ドリュー・ホリデー

個人の強みを結び付けてヒートの戦術を上回り、4勝0敗で勝ち抜け

バックスとヒートのプレーオフファーストラウンドは、第1戦こそオーバータイムに持ち込まれたものの、バックスが『完勝』と言える内容でスイープしました。昨シーズンのプレーオフではヒートが戦略で勝利していただけに、ここまで一方的な展開になるとは予想外でした。

ヤニス・アデトクンポがドリブルでペイント内に侵入したところで、複数人で囲んでボールを奪い取るヒートの作戦は昨シーズンに続いて機能しており、シリーズを通じてアデトクンポはまともにプレーさせてもらえませんでした。ペイント内で囲まれる前に『打たされる』3ポイントシュートは16本打ってわずか1本しか決まらず、何もできない状況に追い込まれていました。

ところが、昨シーズンと違ったのはヒートのエースであるジミー・バトラーとバム・アデバヨもバックスに封じ込まれたことでした。インサイドにドライブしてくるバトラーに対しては、アデトクンポ、クリス・ミドルトン、ドリュー・ホリデー、そしてPJ・タッカーが代わるがわるマッチアップし、誰もが個人のディフェンス力で追い込み、逆にチーム全体にパスを供給するアデバヨに対してはゴール下以外は離して守って『打たせる』形にしてアデバヨに迷いを生じさせると、ミドルシュートが次々と外れました。

両チームがエースを封じられる展開で違いを生み出したのは、バックスで2人目の得点源であるミドルトンが、ハードなディフェンスに追い込まれて打ったタフショットを高確率で決めていったことでした。両チームのディフェンス力は互角でしたが、苦しいシュートでも決め切るオフェンス力を持っていたのはバックスでした。

昨シーズン同様にチーム戦術ではヒートが大きく上回り、バックスは1年前に突き付けられた『戦略の乏しさ』という課題に何も回答できませんでしたが、それを個人能力の高さで乗り越えたのです。ミドルトンだけでなく、ベンチから出てくるブリン・フォーブスが3ポイントシュートを39.9%決めるなど、個人のシュート力でヒートディフェンスを攻略しました。

チーム戦術に乏しいバックスにおいては、昨シーズンはいなかったホリデーの判断力が個人の強みを結び付けたことが、『完勝』となった最大の要因でした。鍛えられたヒートのディフェンスは、ヘルプにもマークマンにも対応できる絶妙なポジショニングで、簡単にはシュートチャンスを作らせません。これまでのバックスはアデトクンポを中心にスピードで勢いよくドライブすることからスタートしていましたが、ホリデーのドライブは緩急が入り混じり、ギリギリまでディフェンスを引き付け、迷わせ、その上で逆を取るパスを出していきました。

4試合で平均13.2本の3ポイントシュートを決めたバックスですが、その半分以上がホリデーのパスから生まれたものです。ヒートディフェンスを手玉に取ったホリデーの判断力が、チームメートに多くのワイドオープンを生み出し、3ポイントシュート成功率を大幅に向上させたのです。そんなパスをもらえないホリデー本人の3ポイントシュートは18.8%しか決まりませんでしたが、スイープの最大の立役者であることは間違いありません。

東カンファレンスで最大の注目カードは、バックスの充実ぶりばかりを示すシリーズになりました。個人技を中心とした戦い方ながら、最もチーム戦術が充実してるヒートを寄せ付けず、どのチームがどんな戦術で仕掛けてきても自分たちの強みで押し込めることを示したのです。「プレーオフで勝てない」といわれたバックスですが、一皮むけた姿を示してカンファレンスセミファイナルに進むこととなりました。