琉球に敗れてシーズン終了も「トータルで考えれば非常に良いシーズン」
富山グラウジーズの2020-21シーズンは、チャンピオンシップのクォーターファイナル第3戦で琉球ゴールデンキングスに敗れて終了した。しかし、激戦の東地区を勝ち抜いてチーム2度目のチャンピオンシップ出場を果たし、そこで初勝利を挙げており、確かなステップアップを果たしている。
就任1年目で富山を一つ上のレベルへと押し上げた浜口炎ヘッドコーチは、第3戦の終了後にシーズンを総括し、対戦相手にエールを送った。「残念ながら負けてしまいましたが、トータルで考えれば非常に良いシーズンでした。この仲間とこの舞台で3試合できたのは単純に楽しかったです。できればもう一つ先まで行きたかったですが、琉球さんは素晴らしかったです。是非、帰化選手のいる3チームに勝って上まで行ってほしいと思います」
第3戦の富山は、大差を付けられた試合終盤にオール日本人選手で前から激しく当たってターンオーバーを奪い、残り17秒には4点差まで詰め寄る粘りを見せた。だが、この猛追にも指揮官は「基本的に勝負が決まった時間でしたが、この舞台に若い選手がコートに立てるのは経験になりますし、この悔しさを忘れないで頑張ってほしいです」と、奮闘を称えながら冷静に受け止めてもいる。
「負けているチームが終盤に点差を詰めることはバスケットボールではよくあることです。これを最初から出さないと強いチームには勝てない。頑張ったのはその通りですが、大差を付けられる前に頑張らないと琉球さんみたいなチームを相手にゲームになりません」
振り返れば今シーズンの富山は、レギュラシーズン終盤から外国籍2名での戦いを余儀なくされるなど多くの困難に直面してきた。しかし浜口ヘッドコーチは、問題を抱えながら戦っていたのは富山に限ったことではないとし、ジュリアン・マブンガ、ジョシュア・スミスをともにフル稼働させなければいけない状況が特に大きなマイナスだったとは考えていない。。
「どのチームもシーズンを通してケガ人が出たり、いろいろな問題が起こるもの。これはバスケットチームに限らず、みなさんの会社も一緒です。雨が降っても、嫌なことがあっても仕事に行かないといけない。私たちも試合に負けたり、苦しい時にも練習をして切り替えてやっていかなければいけないのはどこの世界にも一緒です」
「外国籍2人になったことは別にそこまで苦しいとは感じなかったです。外国籍3人を回すのはどのコーチにとっても実は悩みどころではないかと思っています。僕は悩まずに2人を出し続けていればいいだけでした」
「いかにスコアできるかに力を注いだことは新しいチャレンジでした」
浜口ヘッドコーチ個人にとっても、9シーズンに渡って指揮を取った京都ハンナリーズを離れての新たな挑戦だった。そこには様々な苦労があったはずだが、それも当然と受け止めてチームを作り上げた。
「富山に移籍して来ていろいろな選手がいて、みんなと初めてなのでお互いにとって大変なことが多かったです。ただ、どんな組織も問題があることが当たり前で、コミュニケーションを取りながら一つひとつクリアしていったことに対してはやり甲斐もありましたし、楽しかったです」
京都の前に指揮を執った仙台89ERSからずっとディフェンス重視のチームを作ってきたが、富山は攻めて勝つこれまでと真逆のスタイルであり、異なる状況でもすぐに結果を残したことは注目されるべき功績だ。
「プレースタイルに関して僕は長年ディフェンスファーストのチームを作っていて、メディアさんの前でもそれを話してきました。それが今シーズン、『ディフェンスを頑張ります』と言わなくなったのは一つの変化です。ウチはオフェンス力のある選手が多いので、彼らの良いところを前面に出してチームを作っていくことにシフトして、練習時間もほとんどオフェンスに力を入れていました。ボールハンドラーと良い選手たちでいかにスコアできるかに力を注いだことは新しいチャレンジでした。そこでチーム、選手ともに成長できたと思います」
富山がさらなるステップアップを果たすには守備の強化が必要だが、それこそ浜口ヘッドコーチの代名詞であり、今シーズンの経験を踏まえることでやりやすくもなるはずだ。もちろん、ヘッドコーチを含め来シーズンの編成がどうなるのか現時点では分からない。ただ、今の富山は正しいステップを歩んでおり、さらなるステップアップのためには継続路線こそが最善の策と感じさせる、今シーズンの戦いぶりだった。