本橋菜子

指揮官ホーバスは「彼女の判断や負けない気持ち」を高く評価

日本代表のポイントガード、本橋菜子は昨年11月に右膝靭帯損傷の大ケガを負った。「この時期にこのケガをしたら終わりだと思っていたので、ケガをした瞬間はオリンピックをあきらめなければいけないと目の前が真っ暗になった」と本橋は振り返る。

「でもそこから先生に診断してもらって、トレーナーとも相談して、良い環境の中でリハビリができて、その環境の中で可能性はゼロではないとなり、可能性がゼロじゃないなら、できるところまで最後まであきらめずに前を向いてやっていました。1回目のケガだったら何もかも初めてで『こんな状態から間に合うんだろうか』となり、リハビリ過程でもマイナスなことが多いし、地道なトレーニングで徐々に上げていくしかないんですけど、2回目だから『まだ大丈夫』と自分に言い聞かせてやることができました」

まだ本来のプレーを取り戻せたわけではない。それでもリハビリは順調だし、ヘッドコーチのトム・ホーバスも本橋の復活に期待するところは大きい。ガード陣の選手をどう選んでいくか、指揮官は「一つのポイントじゃなくトータルパッケージです」とし、こう続けた。「ディフェンスができる、パスもシュートも大事。ガードはボールハンドリングも判断も大事です。一つじゃなく全部を見て、ウチのオフェンスに合うかどうか。ケガする前は本橋。本橋は3ポイントシュートが一番良いわけじゃないし、一番速いわけでもない。でも彼女の判断や負けない気持ちがウチのチームにすごく合った」

前回の強化合宿の後半からコンタクトなしで一部の練習に参加するようになって、今回の合宿でできることを増やしている。「不安や怖さもありましたが、練習するうちに対人以外での不安や怖さはなくなって、『できるんじゃないか』という手応えを取り戻しつつあります」と本橋は言う。

「まだ5対5ができていないので、正直分からないところはあります。でも、ここまで来た過程とか、これまでの自分のバスケットを信じてやっていこうと思っています。代表合宿に戻って来れたことは本当にうれしいです。ずっと一人でリハビリをしていたので、やっとここまで来たんだな、って感じです」

右膝のテーピングは痛々しく、100%のプレーを取り戻すにはまだ時間がかかりそうだが、周囲の期待は大きく、本橋自身も強い思いを持って日々の練習に取り組んでいる。

「ケガしたところからオリンピックまで『自分がどこまでできるのか』という挑戦です。こういう状況でオリンピックに間に合わせるという時に、すごくいろんな人が応援してくれたし、それまでのバスケット人生でも本当にたくさんの人に支えられてきたので、その感謝の気持ちがあります。『バスケで日本を元気に』を掲げているんですけど、そういった勇気を届けることを表現できる最高の舞台がオリンピックだと思っているので、そこでそれを伝えられたらいいなと思っています」