シーズンには日本人で初めてドイツのトップリーグデビューを果たした。2014年からは再び日本に舞台を戻し、Bリーグ開幕1年目まで名古屋ダイヤモンドドルフィンズで過ごした。

そして、Bリーグ2年目の2017-18シーズンからの4シーズンを琉球でプレーし、ベテランポイントガードとして常にチームメートがプレーしやすい状況を作りながら、唯一無二の個性を示し、琉球の西地区優勝に貢献してきた。また、世代交代が進むBリーグの中で、石崎は卓越したバスケットボールIQで、琉球の躍進をコート内外で支えた。今シーズンは41試合に出場して、平均プレータイム19.4分で2.0得点を記録した。

石崎はクラブを通して次のコメントを発表している。「『引退』という言葉がなんだか仰々しくて自分の認識から距離があるような気がするので、あまり使わないようにしています。もちろん人生の節目であることに間違いはないのですが、実際に『何かが終わった』ような実感をいまだに得られてはいません。いつものようにシーズンが終わり、また少し休んで次の試合を待ち遠しくしている、これまでのオフシーズンとなんら変わることのない心境でいることに驚いています」

「それはつまり、この世界にしがみつかなければならないほどの未練を残しておらず、かつ、これまでの生活と同じくらいのやりがいや楽しさを、幸運にもこれからの世界に見出すことができたからなのだと解釈しています」

「沖縄に来て、僕の人生は思いもよらない大きな変化を遂げました。そして、バスケットボールをしてこなければ、ここにたどり着くことは決してなかったように思います。『人の志と運命とは全く相反して動き、思い定めしことも、かならず覆され、思いはわがものなれど、結果はつねに手のとどかぬところに現れる』ハムレットの一節です。これを読んだ時にはとても思い当たる節があり、人間の無力さ、運命の残酷さを感じて陰鬱な気持ちになったものですが、必ずしもネガティブな意味合いのみをこの真理が持っているわけではないのだと気づかされました」

「『手の届かぬところ』に現れた結果は、自分の世界を広げるために差し伸べられた、救いの手なのです。バスケットボールは僕の世界を大きく広げてくれました。そしてまた、広がった世界が僕のバスケットボールを高めてくれました。その循環を止めることなく続けていけたのは、僕たちの生き方を欲してくれる人たちがいたからでした」

「だからこそ、急な報告になってしまったことを申し訳なく思います。現役の間、ずっと応援してくれた方々、何かがきっかけとなって応援してくれるようになった方々、沖縄アリーナになって随分と見かけるようになった0番を着てくれている方々。それならそうと早く教えて欲しかった、最後に一目見ておきたかったという方もいらっしゃったのではないでしょうか」

「ごめんなさい。僕のわがままでしかないのですが、最後まで普通の選手でいたかったのです。石崎ロスが相当なものとお察しいたしますが、頑張って明日も会社に行ってください」

「またどこかでお会いすることもあるかもしれません。バスケットボール選手を辞めるだけであって、人生をやめるわけではありませんから。その時は二度目の新社会人として右往左往しているであろう僕に、世の中の厳しさを教えてやってください。僕の人生の大切な一部を、共有してくださって本当にありがとうございました」

なお、琉球は船生誠也とキム・ティリを本日15時に、自由交渉選手リストに公示することも発表した。両選手とは引き続き交渉を続けていくとのこと。