ショーン・デニス

新型コロナウィルス感染拡大はすべてのチームに経営面で深刻なダメージを与えたが、その中でもチーム運営の大きなスケールダウンを余儀なくされた代表格とも言うべきチームが滋賀レイクスターズだ。昨シーズンの中断時点で21勝20敗と初のチャンピオンシップ出場を狙える躍進を果たしたが、オフに主力選手の多くが流出してしまった。人件費を下げつつチームを再建する今シーズンの滋賀に対して、苦戦は免れないとの声は少なくなかった。しかし、ここまで10勝17敗、リーグ最高勝率の宇都宮ブレックスから勝利を挙げるなど存在感を示している。この原動力である指揮官、ショーン・デニスにシーズン前半戦の戦いを振り返ってもらった。

「若い選手たちは、よく学んで成長を続けています」

──ここまで10勝17敗、チームのパフォーマンスをどのように評価していますか。

勝ち負けの成績だけを見ると平均以下と判断されるかもしれませんが、コロナ禍によって選手の人件費が減少した中で、とても競争力のあるパフォーマンスができています。アルバルク東京とのアウェーゲームでは2試合続けて良いパフォーマンスで1勝しました。宇都宮を相手にしても良い試合をして、1勝を挙げています。ただ、安定感に欠けている面はあり、下位のチームに対してA東京や宇都宮との試合で見せたプレーができないこともあります。その点ではフラストレーションが溜まりました。

全体的に言うと、シーズン開幕前における期待を上回ることはできていると思います。ここまでのプレー内容については満足しています。ここからは、細かい部分の修正を行って安定感を増していくのがチャレンジとなります。それができれば、成績も良くなっていきます。

チームの強みは、攻撃においてマッチアップで様々なアドバンテージを作り出せること。日本人も得点できており、今のチームは私が滋賀を率いてから最も攻撃力のあるチームになっています。弱みは時にサイズで圧倒されてしまい、安定感に欠ける部分です。特に守備面でもっと成長していかないといけない。より激しく、フィジカルになる必要があります。

──チーム再建に向けて獲得した新加入のメンバーたちの貢献ぶりをどのように見ていますか。

若い選手たちは、よく学んで成長を続けています。(村上)駿斗はこれまでB2でプレーしていて、今はB1でどのようにプレーすべきかを習得しています。順調な成長曲線を描いています。今川(友哲)も似たような状況で成長途中にありますが、より賢いプレーができるようになっています。そして驚きを与えてくれているのが頓宮(裕人)です。彼は難しい状況でコートに立つ場面も多いですが、よくやってくれています。特に宇都宮との試合では、素晴らしい仕事をしてくれました。

(晴山)ケビンは他の新加入選手に比べると経験を持ち、自身がステップアップするために何が必要なのかを分かっています。彼は出場機会を求めてハングリーになっています。滋賀では勝負どころでシュートを打つ役割も担っていますが、彼は優れたシューターでその力を持っています。こういった機会が増えることは彼にとっての挑戦だと思います。

そして私たちは幸運にも優れた3人の外国籍を加えることができました。例えばジョーダン(ハミルトン)は傑出したスコアラーで、彼がコートにいる時の私たちは相手にとってより手強いチームとなります。他の選手もプレーしやすいです。

ショーン・デニス

「外国籍選手の獲得においては人柄も大事な要素」

──ルーキーの前田怜緒選手も、シーズン途中から先発起用されるなど成長を果たしていると思います。

怜緒を先発に起用したのは、駿斗がベンチから流れを変えてくれるからでもあります。その方がよりバランスのとれた布陣となります。怜緒は、大きな可能性の持ち主です。大学時代、彼はオフェンスで大暴れしていましたが、プロのレベルで活躍するには守備のレベルを向上させる必要がありました。彼は滋賀に来て毎日、ハードワークを行っています。これからより守備を鍛えるとともに外角シュートも改善していかないといけない。彼は素晴らしい人柄の若者で、これからプロでも長く活躍していける選手です。

──総体的に若い選手たちのステップアップについて、現時点でどのように捉えていますか。

今シーズンの私たちは、昨シーズンの成功を再び実現するための再建をスタートさせたところです。だからこそ、このオフには長期的な視点においてチームに貢献してくれる若い選手たちを獲得しました。彼らに成長の機会を多く与えることで、若いチームならではのアップダウンが激しい側面はあります。試合を通して学んで成長を続けていくことが今シーズンの大きな目標で、それはここまで達成できていると思います。若い選手たちはベンチに座るのではなく、コートに立つことで価値ある経験を重ねられています。これは選手だけでなく、チームにとってもポシティブなことです。

──若手の育成重視の方針は、今シーズンに降格がないことでよりやりやすくなっていますか。

降格がないことで、より若手の育成がしやすくなったことは間違いないですね。もちろん、チームは常に勝利を目指しています。ただ、今シーズン、負けてもそれが降格へと繋がるプレッシャーにはならないことはチーム作りにおいて大きいです。ただ、その中でも来シーズン以降に向けて、しっかりと競争力を持ったチームを構築していく必要があります。

──外国籍選手について質問があります。滋賀は帰化枠でのビッグマンもいない中、外国籍3人の内、ビッグマンはアンガス・ブラント選手のみ。残りのハミルトン選手は3番を本職とするオールラウンダー、ジョナサン・オクテウス選手はガードの選手です。この組み合わせにした狙いを教えてください。

ここ数シーズンに渡るジュリアン・マブンガ、ヘンリー・ウォーカー、レオ・ライオンズらの活躍によって、ポイントフォワードやビッグガードの外国籍選手が効果的であることが示されました。ヘンリーと似たタイプで、日本人選手たちをうまくオフェンスに絡めることができて、シーズンに何度かトリプル・ダブルを記録するようなオールラウンダーを探しました。そこに合致したのがハミルトンです。

アンガスは日本で長くプレーしたいと思っている優れたビッグマンです。また、外国籍選手の獲得においては、日本人選手とうまくやっていける人柄も大事な要素です。日本人と連携が取れない選手を獲得するのはチームにとって大きな問題となります。私たちは得点を取れるだけでなく、若手の成長を助けてくれる選手を探していました。そしてジョナサンを獲得しました。

ショーン・デニス

「継続的にプレーオフを狙っていける、その土台を作る」

──チーム全体でのサイズ不足については、どのように見ていますか。

ビッグマンが少ないないことで不利な面はあります。一方で世界を見ると伝統的なビッグマンと呼ばれるタイプの選手はどんどん減っていて、今はインサイドもより多彩な能力を持つ選手が重宝されています。私たちはその部分を重視しており、そういった選手たちの存在は日本人の成長に必要だと思っています。

サイズがないからこそ、私たちは他とは違うディフェンスのスキームを用いて、自分たちより大きいサイズのチームに対応しています。それがうまく行く時もあれば、そうではない時もあります。また、ビッグマンの年俸は、他のポジションに比べて高いことも影響しています。その中で私たちはやるべきことをやっています。サイズとは違うアドバンテージを作り出していくスタイルは機能していると感じています。

──観客の人数制限で、声を出しての応援ができない状況をどう感じていますか。

Bリーグの大きな魅力の一つは、多くのファンの方たちが勝敗以上に試合そのものを楽しみ、選手をサポートしてくれることです。ファンはバスケットボールを本当によく知っている。例えば、ホームを応援しつつアウェーチームの良いプレーも称えてくれます。それを感じることができない今の状況は寂しいものです。

──後半戦への意気込みを教えてください。厳しい状況ではありますが、チャンピオンシップ出場の可能性も残っています。

私は現実主義者です。できることならチャンピオンシップに進出したいですが、それはここからチームが完璧な戦いぶりをしてチャンスが生まれてくるもの。チームに合致した優れた人柄の選手たちを集め、継続的にプレーオフを狙っていける体制を作る。これが新しいマネージメントとなったチームが掲げている第一の目標です。今はそのための土台を作ることが大切となります。ファーストステップとして、若手が安定したパフォーマンスをできるようになるために継続したプレー機会を与えます。これこそ今シーズンにおいて私が現実的な目標として重視していることです。そして、外国籍選手には、彼らがこれからもBリーグでプレーするに相応しい実力を持っていることを証明する機会を提供していきます。

──最後にファンへのメッセージをお願いします。

今シーズンはとてもタフな1年となっています。ただ、新しいマネージメントが本当に頑張ってくれていて、チームの将来に向けて尽力してくれています。昨シーズンのようなチームになるために一生懸命に取り組んでいます。私たちは常にベストを尽くして取り組んでいるので、ファンの皆さんはこれからもチームと一緒に歩んでもらいたいです。