小酒部泰暉

「プレータイムをもらっている以上、やるべきことをやらないといけない」

アルバルク東京は3月28日、レバンガ北海道に序盤から主導権を握られ79-96で完敗し、同一カード連勝を逃した。現在、チャンピオンシップ出場権争いのライバルであるサンロッカーズ渋谷、富山グラウジーズがともに連勝で終えたこともあり、1敗の重みが大きくのしかかる週末となった。

A東京は現在、攻守の要としてリーグ連覇の立役者となった田中大貴、アレックス・カークが揃って故障欠場。当然のことだが2人の穴を埋めるのは簡単なことではなく、貯金が増えない最大の要因となっている。

そんな中、田中に代わって中心選手の役割を担っているのがルーキーの小酒部泰暉だ。シーズン当初は出番が少なかったが、12月以降は1試合20分以上のプレータイムとローテーション入りを果たし、田中の離脱後は先発出場が続いている。北海道との2試合はベテランの菊地祥平が土曜日は4分、日曜日は0分の出場に終わったこともあり、土曜は27分、日曜は30分に渡ってコートに立った。

ただ、この週末、本人にとっては不本意な内容だった。28日の大敗を「終始、相手の気持ちの方が上回ったことで、最終的にこういう結果に繋がった試合だったと思います」と振り返ると、自身のパフォーマンスについても反省しきりだった。

「2日間、自分的には納得できる形ではなかったです。ミスが多く、状況判断も悪かったので、良い結果ではなかったと思います」

実際に課題の守備で大きなミスを犯した。第3クォーター残り3分30秒、後ろに味方がいるにもかかわらず多嶋朝飛のボールプッシュをファウルで止めにいった結果、ボールにいってないとアンスポーツマンライクファウルを献上。北海道に試合の流れを渡すきっかけを作ってしまった。

まだ、ルーキーで経験不足を考慮すると、こういったミスも成長への糧として致し方ない側面はある。ただ、今のチーム状況はそうも言っていられない。そこは本人も強く自覚している。「スタートで出場し、長い間プレータイムをもらっている以上、やるべきことをやらないといけない。勝つためにどういうプレーをする、気持ち、頭を使ったプレーをもっと身につけないといけないです。そうならないと、勝ちに繋がるプレーができないとあらためて思いました。もっと意識を高めていきたいです」

小酒部泰暉

リーグ3連覇へ、王者再浮上のキーマンとなるルーキー

リーグ3連覇の第一関門となるチャンピオンシップ出場へ、今のA東京は崖っぷちの位置だ。田中大貴、アレックス・カークが故障離脱中に加え、エーススコアラーとしてチームを牽引してきたデション・トーマスに新型コロナウイルスの陽性反応が判明した。まずは、トーマスの早期回復を何よりも願っている。その上で不可抗力ではあるが、再びチーム活動の休止を余儀なくされ、コンディションの維持、練習によって課題を修正することができないのは少なくない痛手だ。

トーマスの陽性が明らかになる前、28日の敗戦後に指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチは、中止となった31日の川崎戦に向けてこう語っていた。「立て直すには厳しいスケジュールの中、身体的、メンタル的にも疲労が溜まっています。試合は水曜日なので修正する時間は本当にない。今までやってきたことを思い出し、川崎にすべてをぶつける。何がなんでも自分たちのスタイルで戦いきりたい」

チームの課題を修正するため、主力が揃い踏みでしっかりした練習をできる時間がないのは、残念ながらA東京の現状を見ればこれからも変わらないだろう。だからこそ、今や間違いなく主力となっている小酒部が持ち前の高い身体能力を生かし、攻守で強度の高いプレーを継続できるかは、シーズン終盤で立て直しできるか大きな鍵となる。

今シーズンは小酒部と同世代の特別指定選手の活躍が特に目立っている。ただ、王者の中心選手と彼程に大きな重積を担っている選手はいない。見方を変えれば、今の彼はリーグのどの若手選手たちよりも大きな成長の糧となる経験を積むことができている。王者復活を導く救世主として、これからの小酒部はより見逃せない存在だ。