二コラ・ヨキッチ

「ビールでも飲みながら子供たちに話す。少し盛ってね」

現地12月18日のマジック戦で、ナゲッツのニコラ・ヨキッチはカリーム・アブドゥル・ジャバーが持つキャリア通算5660アシストを追い抜き、センターとしてNBA史上最多アシストを記録する選手となった。

第2クォーター残り6分半、相手のフリースロー失敗から攻撃に転じてボールを持って上がったヨキッチは、マジック守備陣の一瞬の隙を見逃さなかった。ジャマール・マレーのオフボールスクリーンを受けてフリーになったジェイレン・ピケットにパスを送り、3ポイントシュートをアシスト。記録達成にボール・アリーナの観客は大喜びし、この得点を機にナゲッツは35-7という怒涛のランで試合の流れを一気に引き寄せた。

試合終盤にマジックの反撃に遭い、残り1分半で6点差まで詰め寄られるも、ここでヨキッチはハイポストでディフェンス2枚を引き付け、逆サイドのコーナーへとパスを送り、キャム・ジョンソンのコーナースリーをアシスト。これで勝利を決定付けた。

NBA通算アシストはジョン・ストックトンが歴代最多の1万5806、これにクリス・ポールの12499、ジェイソン・キッドの1万2091とガードがトップ3を占め、4位にフォワードのレブロン・ジェームズの1万1584が続く。ヨキッチの5665はセンターでは1位でも全体で見れば50位だが、あと数試合でラリー・バードを抜き、その後も順位を更新していくだろう。

また、この試合でのヨキッチは23得点11リバウンド13アシストを記録し、キャリア通算177回目のトリプル・ダブルを記録した。歴代2位のオスカー・ロバートソンの記録は181で、こちらも遠からず抜くことになるだろうし、歴代トップのラッセル・ウェストブルックの203も視野に収めている。

試合後のヨキッチは記録について「記録とか数字みたいなものは引退後に楽しむものだ」と、いつもの持論を展開した。「キャリアを終えて、自宅のポーチでビールでも飲みながら、子供たちに現役時代の活躍を話してあげるんだ。少し盛ってね(笑)」

13アシストを記録したが、お気に入りのプレーは「あまり覚えていない」との回答。「プレーオフならもうちょっと大きな意味を持つパスがあったかもしれないけど、今は思い出せない。それでも僕のコーチだったデキは『アシストは2人を幸せにする』といつも言っていた。派手なパスじゃなくても、正しいパスで出し手と受け手の2人が幸せになれれば満足だよ」

いつも飄々としたコメントしか言わないヨキッチだが、メガ・バスケット時代の指導者であり、ウォリアーズのアシスタントコーチだった昨年1月に急死した『デキ』ことデヤン・ミロセビッチの名前を挙げることで恩師へのリスペクトを示している。

「まあ、どちらにしても試合中に記録や数字のことを考えている余裕はないよ。良いプレーができた日は、試合が終わって2時間ぐらいは浸ることもあるけど、あとはすぐに忘れてしまう」

そういう心持ちで、ヨキッチは今後も派手ではなくても効果的なアシストを生み出し、ナゲッツに数多くの勝利をもたらすに違いない。