新労使協定でのマックス契約に関する規定変更を予期?
レブロン・ジェームズとキャバリアーズの契約が正式に発表された。第一報の通り、レブロンはキャブズと複数年契約を締結。正確な数字は明らかになっていないが、最終年がプレーヤーオプションとなる3年契約で、総額1億ドルの契約となる。
かくしてレブロンは、NBA史上3人目の年俸3000万ドル(約30億4000万円)を手にする選手となった。しかし、なぜ彼は単年契約を結ばなかったのだろうか? 来夏再びフリーエージェントになれば、さらに好条件での複数年契約を勝ち取る可能性が高かった。それだけに、この決断は驚きをもって受け止められた。
純粋なる地元愛かもしれない。もしくは2年以上所属したチームとの再契約に限り認められれ、サラリーキャップの影響を受けることなく前年の年俸の175%での複数年契約が許される『アーリーバード例外条項』を適用させるためだったのかもしれない(これはプレーヤーオプション付きの単年契約、5年のマックス契約締結時には認められない)。
だが、この背景には、現行の労使協定に含まれる『オーバー36ルール』という規定の影響があったとも言われている。
32歳以上の選手が4年や5年の複数年契約を結ぶ場合、この契約期間中に36歳を迎え、その時までに現役引退となる場合に備えて適用されるのが『オーバー36ルール』だ。今年12月に32歳となるレブロンのケースに当てはめてみよう。
もし今夏に単年契約を結び、来夏再びフリーエージェントとなって、4年か5年の契約を結ぶ場合、新契約の期間中に36歳を超える。36歳という年齢は、一般的には現役引退しても不思議ではない年齢だ。そこで登場するのが『オーバー36ルール』である。
今32歳の選手が、4年あるいは5年の契約を結んだ場合、『オーバー36ルール』が適用されて4年目以降の年俸は、『前受収益』扱いになる。36歳で迎えるシーズンの年俸が900万ドル(約9億円)と仮定した場合、契約1年目から3年目までに毎年300万ドル(約3億円)が、チームのキャップスペースに加算する形で選手に支払われる。選手が36歳で現役を引退したとしても、残りの契約分の報酬を受け取ることができる、というわけだ。
だが、この保障をレブロンは不要と考えたのではないか。練習方法、栄養学、トレーニング、治療法の進歩でアスリート寿命が延びている今、彼が4年後もトッププレーヤーでいたとしても不思議ではない。
そしてレブロンが考えたのは、現在NBA、チームオーナー、選手会は、新たな労使協定締結に向けた話し合いで議題となっているマックス契約の増額、もしくは撤廃だ。もしマックス契約の年俸上限が撤廃された場合、各チームはフランチャイズプレーヤーの流出を防ぐため、超高額オファーを提示できるようになる。
これはNBAの進むべき道でもある。NBAコミッショナーのアダム・シルバーはケビン・デュラントを加えたウォリアーズのような『スーパーチーム』による戦力偏重を明らかに嫌がっており、労使協定はチーム間の戦力均衡を促す形で決着すると予想される。
ジェームズが3年契約を下した理由は、選手会副会長として新協定でのルール改正をにらんだためなのか? あるいは今後のキャリアを左右する決断を下すのはまだ先でいいと考えたのだろうか? それとも何の計算もなく純粋に地元クリーブランドへの愛情を優先した結果なのか? いつか彼が真実を明かすのを待ちたい。