NBA

「バイアウトとなった選手は、優勝を狙えるチームにしか行かない」

NBAでは30チームすべてに勝つチャンスが得られるよう、ドラフトやサラリーキャップの戦力均衡策が採用されている。しかし、バイアウトは『ルールの抜け穴』として、ビッグマーケットのクラブだけに有利に働く。この不平等の実態を、スモールマーケットの球団関係者にヒアリングする形で『Sports Illustrated』が紹介している。

今シーズンのトレードデッドライン前後に、バイアウトでオールスター出場経験のある選手が動いた。ブレイク・グリフィンはピストンズと、ラマーカス・オルドリッジはスパースとのバイアウトにより自由を得て、ネッツと新たな契約を結んだ。同じくアンドレ・ドラモンドはキャバリアーズを離れ、レイカーズに加わることになった。

トレードデッドライン後に来る『バイアウト・シーズン』はNBAの本来のスケジュールには存在しないものだ。バイアウトをした選手は、それまでの契約で得られる年俸の大半を受け取り、そしてベテラン最低保証金額で新たなチームに加わる。

「シーズン中にこの不平等な移籍が何件も起きるのはフェアではない」と、スモールマーケットの球団関係者は匿名で証言する。別の関係者も「バイアウトとなった選手は、優勝を狙えるチームにしか行かない。ビッグマーケットのチームは通常なら獲得できない選手を、実質的にタダと言っていいほど安い金額で獲得できる」と語る。

グリフィン、オルドリッジ、ドラモンド。バイアウトせずに彼らが本来受け取っていた年俸を支払わなければならないとしたら、ネッツもレイカーズも彼らの獲得には動けなかった。さらに言えばレイカーズとネッツにとって、彼らは使い捨ての『傭兵』だ。今シーズンに彼らがどんな活躍をして、彼らの新たな市場価値がどれだけのものになろうが、それに見合う年俸を提示できるだけのサラリーキャップの余裕はない。

あるスモールマーケットの球団のGMは、「スモールマーケットのチームがバイアウトの要求を拒否するのは難しい。選手の意向を無視して代理人の機嫌を損ねれば『分かった、このチームには選手をやらない』と言われてしまう」と、圧力の存在を証言する。

バイアウトの後に新たなチームに加わった選手はプレーオフに出場できない、というルールを新たに加えれば、この問題は解決する。しかし、証言者たちは『平等な条件下での競争』が建前でしかなく、改善は望めないことを理解している。NBAはこの問題を重くは見ていない。選手の意向がこれまでにないほど強くなっているのはリーグに対しても同じで、NBAも選手サイドのご機嫌をうかがいながらリーグ運営を行っている状況だ。そして『もう終わった選手』が強豪チームへの移籍を機に再び脚光を浴び、タイトル争いが盛り上がって、沈下傾向にある視聴率を上げてくれるなら、リーグにとってはむしろポジティブだ。

損をするのはスモールマーケットの球団のみ。果たしてこれが正しいのかどうか……。