超スモールラインナップで渡邊の攻守の持ち味が生きる
開幕10試合を2勝8敗と大きく負け越したラプターズは、パスカル・シアカムをセンターとして起用するスモールラインナップを多用することでディフェンス力強化を図り、以降は5勝3敗と持ち直しました。ペリメーターを守ることができ、サイズのあるウイングの重要性が増したことで、渡邊雄太もローテーションの一角に定着しています。
しかし、ディフェンスの要となるOG・アヌノビーを欠いたキングス戦は、ディアロン・フォックスとタイリース・ハリバートンのガードコンビにスピードで振り回されてディフェンスが後手後手に回り、次々と3ポイントシュートを決められ、第3クォーターまでに104点を奪われ、13点のビハインドを負ってしまいました。
第4クォーターになっても反撃の糸口をつかめないラプターズは、残り8分半から渡邊とスタンリー・ジョンソンをビッグマンとする超スモールラインナップで勝負に出ます。すると早速スタンリーのパスから渡邊のドライブが決まり、ディフェンスでも渡邊がフォックスのドライブを連続で止めます。さらにダブルチームを仕掛けた渡邊がパスカットと、スピードで仕掛けるディフェンスから、反撃ムードを作り出しました。
高さのミスマッチを厭わないラプターズは、ガード陣がセンター相手に守るシーンも頻繁に出てきますが、素早い収縮で複数で囲い込み、イージーシュートを許しません。パスアウトに対してもオフボールでのローテーションが早く、見事なプレッシャーディフェンスが機能したため、第4クォーターだけでキングスのターンオーバーは9つを記録しました。
オフェンスではカイル・ラウリーを中心に、薄くなったインサイドに次々とドライブを仕掛けてディフェンスを収縮させると、パスアウトを受けた渡邊がコーナーからの3ポイントシュートを決め、点差を一桁に縮めます。ここからラプターズはなかなかシュートが決まらない展開が続きますが、コーナーからオフェンスリバウンドに飛び込んだ渡邊によってセカンドチャンスが生まれて食らい付き、残り2分にフレッド・バンブリートが見事なステップインでブロックをかわし3点差へと迫りました。
キングスはクラッチタイムで素晴らしい活躍を見せるルーキーのハリバートンを中心にオフェンスを組み立てます。そのハリバートンのマークを任された渡邊は、逆に自らのドライブでハリバートンを抜いてレイアップを決め、残り1分で1点差に詰め寄ります。しかし、渡邊がヘルプディフェンスでゴール下で倒れこむと、フリーになっていたハリバートンにボールが渡り、3ポイントシュートで再び4点差に離されてしまい、キングスが逃げ切りました。
渡邊はキャリアハイの12点を奪い、6リバウンドも記録しました。19試合中13試合に出場し、平均12.3分と安定した出場機会を得られていることで、ディフェンスやリバウンド、ルーズボールなどでハードなプレーをしながらも落ち着きのあるプレーを見せられるようになってきました。この試合ではスモールラインナップながらビッグマンではなくガードのハリバートンをマークしたように、ディフェンスの役割も多様化してきています。
過密日程の影響かラプターズは得意の激しいディフェンスからチャンスをつかむ展開を作れない試合が出てきていますが、渡邊はディフェンスとハードワークにおいて信頼を得ており、追い上げる展開でも起用されるようになってきました。この試合では追い上げムードを作るだけでなく、1ポゼッション差で推移するクラッチタイムも含めて最後までベンチに下がることはありませんでした。一方でオフェンス面では3ポイントシュートは37%と及第点になっているものの、2ポイントシュートが18%しか決まっておらず、インサイドでのフィニッシュ力が懸念事項になっています。
キングス戦の試合終盤で魅せたドライブのような形を増やすことができれば、得点はさらに増えていくはずです。開幕前の渡邊に得点面の貢献は期待されていませんでしたが、それを求めたくなるほどチームとしては苦しい状況になるとともに、それだけ渡邊の重要性も高まってきています。