ビッグラインナップにおける潤滑油としての存在感
川崎ブレイブサンダースは、5月2日のサンロッカーズ渋谷戦を110-88と圧勝しレギュラーシーズンを終えた。この試合、第1クォーターの出だしは20点差で負けた前日のリベンジを期すSR渋谷が持ち前の激しいプレッシャーをかけることで互角だった。しかし、中盤に入ってビッグラインナップを投入した川崎は、このクォーターで3ポイントシュート9本中7本を成功。出だしで2桁のリードを奪えたのは大きかった。
この長距離砲の爆発をけん引したのが辻直人で、第1クォーターで3本の3ポイントシュートをすべて成功させる活躍を見せた。この結果、キャリア通算3ポイントシュート成功1,000本を達成した辻は、試合全体で12得点3リバウンドとしっかり役割を果たした。
川崎の好調を支えているのは、完成度の高さが際立つビッグラインナップだ。そこにはこの布陣において、コートに立つことが大きい辻の貢献ぶりも見逃せない。
辻はこのようにビッグラインナップでの自身の役割を説明する。「ミスマッチのアドバンテージがあるので、出てきたパスを打って決めるのがビッグラインナップでの役割の1つ。あとはそれに対応した時にチャンスメークをする。それが昨日、今日とできていたと思います。やることがはっきりしているのでやりやすいです」
川崎のビッグラインナップはゴール下で優位に立てるだけでなく、ニック・ファジーカスやジョーダン・ヒースといった非凡な3ポイントシュート力を持つビッグマンがいるため、外からでも得点できるのが大きな特徴であり、他チームが対応に苦しんでいる要因だ。だからこそ、インサイドアタックを強調する時に外から射抜くとともに、ビッグマンが外に開いてスペースが生まれた際にピンポイントでパスを通せる辻は、ビッグラインナップにおける潤滑油と言える。
最高のタイミングでシュートフォームが完成形に
これで川崎は、千葉ジェッツ、宇都宮ブレックス、アルバルク東京、サンロッカーズ渋谷と東地区のライバルたちを相次いで撃破しての7連勝でチャンピオンシップに臨む。「試合をこなすごとにチームディフェンスがやれています」と、辻は連勝を導いた要因として守備の充実ぶりに触れる。そして、自身のパフォーマンスに関しても右肩上がりと続ける。「シュートフォームに迷いがなくなってきたのは収穫です。そこが中々、定まらずに来ていたのが、この7試合は外れても納得のいく外し方が多かったので自信になっています」
今シーズンの辻はオフからシュートフォームの改造に取り組んできた。開幕前のインタビューではその変化をこう明かしてくれている。「見た目ではそんなに分からないかもしれないですけど、自分の中では大きな変化です。ジャンプして上で止めていたのを流れるように打つようにして、今まで真ん中でリリースしていたのを数cm右にしました」
もちろん改造はそう簡単にいくものではない。シーズン中も様々な微調整など試行錯誤が続き、結果が出ない苦しい時期もあった。だが、「入らない時期もありましたが、それでも投げ出さずに信じてやってきて、このタイミングで自信を持てる。4月になってから感覚をつかめてきてよかったです」と、ここに来てハマってきている。
今のチームの状態について辻はこう絶大な自信を見せる「『強い川崎』というのを本当にコートで体現できている。試合をやっていて自分でも強いチームだと思いますし、負ける気がしません。チャンピオンシップに向けて照準を合わせたかのような良い状態になっていると思います」
照準が合ってきているのは、チームだけでなく辻個人も同様だ。辻の3ポイントシュートが、他の選手にはないチームの起爆剤となれることは過去の実績が証明している。今年の天皇杯決勝でも、第3クォーターに辻の連続3ポイントシュート成功でリードを10点に広げたことで、川崎が流れに乗ったのは記憶に新しい。
シュートフォームに加え、今シーズンの辻はチーム活動と並行して外部でもトレーニングを積むなど新たなチャレンジを続けてきた。その結果、ハンドラーとしても着実に成長している。辻が自身の求める進化した姿をチャンピオンシップで披露できれば、それだけ川崎の王座奪還は近づく。