ベンチ組の『スターターの代役』ではない仕事ぶり
クリス・ポールを補強したサンズは5勝1敗と好スタートを切り、西カンファレンスの首位に立ちました。エースのデビン・ブッカーは平均20.5点とルーキーシーズンに次ぐ少ない得点ながら、囮役に徹する試合もあるなどチームとして効果的な得点の奪い方をしており、6人が2桁得点というバランスの良さが目立ちます。
昨シーズンもスターターはバランスが良く、チームとして成長して『バブル』を8連勝で締めくくりましたが、今シーズンはベンチメンバーの充実ぶりも目立ちます。ロスター構成はチームによって様々な考え方がありますが、サンズで興味深いのは『スターターの代役』ではなく、全く違う特徴を持った選手がベンチから出てくることです。
特に目立つのはキャメロン・ペイン、キャメロン・ジョンソン、ラングストン・ギャロウェイの3人のベンチメンバーです。ポイントガードの控えであるペインは、フィールドゴール成功率51%、4.2アシストの一方で1.0ターンオーバーと極めて効率的なプレーでチームオフェンスをリードしています。線が細く当たり負けするペインですが、プレッシャーを受けてもチームメートが動いて合わせると信じることで落ち着きを失わず、堅実なオフェンスを作り上げています。
そのペインが最も多くのアシストをしているのが、オフボールで動き回るジョンソンです。ボールを持っていなくてもコート全体を動き回ってオフェンスのスイッチを入れる役割を担い、ジョンソンが動いたスペースにディフェンスの穴を生み出します。その上で自分自身もディフェンスを振り切り、フリーになって合わせてくるため、ボールを持っていなくても目を離せない存在です。
ベンチの中心であるペインとジョンソンに対して、プレータイムが10分に満たないギャロウェイは、コーナーからの3ポイントシュート専門として起用されており、パスを受ければクイックモーションで打ち切る特殊な個性を持っています。じっくりとチームオフェンスを組み立てていくサンズにおいて、1人だけ違うリズムで打っていくため、短い時間で変化を生み出しています。
選手交代のローテーションも独特で、次々に交代してユニット構成を頻繁に入れ替え、様々な組み合わせでコートに立たせます。開幕したばかりのこの時期は連携が整わないのが通常ですが、昨シーズンから継続したチーム作りを続けている効果もあって、どんな選手構成でも各選手の特徴がしっかりと使われています。
相手チームからすると、選手交代のたびに対応を変えていかなければならず、難しいディフェンスを強いられます。一方でサンズ自身も戦い方を変化させていくために、しっかりとハーフコートオフェンスをセットすることが多く、オフェンスの爆発で一方的な展開になることは少なく、競った展開が多くなっています。
誰もが活躍する好調のチームにおいて、新加入のクリス・ポールは黒子役に徹しており、ここまでキャリア最低の13.2得点、フィールドゴール成功率40%に留まっています。しかし、サンズが求めた彼に求めた『個性』は試合終盤の勝負強さであり、競った展開が増えるほどクリス・ポールの個性が必要とされます。昨シーズンまではブッカーに頼らざる得なかったクラッチタイムで、頼りになるベテランがプレーを決めることで接戦を勝ち切っています。
サンズ好調の最大の要因は、各試合で10人の選手を起用しながら、全員の個性が存分に発揮されていることにあります。各ポジションの選手に役割を当てはめるのではなく、『10人10色』の個性を見事に混ぜ合わせるチーム戦術を構築できており、それぞれがチームメイトの個性を使うことを意識できているチームワークの良さが光ります。