文=丸山素行 構成=鈴木健一郎 写真=足立雅史

『バスケット・グラフィティ』は、今バスケットボールを頑張っている若い選手たちに向けて、トップレベルの選手たちが部活生時代の思い出を語るインタビュー連載。華やかな舞台で活躍するプロ選手にも、かつては知られざる努力を積み重ねる部活生時代があった。当時の努力やバスケに打ち込んだ気持ち、上達のコツを知ることは、きっと今のバスケットボール・プレーヤーにもプラスになるはずだ。

PROFILE 橋本竜馬(はしもと・りょうま)
1988年5月11日生まれ、福岡県出身のポイントガード。攻守両面で闘争心溢れるプレーを見せ、チームを鼓舞して引っ張る不屈のファイター。男子日本代表の長谷川ヘッドコーチからもアグレッシブさではナンバーワンと太鼓判を押された。

スポーツって基本的に、上手く行かないことのほうが多い

中学校2年生の時のチームが結構強くて、ベンチにも入れてもらい、試合にも出してもらっていました。全中でベスト8くらいまで行きました。でも、その時にケガしてしまって、スタメンだったのに最後の負けた試合には出場できなかったので、それがすごく悔しかった、という思い出です。

しかも、そのケガが結構長引く骨折で、治るまでに半年くらい時間がかかったんです。2年生の夏から新しいチームに切り替わるんですが、僕は3年生になるくらいまでバスケットボールができなくて。

ケガをしてバスケができないのは辛いし、さらにはケガが長引いたりしたのがあって、正直嫌になったりもしました。それでもやめようと思わなかったのは、バスケットボールを好きな気持ちがあったからですね。だから大ケガがあってもやり続けることができました。

上手いのにやめてしまう選手ももちろんいました。スポーツって基本的に上手く行かないことのほうが多いです。納得のいくプレーができなかったり、試合で勝てなかったり。それで言うと、やっぱりあきらめないのが大事ですね。嫌なことがあっても前に進み続けるというか、前進し続ける力はすごく大事だと思います。

上手くなりたいと思っても、実際に行動に移すのは難しかったりしますよね。そこで大事なのが切り替えだと思います。「今日は練習したくないな」と思う日は僕にもあります。でも、そこで「今日休んだらどうなるのか」と考えたら、僕は練習に行くんです。それでも「やっぱり今日は何か違うな」と思ったら、スパッとやめて遊びに行っちゃう。家で寝ている日もありました。

基本的に休みの日までバスケットはしていなかったです。やる時はやる、やらない時はやらない、そのメリハリは大事だと思います。

「スポーツって基本的に、上手く行かないことのほうが多い」とその難しさを認識しながら、橋本は「前に進み続ける力」の重要性を説く。

チャンスはそう何度も回って来るものではない

バスケはかなりメンタルに左右されるスポーツです。そして、メンタルの部分は人に鍛えてもらうものではなく、自分自身で出来事をどうとらえられるかが重要になってきます。そういう意味では自分もいろんなことを考えて、上手く理解できるようになったと思います。

やっぱり後向きになってしまう時もありますけど、その中で自分の可能性を探していくことが大事です。「上手くなりたい」という気持ちが強いかどうか、何があっても前に前にと進もうとする力があるかどうか、悔しい気持ちをバネにしてまた頑張れるかどうか。そういったハングリー精神みたいなものは、僕は結構あるほうじゃないかと思っています。

部活時代に自分がぐんと伸びた時期は……ありますね。中学1年生の夏の大会から、1年生が終わる時のジュニアオールスター出場まで、その時期は結構上手くなったと思います。高校は3年生の時と、あとは大学かな。中学、高校、大学と1回ずつは自分の中でぐっと伸びた実感があります。

それはやっぱりスタメンを勝ち取ったりとか、そういうのがきっかけですね。チャンスはそう何度も回って来るものではないので、一回でつかみ取ることがすごく大事です。チャンスをモノにして、気が付けば自分が以前とは違うレベルにいる、という感じですね。

スタメンに抜擢されるなど巡って来たチャンスをモノにすると、気付けば自分がぐっと伸びたことが分かると橋本は言う。

バスケット・グラフィティ/橋本竜馬
vol.1「負けず嫌いはヤバかったと思います」
vol.2「前進し続ける力というのはすごく大事」
vol.3「上手くなるために自分を知る」