山口颯斗は194cm90kgのサイズに加えてガード陣と遜色ないスキルを持ち、自らボールをプッシュして仕掛けることができ、筑波大のエースとして戦ったインカレでは得点王に輝いた。そんな山口は特別指定選手としてレバンガ北海道に加入し、1月23日のデビュー戦でいきなり20分を超えるプレータイムを得ると、ここまで10試合で9.1得点、4.6リバウンドと上々のBリーグデビューを果たした。大学バスケでは他を圧倒したオフェンス能力は、Bリーグでどこまで通用しているのか。山口にその手応えを聞いた。
「ディフェンスは今までになかったぐらい一生懸命やっている」
──山口選手は生まれも育ちも関東ですが、北海道での暮らしはどうですか?
そもそも初めて関東を出たので緊張しました。あと、北海道をちょっとなめていましたね(笑)。寒すぎるし、雪がスゴすぎます。体育館は暖房があるので大丈夫ですが、日常生活とか、練習が終わって家に帰った時とか本当に寒くて。今は慣れてきましたけど日常生活の方では「ちょっと間違えたな」と最初は思いました(笑)。
──これまでに北海道には行ったことがありましたか?
高3の時と大学1年の時に来たことがあります。あとは昨年のうちに一度チームを見せていただいたんですけど、その時は関東の冬ぐらいの気温で「寒いなあ」ぐらい。その感覚で来てみたら、毎日、気温がマイナスという。嘘だろと思っています(笑)。
──では、バスケットについて聞かせてください。入団会見では北海道に加入した理由にご自身の『成長』を挙げていました。チームに合流してから、さっそく成長したと感じる部分はありますか?
プレーの成長はまだあまり感じられていないですけど、意識面ではディフェンスのオフボール、オンボールの部分で、今までになかったぐらい一生懸命やっているので成長していると思います。やっぱりディフェンスのプレッシャーと外国籍選手がコートに2人いる部分で、大学バスケとBリーグの違いを一番感じていますね。
──外国籍選手と一緒にプレーする難しさはありますか?
最初は言っていることがあまり分からなかったり、求めることが日本人選手とは違う部分が多くて難しかったです。例えばバックカットの合わせのタイミングで、ここにはパスを出せないだろうと思っていた部分があったんです。そうしたら「来いよ」みたいな感じだったので、行ってみたら本当にそこにパスが来て。彼らは身体能力が高いこともありますし、そういう意味では特に(ジョーダン)テイラーは違うんだなと思いましたね。
「最後の場面ではシュートを打ちたい」
──ここまで10試合に出場して、平均プレータイム23.4分で9.1得点、4.6リバウンドを記録しています。直近の3試合では先発出場も果たしていますが、ご自身の中では予想通りのデビューとなったのか。それとも予想を上回っているのか、どうですか?
デビューする前は自分がBリーグでどれぐらいやれるのかが、本当に分かりませんでした。そう考えると、思っていたより自分のプレーができている感じはあります。ただ、10試合の中の後半5試合ぐらいからは「もっとできるはず」という悔しい気持ちとか、もっと自分のプレーを出した方が良いんじゃないかと思う部分もあって、もどかしさもあります。
コーチ陣からは、強気でペイントエリアへアタックすることと、リバウンドの部分でしっかり戦ってほしいと言われています。その中で、自分のタイミングで行けている時のドライブからのフィニッシュは通用していると思います。
ディフェンスはもともとできないと分かっていたことなので、それ以外の今の課題は、自分のタイミングではないドライブや、今まで行けていたところをバンっと抑えられた時の次の対応が遅れてしまってシュートを落としてしまったり、判断が遅れてパスミスをしてしまうところです。
──北海道は激しいディフェンスからリズムを作るチームだと思いますが、山口選手はディフェンスが苦手なんですか?
できていないと自覚しています。今は穴にならないようにと一生懸命頑張ってやっていますが、ディフェンスができないとダメだと思っています。それでもプレータイムは欲しかったですし、試合に出ないと絶対に上手くならないので、オールコートディフェンスをモットーに掲げているこのチームだったら嫌でもディフェンスをやらなきゃいけない、それが自身の成長に繋げられるという考えもあって、北海道を選びました。
──積極的なドライブやサイズがありながらもハンドリング力に優れている山口選手ですが、その武器を手に入れたのはいつ頃からですか?
大学に入ってからですかね。僕はもともと外のシュートが好きだったんですよ。なので、大学に入った時はシューターみたいな感じで、1年生の時の新人戦では3ポイントシュートを10本も打つような試合もありました。ですが、先生に「ドライブ行けよ」と言われてから練習をするようになって、そこからは自然と3ポイントシュートに頼らないプレースタイルになりました。
──山口選手にとってBリーグ3試合目となった秋田ノーザンハピネッツ戦で、なかなかシュートが入らない中でも攻め気を失わずにアタックしていた姿が印象的でした。
あの試合は最後までシュートが入りませんでしたけど、シュートまでは良い形で行けていたんです。なので、攻めているうちに入るだろう、入れてやろうと思ってやっていました。試合後は気にしたりもしますけど、それで寝られなくなることはないですし、「今日はやっちゃったな」ぐらいの気持ちで切り替えています。
──それこそ大学ではエースとしてプレーでチームを引っ張っていましたが、今は立場が変わってルーキーです。それでも大学時代と変わらず積極的に攻められるのはすごいと思うのですが、そこは何か意識していますか?
オフェンスもディフェンスも一生懸命にやって、少しでも勝ちに繋げられればという思いぐらいです。大学の時と同じ気持ちでプレーをしているので、あまり意識することなく今まで通りできていますね。だから、そういう感じに見えるのかもしれないです。
──立場は変わっても気持ちの面では変わらないということですね。ハートが強いですね。
そうやってよく言われますけど、本当に何も意識していないんですよ(笑)。でも、自分でハートが強いとは思っていませんが、最後の場面ではシュートを打ちたいとは思っています。そこは昔も今も変わらなくて、試合中も「僕じゃないかな? あ、違うのか」みたいな(笑)。それでも「あっちがディナイされて僕のところに来ないかな?」と期待したり(笑)。
「今シーズンで資格がなくなるので新人王を取りたい」
──唐突ですが、Bリーグでのプレーは楽しいですか?
楽しいです。楽しいですが、このバイウィークに入るまでは結構キツかったですね。初めての環境でもありますし、試合もインカレでの35分よりもBリーグの20分の方が疲れます。なおかつ北海道は移動も多いので、そういった面もあってキツかったです。
──お手本にしている選手とかいますか?
お手本としている選手はいませんが、日本人選手だと比江島(慎)さんがずっと好きでした。今はケガをされているのでこの間は対戦できませんでしたが、4月の宇都宮との試合ではマッチアップしたいです。
──『比江島ステップ』ならぬ『山口ステップ』を見せてください(笑)。
比江島さんの前でですか? 昨シーズンは宇都宮に特別指定で加入して一緒に練習していたので、恥ずかしいから遠慮します(笑)。
──今シーズンはあと23試合ありますが、数字面などの具体的な目標はありますか?
得点は平均2桁に乗せたいですね。あと、このまま30試合以上出場すると、来シーズンの新人王の資格がなくなるので、今シーズンの新人王を狙うしかないなと。実は僕、卒業論文でBリーグの新人賞について書いたので詳しいんですよ(笑)。スタッツに基づいた『最優秀新人賞を獲得するには』といった内容で。
──面白いテーマですね。実際に山口選手が書いた卒論と、今のご自身の出来を比べるとどうですか?
各年代の新人王を取った選手みんながやっている、ある一つの数値があるんです。これまでに新人王を取った選手のその数値と、今の僕の10試合での数値が同じなので、まずはそれをキープしていきたいですね。
──頭脳派ですね。
調べたことなので活用しなければと思って(笑)。
──そうなると、今シーズンの最終的な個人目標は『新人王を取る』ですかね?
でも「僕みたいな選手が狙っていいんですかね」とも思うので、「今シーズンで資格がなくなるから新人王を取りたいです」にしましょう(笑)。本当は来シーズンの新人王を狙っていましたし。ただ、今の自分のスタッツを見ても、ケガをせずこのまま頑張ればいけるかなと。
──それは調べていた山口選手だからこそのモチベーションですよね。
そうですね。中村太地さんも3年生の時に横浜で結構試合に出ていたので、昨シーズンの資格がなかったんですよね。そういう状況も見ていますし。大阪の中村浩陸さんも昨シーズンに結構出ていたので今シーズンの資格はないと、ついこの間、弟(中村拓人)が言っていました(笑)。
──それでは、最後にファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
まずは自分のストロングポイントの身長や得点力を生かしてチームを勝利に導けるようなプレーをしたいです。まだ、僕は北海道に来たばかりなので、僕のプレースタイルを知らない方もいると思います。このご時世なので直接会場に見に来れなくても、バスケットLIVEなどで見ていただいて、僕のことを知ってほしいです。レバンガ北海道を応援してもらえるように頑張ります。
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